見知らぬ乗客

ALLTIME BEST

劇場公開日:1953年5月9日

解説・あらすじ

アルフレッド・ヒッチコック監督が、「太陽がいっぱい」で知られるミステリー作家パトリシア・ハイスミスの同名小説を映画化。探偵小説作家レイモンド・チャンドラーが脚色を手がけ、交換殺人を持ちかけられた男の恐怖を描く。テニス選手のガイは、不貞な妻ミリアムと離婚して上院議員の娘アンと再婚することを望んでいた。そんなある日、ガイは列車の中で見知らぬ男ブルーノから話しかけられる。ブルーノはなぜかガイの事情を良く知っており、ミリアムを殺す代わりにブルーノの父親を殺して欲しいという“交換殺人”をガイに持ちかける。ガイは相手にしなかったが、その後ブルーノは本当にミリアムを殺害し、ガイにも殺人を実行するよう付きまとう。

1951年製作/101分/アメリカ
原題または英題:Strangers on a Train
劇場公開日:1953年5月9日

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映画レビュー

4.0 ヒッチコック5本の指に入るほどのハラハラドキドキの秀作

2020年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ヒッチコックは幾つかのタイプに分けられる。トリックや犯行手口や語り口が斬新なものと、登場人物がエキセントリックなもの。そしてクライマックスにあっというようなスペクタクルが用意されているもの。その全てを兼ね備えたものが本作であり、タイトルの認知度からは想像できないほどのエンタメ快作と断言できる。

まずは電車で乗り合わせた男と交わされた「交換殺人」という仕掛けがレールとなり、冗談かと思っていたら本当に犯行が行われ、さあ次はお前の番だと迫られるテニスプレーヤーが崖っぷちに立つ。なんとも奇妙で不気味な物語なのに、主人公のアクティブさと恋人の聡明さが雰囲気を一向に暗くさせない。それでいて謎の男もまたサイコパスとコミカルの間を絶妙にドリフトして観る者をハラハラドキドキと楽しませる。あげくには遊園地のあの遊具が恐るべき最終舞台となる展開には本当に恐れおののいた。ヒッチコック5本の指に入る秀作なのでは。

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牛津厚信

4.5 ヒッチコック最初の1本に超おすすめ!

2025年7月28日
Androidアプリから投稿

楽しい

興奮

ドキドキ

『君去りし後』ではジェニファー・ジョーンズの素直で真面目な可愛げある青年彼氏だったロバート・ウォーカーが、
初っ端からヤバい(←今の意味やない!)交換提案してくる、めちゃめちゃ怖い男性に大変化…!

『見知らぬ乗客』

ヒッチコック の超超超超!!!!面白サスペンスーー✨✨✨

ヤバすぎるウォーカーから必死に逃げる主人公ファーリー・グレンジャー…を絶対逃がさないウォーカー!! 普通の顔して粘着質、涼しげな表情で執着心…何なんだ君は!? じわじわ追い詰めてくのがとにかくひたすら怖い…ウォーカー!!

コツコツコツコツ、カチッ…と歩く足と靴音!移動遊園地でパチンっと割られる風船!
遊園地がキラキラすればするほど増してく不気味感…『いちごブロンド』の歌の不穏なこと不穏なこと…!
ヤバい!!!😖😖

ぬ〜〜と忍び寄る影…
落ちたメガネ…びよ〜んと歪む映像!
ピタッと微動だにしない顔!
排水溝に伸びる手!時間も伸びる!腕もさらにぐ〜んと伸びる!!
グゥォォォォオオオオオオオオオオと爆走するメリーゴーランドの最終バトル!!!

サスペンスの神様ヒッチコックのこれでもか!これでもか!!のワザ!技!わざ!がもう楽しい!!超すごい!!激々ヤバい!!🔥🔥🔥
これぞヒッチコック!!これがヒッチコック!!ヒッチコックのベスト級に面白い!✨✨✨

エンタメ・キーーーング✨👑✨アルフレッド・ヒッチコック!

#ふや町映画タウンおすすめベスト1000

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Kani_ishi

4.0 濡れ衣を着せられる恐怖

2025年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 関わりたくもない事件に一方的に巻き込まれ、濡れ衣を着せられる恐怖を描いた、秀逸な映画だった。古い映画にしてはテンポよく進んで面白い。

 アルフレッド・ヒッチコック監督の演出も上手い。犯人の男が主人公の恋愛相手の妹を見るときに流れる、遊園地での殺人を思い起こさせる音楽。最後のメリーゴーランドの回転の激しさが、主人公の逼迫した状況と重なる。こういった演出が映画をさらに盛り上げていた。

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根岸 圭一

4.5 細やかな演出が冴え渡ったヒッチコックの代表作

2025年6月27日
iPhoneアプリから投稿

『サイコ』『鳥』に連なるヒッチコックの代表作。

脚本を務めたのはフィリップ・マーロウもので有名な小説家のレイモンド・チャンドラー。ビリー・ワイルダー『深夜の告白』の脚本を務めたり、自著がハワード・ホークスの手で映画化(『三つ数えろ』)されたりしてきた彼がヒッチコックと組めば、当然のごとく極上のノワール映画が出来上がるというわけだ。

殺人犯ブルーノ・アントニーの不気味な人物造形はまさにお見事。独善性の強さや倫理意識の欠如、そして表層的な人当たりの良さなど、今でいうところの「サイコパス」の要件を完璧に満たしている。

描写として特に秀逸なのが、遊園地でミリアムを殺した直後のブルーノが目の見えない老人の手を引いて道路を横断するシーンだ。殺人と人助けという真逆のベクトルを描くことでブルーノが一般的な人間の範疇を超越した異常者であることを端的に示している。

証拠品のライターを側溝に落とした途端に人格が豹変して怒鳴り散らすシーンや、今際の際にまで嘘をつき続けるシーンも恐ろしい。

こうした細やかな演出にかけてはヒッチコック映画は映画の教科書と呼ぶに相応しい。終盤、遊園地のボートの列に並んだブルーノが照明の下に顔を晒す。するとボート番の男がこちらの存在に気がつくカットがインサートされる。するとブルーノは慌てて影の中に隠れる。照明を用いた単純だが効果的な演出だ。

テニスの試合シーンでは、パコン、パコン、という返球のリズムに合わせてカットが切り替わる。単に2人のプレイヤーをカットバックし続けるのではなく、観客や刑事や時計といった周辺の状況推移も織り交ぜることで緊迫感を高めている。状況は悪化の一途を辿っているのに返球のリズムは常に一定なのが気持ち悪くて最高だ。

高速回転するメリーゴーランドの上でブルーノとヘインズが取っ組み合うラストシーンは視覚的にも意味的にもカタルシスに満ち溢れていた。ブルーノが遊具上に取り残された子供を突き飛ばし、ヘインズがそれを咄嗟に助けるという決定的なワンシーンによって両者の行く末は確定。急ブレーキをかけられたメリーゴーランドはダイナミックに瓦解し、その結果ブルーノは遊具と鉄骨の間に挟まれて死亡する。

最後はヘインズとミリアムが電車の中でまた見知らぬ乗客に話しかけられるというショットで終わる。「ヘインズさんですか?」と声をかけられた二人は気まずそうに顔を見合わせ、別の客車に移動する。

あれだけシリアスなサスペンスをやっておきながら最後はコメディで締めるといういい意味での勇気というか拘りのなさが憎い。

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因果