冬の旅

劇場公開日:2022年11月5日

解説・あらすじ

フランスを代表する映画作家アニエス・バルダが、さすらいの末に凍死した少女が死に至るまでの足取りを描き、1985年・第42回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞に輝いた作品。

冬の南フランス。片田舎の畑の側溝で、18歳の少女モナが凍死体となって発見された。ヒッチハイクをしながらあてのない孤独な旅を続けていたモナが命を落とすまでの数週間の道程を、彼女が路上で出会った人たちの証言を通してたどっていく。

「仕立て屋の恋」のサンドリーヌ・ボネールが主演を務め、「昼顔」のマーシャ・メリル、「ふたりの5つの分かれ路」のステファーヌ・フレス、「セラフィーヌの庭」のヨランド・モローが共演。フランスでは当時100万人を超える動員を記録し、バルダ監督最大のヒット作となった。

1985年製作/105分/フランス
原題または英題:Sans toit ni loi
配給:ザジフィルムズ
劇場公開日:2022年11月5日

その他の公開日:1991年11月2日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13

(C)1985 Cine-Tamaris / films A2

映画レビュー

4.0 自由…。

2025年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

冬の旅――自由の果てにあるもの

1985年、アニエス・ヴァルダの『冬の旅』はベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、フランス国内で100万人を超える観客を動員した。
なぜこの作品は、当時のフランスでこれほど強い共鳴を呼んだのだろうか?

物語は、モナの死体発見から始まる。
彼女を記憶する人々は多く、証言を重ねながら、私たちは一人の若い女性の軌跡を辿る。
しかし、その証言には奇妙な共通点がある。
誰もがモナに「孤独」を見ているのだ。
だが、果たして彼女は本当に孤独だったのだろうか?

モナは大学を出て秘書官となったが、人に使われることを嫌い、社会を捨てた。
ヒッチハイクとキャンプ、ほとんど野宿に近い生活。
タバコ、大麻、水とパン、時には売春。
移動しながら求めるのは食料と寝所だけ。
目的も目標もない。そんな生き方は、自由の象徴なのか、それとも愚かさの証明なのか?

フランス人は本来、労働を嫌う――そんな言葉がある。
だが、1985年のフランス社会は経済成長の陰で若者の失業率が高く、「働くこと=生きること」への疑問が広がっていた。
モナの姿は、その疑問を極端な形で体現している。
中産階級的な安定への違和感、社会の冷淡さ、そして「自由への憧れとその代償」彼女の旅は、時代の不安を映す鏡だった。

しかし、モナの自由は純粋なものではない。
社会を捨てながら、社会に依存する稚拙さがある。
働く場所を与えられてもすぐに辞め、世話になった家から物を盗み、罪悪感もない。
身分証を持たないのは過去を捨てた証だろう。
だが、その選択は、太平洋を一人で渡るような無謀さに似ている。
頑固なのか、プライドなのか、考え方を変えないというのであれば、放浪に意味はない。

やがて、ワイン祭りの村で体中にワインを染み込まされたモナは、凍死する。
楽な生き方、楽しい方を選ぶ生き方は、人間社会では生きていけない――その事実を、彼女の死は突きつける。
モナは人生のディスカバリーの旅に出たのではない。
世を捨て、人を捨て、そして世間に捨てられるために旅に出たのだ。

2025年の私たちは、彼女に何を見たのだろう?
自由か、孤独か、それとも愚かさか?
モナには、憐れみを手向けることしかできないと感じた。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
R41

4.0 夢も希望も捨ててしまった

2025年7月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ついつい見入ってしまいました
人にはいろいろな欲求があります
多くの人が思うのは「自由」
自由って掴みどころがなく全てが自由なんてことはなかなかない、もしかしたらそれは不自由な事なのかもしれない
ある程度束縛されている方が自由への関心や欲求が強くなるものなのでしょうね
若い頃、あんなに自由だったのに日曜日に家から一歩も出ずにダラダラしていた事が今になってもったいなくて仕方がないです
モナは楽をして生きたいとも言っていたな
若さが言わせているのでしょうね
いい歳になると楽よりもやりたい事が出来てその為の時間が欲しくなるんです
放浪の旅ではなく羊飼いの彼が言っていたような旅だったのかも
だとしたらもうそれは「旅」ですらないような気がします
『イントゥ・ザ・ワイルド』の彼とは雲泥の差だ

しかしモナは何から逃げていたのだろう
そして最後には諦めてしまったのだ 全てを

コメントする (0件)
共感した! 0件)
カルヴェロ

0.5 フランス映画ぽい

2024年9月14日
スマートフォンから投稿

これはこういう意図なんだよと全てを自分の中で構築して満足する映画。
それがない場合ただ汚い女がウロウロしてる記録にすぎない。
評価が高いので観てみたが、自分はそういうタイプの映画は楽しめない。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
貝ひも

3.5 【”漂泊”自由である事は孤独である事。孤独である事は自由である事。一人の少女の漂泊の果ての死への歩みをドキュメンタリータッチで描いた作品。】

2024年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■冬の朝。フランスの田舎の葡萄畑の横の側溝で、モナという若い女の凍死体が発見される。
 警察はヒッチハイクで流浪していたモナのことを誤って転落した自然死として葬る。
 モナが路上で出会った人々の証言から、彼女が死に至るまでの数週間の足取りをたどる。

◆感想

・アニエス・ヴァルダ監督の作品は、数作であるが鑑賞して来たが、今作はナカナカに難解である。

・世間的には高い評価を受けた作品だそうであるが、エンタメ性は少なく、サンドリーヌ・ボネールが演じたモナも、可愛い顔をしているが、性格は可愛げが無い。

・”楽をして生きたい。”と平然と口にするし、モノは平気で盗み、金がないのに巻き煙草をスパスパ吸う。

・移動は、ヒッチハイクである。自分に色目を使う男には罵声を浴びせる。

■今作内で、モナを知る女性が頻繁に口にする言葉がある。”孤独”である。
 モナは、自由と引き換えに、孤独を抱えている。
 無軌道と言っても良い生き方をしている。

<今作は、自由と孤独の関係を考えさせられる作品だと思う。エンタメ性は少ないが、記憶に残る作品である。
 つまりは、秀作という事なのだろう、と思う。>

コメントする (0件)
共感した! 1件)
NOBU