ラ・ジュテ

劇場公開日:1999年7月3日

解説

近未来、廃墟のパリを舞台に少年期の記憶に取り憑かれた男の時間と記憶をめぐる、静止した膨大なモノクロ写真の連続(通常どおり撮影したフィルムをストップモーション処理している)で構成された、“フォトロマン”と称される短編。95年、のテリー・ギリアム監督の「12モンキーズ」は本作を原案にしている。特殊上映の形で何度か上映はされてきたが、正式な劇場公開は今回が初めて。監督・脚本・撮影はヌーヴェル・ヴァーグ期、アラン・レネ、ジャック・ドゥミ、アニエス・ヴァルダら左岸派(ゴダール、トリュフォーらの活動拠点の“カイエ・デュ・シネマ”編集部がセーヌ右岸にあったため、比較してこう呼ばれた)の代表格の映画作家、クリス・マルケル(「ベトナムから遠く離れて」「サン・ソレイユ」ほか)。製作はアナトール・ドーマン。音楽は「脱出者を追え」(54、ジョゼフ・ロージー監督)「プラン9 フロム・アウター・スペース」(59、エド・ウッド監督※ノンクレジット)のトレヴァー・ダンカン。編集は「帰らざる夜明け」「銀行」のジャン・ラヴェル。美術はジャン=ピエール・シュドル。写真はジャン・シアポー。朗読はジャン・ネグロニ。出演はエレーヌ・シャトラン、ダヴォス・ハニッヒほか。

1958年製作/29分/フランス
原題または英題:La Jetee
配給:ザジフィルムズ
劇場公開日:1999年7月3日

あらすじ

第3次世界大戦後。廃墟と化したパリ。戦争を生き延びた勝者側の科学者たちは、“過去”と“未来”に救済を求めるため、捕虜を使って時間旅行を試みる。彼らはそこで少年時代の記憶に取り憑かれた男(ダヴォス・ハニッヒ)を選び出す。彼は少年時代、オルリー空港の送迎台で、凍った太陽とある女(エレーヌ・シャトラン)の記憶を心に焼き付けていた。注射で過去に送り込まれた男はあの送迎台の女と再会した。続いて未来に送り込まれた男は世界を救うエネルギーを持ち帰った。だが、男はそこでおのれの運命を知った。少年時代のあの日、送迎台でみた光景こそが、自分の運命の終着点だったのだ……。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5写真が魅せる、シンプルで多彩な表現。

2024年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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すっかん

3.0何度も過去の女性に会いにいってしまう、ちょっと切ない印象

2025年8月9日
iPhoneアプリから投稿

近未来が舞台なのに白黒映画にした斬新さ✨
ずっと白黒写真とナレーションのみで構成されている
セリフも一切ない

戦争のシーンが出てくるので観るのが怖かったけど、
過去や未来を行き来する男の方がメインで、
何度も過去の女性に会いにいってしまう、ちょっと切ない印象

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ジュディス

4.0誘いを降りてオルリ空港へ

2025年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

驚く

斬新

Huluの字幕版を鑑賞しました。
鑑賞後、最初から観たくなって、結局3回観ました。
古い作品ですが、時代を超越している傑作です。

第3次世界大戦後の地下での実験の話です。
彼(主人公)は、平和な未来からの誘いを断って 彼女の待つ過去に再び行くのでした。

開始 約19分後、彼女が ほほ笑むシーンが 印象的でした。

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Don-chan

5.0映画の本質を見ることができる傑作

2025年5月9日
PCから投稿

この作品が重要なのは、優れたSFであるとと同時に、映画というメディアの本質を提示している所にあると思う。

今作は、ナレーションと音楽、美しい白黒の静止画の連続だけで演技も活劇も台詞さえも無い。が、我々はこの映画に何かが不足していると感じるよりも、逆に情報が限られている故の豊さに驚くことになる。

イメージの連続とその編集によって物語を紡ぐ→これに一番近いメディア表現は日本の漫画だと思うが、そこに時間軸が足される事で実は映画というメディアは成立しており、それ以外は必要不可欠な本質的要素ではない、という事がこの作品から浮かび上がってくるのだ。

物語には現代の映画的なひねりもあり、映像としても無駄のない引き算の美学というか、白黒の象徴的な絵の連続であるがゆえに、普遍的で古びず、今もそのスタイリッシュさを失っていない。

SF,映画史における傑作であり、短編であるから見るのにも時間がかからないにも関わらず、一般的にあまり知られていない気がするので、未見の方は是非。

ちなみにこれも若い人は知らないかもなので一応メンションすると、テリーギリアムの12モンキーズという映画の元ネタである。そちらも私は好みの作品だが、作品の強度ではやはりラジュテが上だと思う。あと、クリストファー・ノーランは間違いなく今作と、「去年マリエンバートヘ」からの影響を受けているだろう。彼の作品群は娯楽作でありながら、こういった「映画における時間の編集」という彼の個人的な関心が常に盛り込まれている。

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moviebuff