殺人鬼に罠をかけろ
劇場公開日:1958年7月26日
解説
フランス探偵小説界で多くの読者をもち、我国にも愛読者の多いジョルジュ・シムノンの、メグレ探偵物の映画化。戦前のデュヴィヴィエ作品「モンパルナスの夜」でアリ・ボールが演じたメグレを、この作品では「赤い灯をつけるな」のジャン・ギャバンが演じる。監督は「ノートルダムのせむし男」のジャン・ドラノワ。ロドルフ・モーリス・アルローと「非情」のミシェル・オーディアール、ドラノア自身の共同脚色に、オーディアールが台詞を執筆し、「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」のルイ・パージュが撮影した。音楽はポール・ミスラキ。他の出演者は「赤い灯をつけるな」のアニー・ジラルド、「夜の騎士道」のジャン・ドザイ、「愛の迷路」のオリヴィエ・ユスノ、ジャンヌ・ボワテル、リノ・ヴェンチュラ等。製作クロード・オースール。1986年4月12日からのリバイバル上映の際(「サン・フィアクル殺人事件」と同時上映)に邦題が「パリ連続殺人事件」と改題された。
1958年製作/119分/フランス
原題または英題:Maigret Tend un Piege
配給:東和
劇場公開日:1958年7月26日
ストーリー
パリ第四区の一帯は恐怖のどん底につきおとされていた。五月初めから四人の女が夜の九時頃殺されていた。金品を盗むでも暴行を働くでもない、ただ服を引き裂くだけの、動機のない殺人をおかして、犯人は闇の中に消えてしまう。メグレ警部(ジャン・ギャバン)は犯人が自分の犯行を誇示する性格の者なのを見抜き、偽の犯人をとらえて現場検証を行い、おとりの婦人警官を十数名現場付近に放って、見当違いを嘲笑して新しい犯行を犯すであろう犯人を捕える罠をかけた。予想は的中したが犯人はボタン一個を婦警の手に残したまま、重囲を脱して消えてしまった。その夜、現場検証に集った人々の中から、挙動不審の者の尾行を命じたメグレは、ラグリュム刑事によってマークされた、マルセル・モーラン(ジャン・ドザイ)なる建築装飾家の妻、イヴォンヌ(アニー・ジラルド)という若い女に着目した。彼女はジョジョという遊び人と密通しているという。犯人がよく消えうせるテュレンヌ街に、同じモーランという未亡人所有の建物があることを、容疑者としてあげた肉屋のバルブロから聞いたメグレは、翌朝、女の夫マルセルのアパートを訪れた。彼は芸術家肌の男で、テュレンヌ街の未亡人とは自分の母だといった。テュレンヌ街の建物を訪れたメグレは、小さな路地に入口を発見して、そこから五階の未亡人の部屋を訪れた。彼女の話から、メグレはマルセルが、母の溺愛によって正常な社会人たる能力を失った、性格異常者なのを見抜いた。そして、遊び人ジョジョを調べて、マルセルが性的不能者で、イヴォンヌは、ジョジョと通ずるまでは、処女妻であったこともつきとめた。殺人事件は、遊び人とイヴォンヌが最初に密会した日から起っている。妻の浮気を知ったマルセルは、異常者の嫉妬をもって、他の女を殺すことによって復讐したのである。推理を完結させたメグレは、マルセルを呼んで尋問した。彼の額からは汗が流れ、もう逃れるすべはなかった。その時、例の一劃で又女が殺されたという報告が入った。しかし、その犯行の手口が過去の四つのものと全く違うことを聞いたメグレは、落ちつきをとりもどした。呼出された未亡人とイヴォンヌの二人のうち、第二の犯行を犯したのはイヴォンヌだった。彼女は、この不能者を変則的に盲愛していたのだ。朝の街を、メグレはマルセル逮捕にむかい、新しい犠牲を求めてバルブロの店にひそみ、彼が“男”でないことを嘲笑した浮気女モーリセットを殺そうとする寸前に、マルセルを捕えた。事件は解決したが、メグレの心は折からの雨のように、晴れなかった。彼は激しい雨の中を、一人憂鬱に、濡れながら歩いた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジャン・ドラノワ
- 脚色
- ロドルフ=モーリス・アルロー
- ミシェル・オーディアール
- ジャン・ドラノワ
- 原作
- ジョルジュ・シムノン
- 台詞
- ミシェル・オーディアール
- 製作
- クロード・オースール
- 撮影
- ルイ・パージュ
- 美術
- ルネ・ルヌー
- 音楽
- ポール・ミスラキ