二十日鼠と人間(1992)

劇場公開日:

解説

アメリカの代表的作家ジョン・スタインベックの同名小説を基に、1930年代の経済不況の時代に、社会の底辺に生きる2人の男の姿を描く人間ドラマ。監督・製作は「マイルズ・フロム・ホーム」のゲイリー・シニーズ、共同製作はラス・スミス、エグゼクティヴ・プロデューサーはアラン・C・ブロンクィスト、脚本は「バウンティフルへの旅」のホートン・フート、撮影はケネス・マクミラン、音楽は「ハートブルー」のマーク・アイシャムが担当。

1992年製作/115分/アメリカ
原題:Of Mice and Men
配給:MGM映画=UIP
劇場公開日:1992年12月12日

ストーリー

1930年、大恐慌時代のカリフォルニア。頭が切れて物知りのジョージ(ゲイリー・シニーズ)と、巨漢だが精神薄弱のレニー(ジョン・マルコヴィッチ)の2人は、農場から農場へ渡り歩く日々を続けていた。助け合いながら自分たちの夢を語り合う2人は、次の仕事先であるタイラー牧場に到着した。新しい仲間と仕事にも慣れ、彼らの夢に賛同するキャンディ(レイ・ウォルストン)の言葉に、夢が現実に近づいたように思えた2人の気持ちは弾んだ。牧場主の息子カーリー(ケイシー・シーマスコ)は彼らに敵意を持っていて、ある晩、彼はレニーに暴力を振い、レニーは誤ってカーリーに大怪我を負わせてしまうが、リーダーのスリムの機転でその場を切り抜ける。日曜日、納屋の中で死んでしまった子犬を抱え、悲嘆にくれるレニーの前に暇を持て余したカーリーの妻(シェリリン・フェン)が現れた。レニーは彼女を小動物を愛しむように触っているうちに、力の加減がわからなくなり、首を締めて殺してしまう。驚いたレニーは逃亡し、死体を発見、事情を察したジョージとキャンディは処理しようとしたが、カーリーの知るところとなり、銃を持って皆がレニーを追うことになる。レニーを見つけたジョージは、他人の手にかかる位ならと思い、レニーを射殺するのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第45回 カンヌ国際映画祭(1992年)

出品

コンペティション部門
出品作品 ゲイリー・シニーズ
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映画レビュー

4.5【人間の根源的なる善性と、”赦しと裁き”を見事に描き出した作品。】

2023年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■1930年、大恐慌時代のカリフォルニア。
 ジョージ(ゲイリー・シニーズ)とレニー(ジョン・マルコヴィッチ)はいつかは農場主になるという夢を抱きながら農場から農場へ渡り歩き、厳しい労働の日々を送っていた。
 だが、幼き時に頭を馬に蹴られた故に、知恵遅れながら、長身怪力のレニーが他愛のない事件を起こしたことから、2人の関係は辛い結末を迎えることになる。

◆感想

■学生時代に、スタイン・ベックの作品はほぼ、読破している。
 彼の巨匠のスタイルは弱者の視点に立ちつつ、世の不条理な状況に異を唱える作風であった。
 今作は、その原作をゲイリー・シニーズが見事に可視化した作品である。
 私は、年代的にゲイリー・シニーズ出演もしくは監督の映画を劇場で観た事はないが、彼の方の顔が好きである。
 ハンサムであるし、確かなる知性が感じられるからである。

■内容は巷間に流布していると思われるので割愛。

・ジョージがレニーを”アイツさえいなければ・・”と言いつつ、常に彼を気遣う姿。そして、二人で夢見る牧場の姿。
 - 明らかに、ジョージという人間の善性を表現している、-

・巧いと思ったのは、タイラー牧場で掃除夫として、働いているキャンディーが愛する老犬を仲間が撃ち殺すシーンと、ラストの哀しきシーンとの連動性であろう。

<知性の劣るレニーを演じたジョン・マルコヴィッチと、彼を庇護者の如く庇うジョージを演じるゲイリー・シニーズの姿が素晴しき作品。
 特に、ジョージがレニーの事を思って行った哀しき”赦しと裁き”のシーンは忘れ難き作品である。>

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NOBU

5.0胸にくる

2023年3月30日
iPhoneアプリから投稿

スタインベックはこの話をどんな閃きと気持ちで書き上げたんだろう。子供の頃に読んで感動したけど、改めて具体的な映像で観ることができてとても胸にくるものがあった。

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共感した! 2件)
ししまる

4.0マイルストン版よりも、このシニーズ版に軍配!

2022年8月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

マイルストン監督版に引き続いて
1992年のロードショー以来
再鑑賞したが、映像化作品としては
かなり進歩した印象だった。

マイルストン版は原作をなぞっただけの
イメージだったが、
このゲイリー・シニーズ監督版では、
翻訳同士の比較で恐縮ですが、
原作に無い台詞や場面設定で、
原作の行間を見事に埋め、
主役二人の心象を
分かりやすく描いていたと思う。

映像としても、
物語の背景となる牧場の全貌を見事に描き、
観客に、舞台設定情報を上手く提供していた
のではないだろうか。
また、レニーの怪力が故の各悲劇が、
これも分かりやすく系統付けられて描かれ、
更には、限られた世界に閉じ込められた
カーリーの妻の危険な苛立ちも
上手く表現出来ていたように感じる。

なかなか見事なゲイリー・シニーズ監督の
演出だったと思うが、
何故か、彼はこの後に監督することは無く、
次回作を観れなかったのは
残念に思える出来映えではなかったろうか。

最下層の人々が這い上がろうとする内容の
多いスタインベックの作品、
この物語も過去の話のようで、
しかし、中産階級の厚い層が失われ、
最下層が膨らみつつある現代にも
通じているのかと思うと、
まだまだ価値のある作品なのかも知れない。

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共感した! 3件)
KENZO一級建築士事務所

5.0意外と名作!

2018年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 小柄で頭のいいジョージ(シニーズ)と怪力で知恵おくれのレニー(マルコヴィッチ)。レニーは欲しいものには何でも手を触れる癖があり、以前いたところも、赤いドレスの女に触れたばかりに町を追われるハメになったのだ。二人には自分たちの牧場を持つという夢があった。

 牧場主の息子カーリー(ケイシー・シーマツコ)は元ボクサーで従業員をこき使いイジメばかり。その上、色気たっぷりの女房に首ったけなのに、いつも浮気してないかと探し回ってる。「あいつはいつかお前を殴る」というジョージの予想通りにレニーに八つ当たり。思わず「やれ!」と叫んだジョージのおかげでカーリーの拳を使い物にならないほどつぶしてしまう・・・

 機械にはさまれたということで事件は片付いたが、カーリーの妻(シェリリン・フェン)がレニーに近づく。夫以外の人間と話すことができない寂しさを紛らわすためだった。「柔らかいものに触りたい」癖があると言ったレニーに対し、妻が「髪の毛を触ってみて」と近づき、思いあまって殺してしまう・・・シェリリン・フェンといえばTV版『ツイン・ピークス』のオードリー役が印象的。左側の目尻のほくろが魅惑的・・・レニーもまいってしまったのだろう・・・

 同じ宿舎の爺さんが自分の飼っていた老犬を殺してしまうことに同意し、仲間が銃で殺してしまう。「どうせ殺すのなら、自分の手で殺すべきだった」と悔やむことが最後にきて伏線になっていたと気づく。ジョージの複雑な思いも死体を発見したときに決意したのだろう。一発の銃声がここまで悲しくさせるなんて・・・シニーズもマルコヴィッチも人間の心を持っていただけにグサリときてしまう。

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共感した! 2件)
kossy
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