ネタバレ! クリックして本文を読む
やつれていくゲイリー・クーパーの姿がとても印象に残る。それと共に、この題材が普遍的なものである事に悲しさを覚えた。
主人公を我儘な男と言うかもしれないが、彼は平和な5年間を経ても変わらなかっただけだ。その間に平和ボケした町の人々は、幾ばくかのお金を惜しんで6人いた補佐保安官を1人残して解任。せっせと蓄財に励んでいたのだろう。そうなると守るものが変わってくるのが人間というもの。その変化に気が付かなかった主人公は純粋過ぎたのだろうか。さながら長年尽くした会社にリストラされたサラリーマンの様にうなだれる。
そんな彼の元に現れるのは、主人公に認められたいという思いを拗らせてバッジと銃を置いて出ていったハーヴェイ。主人公を逃亡者にして自分と同じ位置に引きずり降ろそうとする。もう少し我慢強さがあれば彼は良い保安官になったのに…。若かい頃の恥を思い出させる何とも言えない青年、これは嫌いにはなれない。
正午、汽笛とともに汽車が着く。闘いに向かう主人公。町の人達に裏切られたのに何故彼は勝ち目の薄い闘いに向かったのか。きっと彼等と同じにはなりたくないという意地と、町の人達への怒りだったのかと思う。教会での町長の言葉を真正面から叩き潰す様に、ゴーストタウンの様な真昼の町中で撃ち合う主人公。グレース・ケリー演じる妻も、宗派の禁忌を破って一人撃ち殺し無事に主人公側の勝利。わらわらと集まってくる町の人達。彼等を前に冒頭部分と対照的にバッジを放り捨て去っていく新婚夫婦。何とも気まずい幕切れだが、少年の姿に僅かに町の未来への希望が見えた。
…
ゲイリー・クーパーは名前しか知らなかったが、主人公の感情をとても良く表現していた。グレース・ケリーも映画上で初めて見たと思うが、こちらはあまり印象に残らず。リー・ヴァン・クリーフ、ほとんど話さないのに彼が出ているシーンでは何故か彼を見てしまう。二丁拳銃で厩舎に飛び込み撃たれる姿も良かった。