フェリーニのローマ

劇場公開日:

解説

古代からの遺跡と現在とが共存しているローマ、何回も死に何回も甦ったローマ、陽気で野卑で食欲のかたまりのような民衆、彼らはローマを支配した数々の権力者、ネロ、シーザー、近くはムッソリーニのファシストの時代を生き抜いてきた。フェデリコ・フェリーニの内部のローマをドキュメンタリー・タッチで描く。スタッフは前作「サテリコン」と同じで、製作トゥリ・ヴァジーレ、監督フェデリコ・フェリーニ、原案・脚本はフェリーニとベルナルディーノ・ザッポーニ、撮影はジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽はニーノ・ロータ、衣裳デザインはダニロ・ドナディ、編集はルッジェーロ・マストロヤンニが各々担当。出演はピーター・ゴンザレス、ブリッタ・バーンズ、ピア・デ・ドーゼス、フィオナ・フローレンス、マルネ・メイトランド、ジョヴァノリ・レナート、アンナ・マニャーニなど。

1972年製作/イタリア
原題または英題:Fellini Roma
配給:ユナイト
劇場公開日:1972年10月28日

ストーリー

〈第一部〉ローマ最古の道標が今でもローマへの道ばたに立っている。長い年月、風雨にさらされて。少年の頃、ものうい冬の日に教わったローマの歴史。シーザーが「サイは投げられた」と渡河して行ったルビコンの河原。劇場で感動したシーザーの舞台、カンピドリオの狼の像、教皇の放送に涙するオバ。「ローマの処女プリシラ」の活動写真に感動した記憶。やがてファシストの嵐が吹き荒れ、エチオピア侵略、町々に軍国調が幅をきかす。二十歳の青年フェリーニはローマの下宿に落着く。旺盛な食欲、開けっぴろげで野卑で生活を享楽するローマっ子の凄じい活力に眼を見張った。そして今日のローマ。土星の環のように首都を取りまく環状線。この道路を行く雑多な人と車、対峙するデモ隊と警官隊。雷雨の中で血を流す事故現場。それらの混乱ぶりとは無緑に照明弾で浮び上る遺跡の孤影。ローマ郊外のロケ地で学生たちはフェリーニに、この映画で何を描くのかと質問する。フェリーニは三〇年前に想いを馳せる。ジョビネリ劇場の寄席。場末の掛小屋に見る親近感がそこにある。空襲警報に妨げられ、防空壕で明かした一夜。それは教皇の都を空襲する筈がないというローマっ子を驚愕させた初の空襲だった。 〈第二部〉一八七一年以来ローマに地下鉄が必要だと説かれた。百年後の今日、今だ地下鉄は完成しない。ローマの地下は謎に満ちている。百メートルごとに遺跡にぶつかるのだ。この日考古学者立ち合いの堀削現場で大きな空洞に突き当った。穿岩器が怪獣のように壁に挑む。壁の向うに正に空洞があった。華麗な壁画に囲まれた地下大浴場だ。突如、異変がおこった。壁の穴から吹き込む現代の熱い空気によって壁画が消えていくのだ。考古字者は絶叫する。「何とかできないか!文化的損失だ」。現代の若者たち、絶望の青春。野良犬のように肩を寄せあう彼らにもはや「愛」は問題ではない。「セックス」だけだ。戦時中には一つの解決法があった。公設娼婦。ピンからキリまであるが、する事は同じ、システムも同じだった。古い宮殿に育ったカソリック貴族の老いた姫君が教皇を迎えて教会のファッション・ショーを開く。権威にふさわしい豪華絢爛たる衣装の数々。が姫君は孤独に涙を流す。「この町の情ないかわりよう。昔はよかった。人のこころもおだやかで、皆が友だちだった」。こうした世界と関係なくトラステベレのサンタ・マリアの泉の傍らに寄り集ったヒッピー族は警官隊に追い払われやがてローマの夜は遺跡の世界に戻る。何度も死に、何度も生き返る都。肉感的で貴族的で、古く、おどけて傷ついたローマ。突如、光と轟音が遺跡をゆり起こす。黒ジャンパーにヘルメットの五十人のオートバイ族が駈けめぐる。野蛮なSFの侵略の間、ノバナ広場、コロシアム、フォーラムは束の間息をふき返し、すぐまた、いつもの判読できない無関心に戻る。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

1.0猥雑さの生命力

2019年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

イタリア・ネオレアリズモの旗手、映像の魔術師と異名をとるフェリーニらしい作品。彼の美意識は煩悩に赴くまま、低俗ゆえの制御のきかないエネルギー、生命力の表現を描いているが共感だけでなく罪悪感も見え隠れする。ローマは確かに歴史の古い都市だがおよそ人が群がるところには混沌とした猥雑さと活気があるのだからイタリア人やローマに限らずとも同様の心象風景のコラージュは作れるだろう。いたってナーバスな青臭いものに感じるのは劇中にも登場する18歳でローマに上京したフェーリーニ自身のインプレッションが強烈だったのだろう。
そもそもフェリーニがどう感じたかは彼の自由、評価できないので単に好みでの星数です、イタリアには世界に誇るべき美しいものやおいしいものが溢れているのでそちらも期待したのだが観光PR映画もどきにしたくなかったのでしょう。

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odeonza

3.0映像だけ

2019年1月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 地下道で遺跡を発見した幻想的なシーンや教会ファッションショーが面白い。

 ストーリーもあるような、無いような。ドキュメンタリーというよりも映像コラージュといった感じ。不思議感覚いっぱい。フェリーニは声だけ登場してるようですけど、孫(?)も出てた?

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kossy

2.0作品に込められている不純物で消化不良気味

2010年6月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

難しい

萌える

1972年イタリア映画。120分。今年35本目の作品。「道」や「甘い生活」など独特の映像美が光るフェリーニ監督の作品。個人的には本作がフェリーニ監督の初のカラー作品。

内容は;

1930年代から70年代のローマの街の風景や群像劇を描くことで、その荒廃ぶりを描いている。

本作は、ドキュメンタリーとフィクションの中間にあるような作品でしょうか。フィクションと呼ぶには筋書きがなく、さらにドキュメンタリーと呼ぶには設定が架空過ぎる。巨匠だからこそ作れるようなつかみ所のない(それでいて高尚な)作品です。

フェリーニと言えば、やはり独特の映像感覚。個人的にはまさしく天使が宿っているような映像美。物語はどん底なのになぜか気持ちが落ちないあの映像美。

本作の最初の一時間はその映像美が素晴らしく、内容が今ひとつ掴めなくてもついて行けましたし、心は恍惚としました。それでも、それまで見てきたフェリーニ作品とは何かが違う。神聖なるものが荒廃しているのです。

それに気づいたのは後の一時間。フェリーニ作品ではお馴染みの動物や子供などがまったく出てこなくなります(そして、これが故意であることは観終わってから分りました)。

後半は宗教的なカルト色がかなり強く、正直しんどくなりました。本作はローマという街に対する教養が必要とされる作品だと思いました。

イタリアの国宝・フェリーニ監督は、ローマの偉大なる文化が風化しようとしている様を描こうとしていたのだと思いますが、ほんと、後半はまったくついていけなかったです。

でも、やはりあの映像はすごい。

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あんゆ~る

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