マタ・ハリ(1932)
解説
「ロマンス」「インスピレーション」と同様グレタ・ガルボ主演の映画で「明暗二人女」「乗合馬車」のベンジァミン・グレイザーと「ゴンドラの歌」のレオ・ビリンスキが共同で組み立てた脚本により「国際盗賊ホテル」「放浪息子」のジョージ・フィッツモーリスが監督したもの。ドリス・アンダーソンとギルバート・エメリーが台詞付加の任にあたり、撮影は「インスピレーション」「緑の処女地」のウィリアム・ダニエルスが担当。主演者を助けて「印度の寵児」のラモン・ノヴァロ、「秘密の6」のルイス・ストーン、C・ヘンリー・ゴードン「インスピレーション」のカレン・モーリー等が登場する。
1932年製作/アメリカ
原題または英題:Mata Hari
ストーリー
世界大戦ようやく終りならんとする頃、エキゾチックな踊り子として艶麗を誇れる絶世の美人がいた。彼女こそドイツ政府の間謀として活躍していたマタ・ハリで、巧みに総合軍側官憲の眼をくらましていた。ロシアの青年飛行将校ロザノフ中尉は彼女の恋の虜となった一人で彼女は彼を巧みに操っていたが一たび彼が総合軍側の秘密文書を所持していることを知るや彼女の美しき魔の手は延びた。そしてくだんの文書を盗んでしまった。ロシアの陸軍武官シュビンはマタ・ハリと同じく軍事探偵の仕事に携わっていたが彼は彼女の唯一の愛人だと自負していた。しかるに彼女のロザノフ中尉に対する態度が次第に間謀としての名目を忘れ、彼に親密野愛情を示しつつあるのを見たジュビンは心中頗る穏やかでなくなって来た。嫉妬の念も手伝って彼はマタ・ハリをたしなめたが彼女は相手になろうともしない。憤慨の揚げ句、ジュビンはフランス秘密探偵局に電話でマタ・ハリのスパイであることを密告し、自らも国を売るつもりになってしまった。そしてロザノフ中尉も渦中にまき込もうとしたが、争いの最中マタ・ハリはロザノフをかばってシュビンを射殺してしまう。一方、ロザノフは重要使命を帯びてロシアに帰ろうとしたが出発後間もなく身に敵弾をうけその結果失明の悲運に遭遇した。彼の悲運を耳にしたマタ・ハリは彼女の隠れ家をひそかに抜け出て彼を病院に訪ね、初めて自分の胸の中を打ち明け、彼と結婚することを誓うのだった。が病院を出づるや直ちに捕らわれの身となった。シュビン殺害のかどで軍法会議に附せされたマタ・ハリは証拠不充分を論ずる者も出て、ロザノフと立会わせられるることとなったが彼女はロザノフにシュビンとの関係を知られるのを嫌い、且つは彼女の一生に一度の潔らかな恋を汚されるのを恐れて自らすすんで死刑に虚せらるることを決心した。そして何も知らぬ盲目のロザノフに涙ながらの別れを告げて寂しく刑場にひかれ行くのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジョージ・フィッツモーリス
- 脚色
- ベンジャミン・グレイザー
- レオ・ビリンスキー
- 台詞
- ドリス・アンダーソン
- ギルバート・エメリー
- 撮影
- ウィリアム・H・ダニエルズ