頭上の敵機

劇場公開日:

解説

「蛇の穴」と同じく、二十世紀フォックスの副社長ダリル・F・ザナックが自ら製作に当たった1950年度作品で、最近相ついで作られた第二次大戦を背景とした戦争映画の1つである。監督は「海の征服者」のヘンリー・キングで、第二次大戦に参加したバーン・レイ・ジュニアと、サイ・バートレット(「アラスカ珍道中」)の2人が自作の小説より脚本を書いたもの。撮影は「狐の王子」のレオン・シャムロイ、音楽は「私も貴方も」のアルフレッド・ニューマンの担当。主演は「仔鹿物語」のグレゴリー・ペックで「パーキントン夫人」のヒュー・マーロウ、この映画でアカデミー助演賞をうけた「西部魂(1941)」のディーン・ジャガー、舞台出身のゲイリー・メリル、「私も貴方も」のミラード・ミッチェル、「ワイオミングの緑草」のロバート・アーサー、その他が共演している。

1950年製作/132分/アメリカ
原題または英題:12 O'clock High
配給:セントラル
劇場公開日:1950年11月14日

あらすじ

イギリスのアーチベリー飛行場は、アメリカ空軍第918爆撃隊の基地だった。在英爆撃隊の司令官プリッチャード将軍は、ドイツの戦力の源泉となっている軍需工場を壊滅させるために、危険と知りつつも、指揮下の舞台に昼間爆撃を敢行せしめた。第918爆撃隊は航空士のジムメルマン中尉の誤算により、敵の集中攻撃をうけて、4分の1以上の未帰還機を出した。温情家だった隊長のダヴェンポート大佐は、これを味方の不運として表沙汰とせずにいたが、指令部付きのサヴェージ准将は親友である大佐の心境を見るに忍びず、率直にプリッチャード将軍に進言した。こうして、918爆撃隊はサヴェージ准将が代わって指揮をとることになった。サヴェージは隊の士気が著しく弛緩していることを知った。すでに責任を感じたジムメルマン中尉は自殺してしまったが、その他の責任者に対し彼は容赦なく賞罰を明らかにし、猛訓練を全員に課した。ダヴェンポート大佐の代とまったく変わったサヴェージの処置は搭乗員の間にはげしい不満が湧き起こり、転属を申し出る者が多数にのぼったが、隊付の古参であるストーヴァル副官の骨折によって、一応おさめることができた。サヴェージは出撃の都度、先頭機で指揮をとり、部隊の責任者として力の限りをつくした。それが隊員にひびかぬはずはなく、918爆撃隊の成果は目立って上昇するとともに、転属希望を撤回する者が続出した。手傷い攻撃をうけたドイツは戦闘機を増強してこれに立ちむかいはじめたので、米空軍の消耗も増加の一途をたどり、918爆撃隊といえども、その例外たり得なかった。彼はダヴェンポートの心境がはじめてわかるような苦しい立場に追いこまれるが、なおも自らの心をはげまし、部下を死地に追いやる悩みに追われながら部隊に任務命令を与えなければならなかった。こうした心身ともに彼に襲いかかる激務のため、ついに機上の人となり得ないほどに疲労してしまった。彼はストーヴァルやダヴェンポートが入院するように叫ぶ言葉も耳に入らないように、帰還機の爆音を、1つ、2つと数えていた。──それは1942年の秋、アメリカ空軍の直面したもっとも苦戦の時代の出来事である。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第22回 アカデミー賞(1950年)

受賞

助演男優賞 ディーン・ジャガー
音響録音賞  

ノミネート

作品賞  
男優賞 グレゴリー・ペック
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映画レビュー

3.0規律と人心掌握

2025年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 上に立つ者の素養について考えさせられる映画。グレゴリー・ペック演じるサヴェージのように、規律に厳しいだけでは士気が下がる。ダヴェンポートのように人気なだけでは成果は出にくい。上に立つ人間に求められるのは、部下の力を最大限に引き出して、組織として成果を上げることだ。そのためには規律と人心掌握の両立が求められる。

 多分今までサヴェージは、厳しいだけでも付いてくるような、それなりに優秀な部下ばかり持ってきたのだと思う。今までそれで成果を上げてきた。しかし同じやり方を今回も行ったところ、強い反発を食らい、まさかの異動願いが続出した。そういう経験を通じて、トップとしてのあり方について考え人間的に成長することができた。今作で監督が描きたかったポイントだと思う。

 それにしても、サヴェージの指摘は真っ当な内容ばかりだし、パワハラ的な理不尽な言動も無いのに異動願いが続出するって、随分甘っちょろい奴らだな。彼らが特段駄目なのか、それとも日本人との国民性の違いなのか。

 ストーリーは、サヴェージと部下達の心情の変遷の描き方がいまいちだった。ただサヴェージ指揮下で成果を上げただけで彼を認めるようになっている。もっとサヴェージの指揮や指摘に対して、徐々に彼を有能だと認めるような描写が欲しかった。あと戦闘シーンに実際の映像を使用しているのは、歴史的に貴重だと思った。

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根岸 圭一

4.0企業研修の教材として使われた映画

2021年5月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

興奮

知的

本作は、第二次大戦下、イギリス駐屯のアメリカ陸軍航空隊(B-17爆撃隊)の物語。
実在の人物やエピソードを散りばめた秀作。

いわゆる「戦史」「ドッグファイト(空中戦)」
に重きが置かれず、
リーダーシップ、つまり、

・組織の束ね方
・士気のあげ方
・人材配置
・個人ごとの接し方(育成)
・規律と休養(緊張と緩和)

など、平時の企業でも役立ちそうなテーマで
見るものを引っ張ってくれる。
演出、演技も戦時下の緊張感をよく表現していて、
安っぽい「青春群像シーン」もなく、
硬派な作りとなっていて私好みである。

ラストに向かうシーンは秀逸な展開で、
グレゴリーペック演じる厳格な准将も、
実は、一人の弱い人間であったことが
迫真の演技で表現され、静かに胸を打つ。

シーンとしては順番前後するが、
解任した前指揮官(友人でもある)との会話、
部隊再建への助言を求めるが
結局は、自分とは考えが相容れない、
とグレゴリーペックは強弁する。
これが、ラストシーンへの伏線として
効き目が絶大だった。

企業研修の教材として使用されたことも
うなづける。

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Haihai

3.0ドイツ空爆

2021年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

第二次世界大戦の前半、アメリカ空軍はイギリスからドイツの空爆に飛び立っていた。
爆撃隊はドイツ軍の戦闘機や高射砲にさらされ、精神的に参っていた。
戦闘シーンは軍の記録映像を使っており、迫力は充分で恐怖が伝わってくる。

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いやよセブン

3.5そんな時が来ませぬように

2021年5月17日
iPhoneアプリから投稿

怖い

知的

今は日本はいちおう平和ではあるが戦争にでもなったらどうなってしまうのだろうか
無宗教者ばかりで自国愛も薄く身近な者すらも命をかけて守ると言うような気合いも見えない
そう、どっぷりと平和につかって手足を伸ばして暮らしているのだ
この作品に出てくる言葉にこんなものがある

「最大限の努力」
使う側からすればとても都合のいい言葉だ
言われた方はたまらない、具体的な目標も何もあったものではないのだから
ましてや戦時中ならどんどん過酷になっていってしまう
太平洋戦争の日本もそうだった、ベトナム戦争でもアメリカは経験している
どん底まで行った兵士達に上の人はまだこんな事を言うのだ
最大限の努力をしろ、最大限の努力が足りないと

人には本人すら分からない力があるのはわかる、いざと言うときにその能力は発揮されるだろうけど出来れば戦争とは無関係なところで発揮したいものです
美しいストーリーに描いても所詮は人殺しの延長なのだからやっぱり戦争が無い方がいいものです

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カルヴェロ

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