トラスト・ミーのレビュー・感想・評価
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大げさに聞こえるでしょうが史上最高のラストシーン
ハル・ハートリーの映画には不器用な偏屈者がゾロゾロと出てくるが、誰もがどこかで青臭さを捨てきれない。そんなもどかしさが最もピュアな形で描かれているのが『トラスト・ミー』ではないか。もはや30年近い前の映画だが、特徴の薄い郊外の町で描かれるぎくしゃくしたラブストーリーは、今も痛切に胸に響く(それでいて全編が奇妙なユーモアで貫かれている)。なんといってもこの映画のエイドリアン・シェリーとマーティン・ドノヴァンの魅力には抗いがたく、モンスターペアレント的な母親を演じたメリット・ネルソンの複雑な表情にも魅入られる。そしてこのラストシーンを越えられる映画が果たして映画史上にいくつあるだろうかと考えてしまうのはハートリーファンの贔屓目か。ハートリーの映画をあまり知らない人たちに、ぜひとも観ていただきたいと思う。傑作。
お互いに同性の親から
お互いに同性の親からのコントロールされている状況から逃げることができない2人が出会う。
それによって2人とも、お互いを親から逃そうとするのに
自分は逃げられないと思っているのが不器用で切ない。
エイドリアン・シェリーは本当に可愛い。
自分は、毒親育ちだと自認してるので
同性の親からの抑圧が男女ともに描いてくれてるハル・ハートリーにありがとうと言いたくなった。
しかも、妙に軽やかに描いてあるから、自分も大丈夫かもと思わせてくれる何かがある。事の矮小化ではなく気持ちを軽くさせてくれるなんて案外できそうで難しい気がするけど、これはハル・ハートリーのマジックな気がする。
配信で鑑賞
Looserの世界
なんだか世間から落ちこぼれた人たちの愛すべき物語。って簡単にまとめるのは間違ってる気もするけど(笑)、とにかくとても面白い映画でした。ハル・ハートリーらしさ満開ですね。堪能しました。
現代的なラブストーリー
単にラブストーリーと言ってしまうと、この濃密な内容を言い表せない気がするけれど、明確に恋愛物語であるし、時代は経っているとはいえ、一筋縄ではいかない現代的な男女関係を見事に描ききっていたように思います。
かなり偏向な設定だなーと感じてしまうところはありますが、それが故に、かなり感情を揺さぶられ同時に高ぶらせてくれるような効果を生み出していた気がします。
いま見ると、映像の質感や音楽はどうしても古めかしく感じてしまうし、良くも悪くもこれぞインデペンドという雰囲気や作品の質なので、見始めはどうしても作品への(…これって本当に面白いのか…という)不安感を持ってしまいましたが、あらゆる設定とその絡み合いによって紡ぎ出される様々なストーリーに、完全に心を持っていかれました。
素晴らしい内容のみならず、カメラアングルや絵の構図の良さがまた見た目にも興味をそそられるものでした。強烈な内容を絶妙に引きずるような、このイカしたショットが、物語の続きみたいなものを感じさせる終幕の余韻なんかを生み出していて、実に見事なものでした。ちょっと古くさいなーと思ったバックグラウンドミュージックも、最終的には作品に非常にマッチしていたなぁという印象だったし、総体的な感動は全く想像できないものでした。ちょっと凄すぎます。
すき
もし幼い頃に見たら退屈に感じてしまいそうな雰囲気だけど、今の私にはなんだか魅力的で引き込まれて最後まで目が離せない作品でした。
ワンシーンワンシーンに意味が沢山詰まっているように感じました。全てが絶妙で、私の好みにガッチリはまりました…主演2人のシーンがどれも素敵で、危なくて切なくて突拍子もなくて、だけどとても惹かれる。
一つ一つの言葉も深くてなんだか全体的にはふわっと軽く見れるようなイメージの映画なのにその中にはすごく重くて奥深いものがあるなと思いました。お気に入りの作品になりました。
最高傑作
この頃のハートリーの長編映画(unbelievable truth-simple menまで)は同じテーマを覚めた視点で描きながら、最後はどうしようもないほどピュアな感情溢れる作風でその頂点がこの作品だと思います。
海外の批評家から淀川長治まで絶賛され、ハリウッドからの誘いを断っていたハートリーがこの後作家性を強めて行き、感情面の熱量が下がり早くもピークを過ぎてしまったのは残念。
彼の短編映画を見るとゴダール的要素を初期から持っていたのがわかりますが、彼の個性はそこではなかったのに。
不器用でアイロニックなセリフや独特のドライな空気感、それでいて最後に何より熱い感情を感じられる忘れ難い作品です。
家族全員応援したくなる
コメディな冒頭から、思いがけず波乱万丈の展開へ。
ユニークな登場人物たちの洒落た会話の駆け引き。
軽いタッチでサラサラと流れる時間。
それぞれの家族全員を応援したくなる。
人生成るようになるって!
ザシネマ 試写会にて
何とも言えない浮遊感がずっとある
ずっと一緒に浮いていられる
何とも言えない心地良さがある
リアルさが自分達が思い描く日常とは違うけれどこれが本来の日常なのかもしれなくて
世の中を美化しすぎてて、薄っぺらくしてるのは自分達で、本来は溝が深くなりすぎたら、音が途切れてしまうようなレコードのように繊細なもので溢れているのに見ないふりをしてキラキラとした部分だけを見ていたことに気づいた
誰かに影響を与えたり、
与えられたり、
そうして人は変わっていくし
お互いが出会って、影響し合うことで、
それぞれが型にはまっていくように溶け込んでいく
それが良いのか悪いのか分からないけれど
それが結局ありふれた日常に繋がっていくのだとおもった
愛が人を傷つけるのかもしれないけれど
傷つけたとしても
人間愛がないと生きていけないのかも
しれない
自分にとって遠くにあるものが
いつのまにかすごく近くなってて、
それが近くなったのかも分からないくらい
近くになりすぎてるときもある
それが本当の理想なのかもしれないな
20代の私がみるのと、これから何十年か経った私がみるのと感じ方が
大きく変わってくる映画だとおもった
年代が変わるごとに、自分に見せてあげたい映画だった
トラストミーはこれからの現代に溶け込んでいく映画だろうなとスクリーンでみた私はそう強く感じた
隔たった愛
到達点を着地させなければ愛情は!?
二人の愛情がどこに向かっているのか人生も含めてフワフワと二人の母と父の愛情は定まっているようで間違った方向にごちゃごちゃと。
50年代の色彩豊かなアメリカ映画に登場する顔立ちの印象があるマリアのイメージは軽そうでバカ女っぽいスタイルにアバズレ感が漂う序盤から打って変わって清楚で文学的な可愛い少女に様変わり!?
滑稽で笑わせられるシーンもあるがテーマは重いようにも感じられて。
居候して家族の間に入り込む感じは「ヘンリー・フール」を思わせるが本作の登場人物たちの複雑な感情がブレブレで皆んなどこにも落ち着けない寂しさとラストには希望が!?
絶妙のクスっと感
親父さんに
なんどもトイレ掃除をさせられて
綺麗にしてんのに
タバコの吸い殻を置き忘れ
ブチギレされるとこ笑った。
間合いが絶妙。
マリアの母ちゃんが一番怖いな。
マーティンがお父さんとの関係を表すセリフが良かった。
”おやじとの関係はまるでー
レコードみたいだ
レコードがのってるプレーヤーには
古びた針がついている
わかるか?
音がー
飛ぶ
ひどいもんさ
溝がつぶれている
でも頭の中で想像して聴く
知ってる曲だから”
分かり合えない人とは分かり合えないと
諦め生きていく。
ハル・ハートリー ファンの作り方
『シンプルメン』を観た時の印象は、1+1=2にはならないもどかしさと、じんわりと広がる胸の痛み。
オフビートだけれとも、決して冷たくはない不思議な温度感に惹きつけられました。
今回の試写会は『トラスト・ミー』をスクリーンで観られるだけではなく、深田晃司監督のお話も聞けるとの事でしたので、
「自分はいったい、ハル・ハートリー作品の何処に惹かれているのか?」がクリアになるかもしれないと思い、応募しました。
まず、日本語字幕の裏話を聞いたことでハートリー作品を身近に感じ、
深田監督から鑑賞にむけての的確なヒントをもらい、
嶺川貴子さんのライブで、ハートリーの世界に入るウォーミングアップもバッチリ!
最高の流れで『トラスト・ミー』を鑑賞することが出来ました。
そして鑑賞後まで粋な計らい。『風と共に去りぬ』のテーマ曲でお見送りとは!『トラスト・ミー』の余韻にこれ以上相応しい選曲はありません。
ザ・シネマさんの完璧なナビゲートにより、ここにめでたくハートリーファンが誕生。*\(^o^)/*
もっと感性で観る映画だと思っていたのですが、
このプログラムで鑑賞できたお陰か、映画の骨格がクッキリハッキリ見えて、すごくわかりやすい映画に感じました。
全てのシーンに意味があって、無駄なく組み立てられている。
うちの次女に言わせると「名作と呼ばれる映画は、最初から最後までテーマが一貫していてブレがない。」のだそうですが、
それで言うと『トラスト・ミー』は、まさに名作!!
もしかしたら『シンプルメン』も、当時の私が理解出来ていなかっただけで、改めて観たら理路整然と感じるのかしら??
ザ・シネマでの三ヶ月連続放映に加え、4〜5月は大阪と東京で劇場公開も控えているそうなので、このチャンスに確かめないと ε-( ̄^ ̄)
《ネタバレ無しの範囲ですが、ここからは観てからお読みいただきたい》
テーマはズバリ依存と自立!
個人の自立はもちろん、親子であったり、夫婦であったり、男女であったり、それぞれの対比が素晴らしい。
自分しか見えていなかった主人公が、
“相手からどう思われていたのか”を知った事をキッカケに
自分が周囲に“どう見てえいたのか”を知り、
シンメトリーの二人が出会うことで、互いに影響し合い、化学変化を起こしていく。
たとえ元のままの相手に戻って欲しくても、始まってしまった変化は止まらない。
家族の為に我慢して働くのだって、りっぱな依存。
愛という名の下の自己犠牲なんてクソ喰らえ!
世の中が作った価値観で生きるのではなく、価値観は自分自身が作っていくものだということを学び、そこから決断する物語でした。
そして、トリッキーな親達にも、共感出来る部分があり…自分自身も親の立場だからわかる部分が増えたのだとすると、歳を取るのも悪くないな。(*^ω^*)
お気に入りはベンチのシーンと、駅のシーン。
ユーモアもたっぷりで、何度も反芻して楽しめる全く色褪せない映画です。
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