ファイブ・イージー・ピーセス

劇場公開日:

解説

仕事も、家族も、女さえも、およそ愛することから離反して彷徨する無目的なヒーローに焦点を合わせ、「イージー・ライダー」で見据えたアメリカの“現在”に再度挑戦する。製作総指揮は「イージー・ライダー」のバート・シュナイダーとリチャード・ウェクスラー、そしてボブ・ラフェルソンの製作、監督はボブ・ラフェルソン、ラフェルソンと女性脚本家のエイドリアン・ジョイスの共作原案をジョイス自身で脚色、撮影は「イージー・ライダー」のラズロ・コヴァックス、音響をオーディオ・トラン、タミー・ウィネットが歌っている。出演は「白昼の幻想」「ワイルド・エンジェル」の脚本家でもある「イージー・ライダー」のジャック・ニコルソン、同じく「イージー・ライダー」のカレン・ブラック。その他、ビリー・グリーン・ブッシュ、「エデンの東」のロイス・スミス、スーザン・アンスパック、ウィリアム・チャーリー、ジョン・ライアン、ラルフ・ウェイトなど。

1970年製作/アメリカ
原題または英題:Five Easy Pieces
配給:コロンビア
劇場公開日:1971年5月1日

ストーリー

ロバート“ボビー”(ジャック・ニコルソン)は、今はカリフォルニア南部の石油採掘現場で働く労働者。その日その日をしのげる稼ぎがあればそれでよいという仕事ぶりで、気が向けば相棒エルトン(ビリー・グリーン・ブッシュ)と朝から酒を飲み休んでしまう。レイティー“レイ”(カレン・ブラック)というウェイトレスと同棲しているが結婚の約束をしているわけでもない。何に対しても積極的な姿勢を示さず、適当に拾った女といいかげんに遊んだり、仕事も適当に、といった怠惰な毎日を送っている。ボーリング場で拾った女と一晩中遊んで帰ると、レイが仕事にも行かず泣いていた。ボビーは不愉快になり家を飛び出す。レイは妊娠していた。そして正式な結婚を望んでいたが、ボビーにはまったくその意志はなかった。ボビーは町の放送局へ姉のティタ(ロイス・スミス)を訪ねる。彼女はクラシック・ピアニストであった。彼女は父が卒中で倒れたから見舞いに家に帰ってきてほしいと告げる。ボビーはもう3年も家に帰っていなかった。翌日、現場でエルトンから、妊娠した女と結婚して家庭をもつのは男の責任だと説教される。“そんな考えの、ケツの穴の小さい男と一緒に働くのはゴメンだ”と喧嘩になり、主任にも毒づいて仕事をやめる。その時、2人の男がエルトンを追いかけ、助けにいったボビーも手錠をかけられそうになる。エルトンは保釈中に逃げだした強盗犯だったのだ。家に帰って荷物をまとめていると、棄てられると思ったのかレイが泣き出した。ボビーは1人で出発するつもりだったが、思い直してレイも連れていく。車はボビーの実家に向かった。途中アラスカに行くというヒッピー女2人を拾う。アメリカ中がゴミで溢れ、人間の住む所はなくなった。不潔になりたくないから清潔なアラスカに行くのだとヒッピーは言う。近くのモーテルにレイを下ろし、ボビーは1人で家に向かう。ボビーの家はクラシック音楽一家で、兄のカール(ラルフ・ウェイト)とその妻キャサリン(スーザン・アンスパック)、そしてティタと卒中で倒れ車椅子の生活を送る父ニコラス(ウィリアム・チャーリー)がいた。ボビーは暖かく迎えられた。キャサリンは音楽的にも家庭的にも理想的な環境に恵まれ、さらにピアニストとして豊かな才能がありながら、定職をもたず怠惰な生活をしているボビーが理解できないと言う。そして、数日過ごしたボビーは、キャサリンと関係ができる。精神病院みたいなこの家から逃げ出そうというボビーに、仕事にも自分にも、何に対しても尊敬も愛も持てないあなたが、私に愛を求める資格はないでしょうとキャサリンは答える。そのうち、何の連絡もなく1週間ほおっておかれたレイがやってくる。レイは下品な育ちの女で、それを隠すことさえしない女だったが、上品な家族たちは歓待する。ある日、カールの友人たちがやってきて、団欒の中で高踏的で、空疎な理論を論じあう。ボビーはくだらないお喋りはやめろと罵り、ぶちこわしてしまう。そしてキャサリンを探しに行くと、ティタが父の看護人スパイサー(ジョン・ライアン)と寝ているのを見つける。姉に手を出すなと殴りかかったボビーは、逆にのされてしまう。翌朝、ボビーは何も喋れず、車椅子の生活を続ける父を散歩に連れ出す。海を見下ろしながら、ボビーは“僕は本物を求めて何かを探しているんじゃない。ただ、僕がいるだけでそこが悪くなってくる。悪くなるものから逃げ出すだけなんだ。僕がいなくなると万事うまくいくんだろう”と涙をまじえて父に話しかけた。ボビーはまた家を出る。レイもついてくる。しかし、途中のガソリンスタンドでレイがコーヒーを飲んでいる間に、木材を積んだトレーラーが入ってきた。ボビーはレイに告げず、ふらりとその車に乗り込んで、どこかへ去っていってしまう。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第28回 ゴールデングローブ賞(1971年)

受賞

最優秀助演女優賞 カレン・ブラック

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀主演男優賞(ドラマ) ジャック・ニコルソン
最優秀監督賞 ボブ・ラフェルソン
最優秀脚本賞 キャロル・イーストマン
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映画レビュー

3.5【”愛を持てない男”恵まれた家庭からのドロップアウトの果ての哀しみと虚無を描いた作品。”俺がいないと全てが上手く行く。俺は疫病神なんだ・・。”という台詞が男の哀しみを表現している作品でもある。】

2022年10月10日
PCから投稿

悲しい

知的

難しい

■石油採掘場で働くボビー(ジャック・ニコルソン)は、何事にも熱意を感じられず、無目的な日々を送っている。  ある日、同棲相手のレイ(カレン・ブラック)が妊娠。結婚を迫る彼女から逃れるために訪れた姉の家で、父が倒れたと聞かされたボビーは、レイを連れて3年ぶりに帰郷するのだが…。 ◆感想 ・今作は、資料によると公開が1970年である。「イージー・ライダー」に代表されるように、自らの周りの全てを捨て去り、新しい価値観を追い求めていた人々が、多数いたとされる時代である。 ・今作のジャック・ニコルソン演じるボビーも、同系列であろう。恵まれた音楽一家から3年前に居なくなり、その後は炭坑などで当てのない生活を送っている。 ■今作の名シーンと言えば、ラスト近くボビーが認知症を患った父を海岸に連れていて、涙を流しながら、語った言葉であろう。  ”俺がいると、その場の空気が悪くなるから、逃げ出しているんだ。俺がいないと全てが上手く行く。俺は疫病神なんだ・・。” ・つまり、彼は新しい価値観を求めて居たわけではないし、只、家族や友人を思い、”自分がいると皆駄目になってしまう・・”との想いから漂泊の旅に出るのであろう。 <今作は、ジャック・ニコルソンの初主演作だそうであるが、そんな哀しき男を見事に演じていると思った作品である。>

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NOBU

3.0ウッドストックとベトナム

2021年9月5日
スマートフォンから投稿

悩めるアメリカ人が行きあたりばったりにちょっとした事件や争いを続けてゆくだけで、これといった筋もドラマチックもありません。 あの時代の空気の中で、アメリカ人が共感する映画なので、部外者でかつ時代を隔てた今の日本人が見てもピンときません。 ニコルの旦那が主演だから観られました。悪くはないですけど理解はできないでしょう。

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越後屋

5.0ザ★アメリカンニューシネマという作品

2021年8月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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redir

4.0人生を彷徨う男の詩

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

初期のアメリカニュー・シネマの中で最も感銘を受けた作品。それまでの映画の形を小説に例えるなら純文学とすると、ニュー・シネマは日本でいう私小説であり、随筆に近い。ドラマとしての面白さや感動を訴えることより、作者が思う心の表現として映像を媒体とする形になった。感動より共感・共鳴の個人的な、または限られた鑑賞法に変化した。 この映画は、人生の挫折を味わった人には、主人公がなぜドロップアウトしたのか、なぜ慕う人を避けるのか、なぜ家出したのに自分の無能を父に告白したのか、そして、どこまで逃げるのか、それらの具体的な説明や描写がなくても理解しようとするのではないか。そこにこの映画の面白さ、良さがある。唯一、途中二人のヒッピーと交わす会話のシーンが笑いを誘う。彷徨い続けるジャック・ニコルソンの救いのない虚しさ、愛しても答えがない関係に気付かないカレン・ブラックの哀れさ、がいつまでも気にかかる映画。

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Gustav