春の調べ

解説

かつてサイレント時代に「エロチコン」(Erotikon)をものしたグスタフ・マハティが監督に当った映画で彼自らの原案になるストーリーを自ら脚色したもの。キャメラはヤン・スタルリックの担任で伴奏楽は「青の光」「モンブランの王者」のジュゼッペ・ベッチェが選曲した。主催者は「O・F氏のトランク」のヘディー・キースラーで、「人生謳歌」のアリベルト・モーグ、ヤロミール・ロゴス、レオポルド・クラマー等が共演。

1931年製作/チェコスロバキア
原題または英題:Symphonie der Liebe Ekstase

ストーリー

チェコスロヴァキアの豊かな農家の一人娘エヴァは早く母を失い父の手一つに育てられ、愛も恋も感ぜずに父親程のエミルに嫁がされた。結婚式が終ると直ぐ連れて来られたエミルの家はアパート住いで、商人である夫には優しい情緒もなく若く夢見がちなエヴァにはたえられない事だった。或る夏の日一匹の虻がたわむれているのを無慈悲に打ち殺したエミルにエヴァは全身的な憎悪を感じ、田舎の家へ逃げ帰って離婚の手続きを取った。或日エヴァは近くの河に泳ぎに行き建築技師のパウルと知り合った。彼は若く情熱的な青年だったので、今迄知らなかった青春の喜びと人生の美しさをはじめて知ったエヴァとの仲は急速に進み、お互いに激しい熱情で愛し合うようになったのである。一方エヴァに逃げられて、はじめて自分の態度が冷やか過ぎたことを自覚し、諦らめられぬ愛着を今更の如く感じたエミルはエヴァを訪ねて復縁を乞いた。そして今は完全に自分からエヴァの心が離れてしまっているのを知ったエミルは心淋しく帰途に就いた。その途中でパウルに出会って、パウルを町まで自動車に乗せてやった。同車させてやったエミルはこの青年がエヴァの首飾りを持っている事から、彼女の魂を奪った男と知り、自動車を列車に衝突させて彼に復讐しようと考えたが、パウルの逞しい生命力に圧倒されて決行する事が出来なかった。村の宿屋に着いた時、エミルは独りで拳銃を握った。階下の食堂ではパウルと、約束によって駆けつけたエヴァとが踊っている。エミルもエヴァも互に一つ屋根の下にいる事に気がつかない。エミルは一人さびしく死んで行った。古きものは去り新しきものは来る。エヴァは新しい命を産み落した。そこには生命の歓喜の声が雄々しくあがった。

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