洪水の前

劇場公開日:

解説

「裁きは終わりぬ」、「われわれは皆殺人者だ」につぐ、アンドレ・カイヤットの監督作品で一九五四年カンヌ映画祭で国際大賞を得ている。脚本はカイヤットとシャルル・スパークが協力して書き卸し、台詞もスパークが担当した。撮影はジャン・ブルゴワン、音楽は「悪魔のような女」のジョルジュ・ヴァン・パリス。主な出演者はこの作品で日本に本格的デビューするマリナ・ヴラディ、「埋れた青春」のジャック・シャバッソールに加えて「旅情」のイザ・ミランダ、「寝台の秘密」のベルナール・ブリエ、「女優ナナ(1955)」のポール・フランクールらが顔をそろえている。

1954年製作/フランス
原題または英題:Avant Le Deluge
配給:新外映
劇場公開日:1955年11月29日

ストーリー

ダニエル、ジャン、リシャール、フィリップの四少年にリリアヌという女の子をまじえた五人は仲のよい学生グループで戦後の混乱と不安の中に成長した子供達である。ダニエル・エプステン(ロジャー・コジオ)は孤児で両親はナチの収容所で死んだ。ジャン・アルノオ(ジャック・シャバッソール)は母一人子一人のつましい暮しだが母アルノオ夫人は一人息子に総ての夢を托し、口やかましく干渉する。リシャール・デュトワ(ジャック・ファイエ)は音楽家の息子で父はナチの刑務所生活から極度に神経質となり家庭は暗い。リシャールは教授の娘リリアヌ(マリナ・ヴラディ)を愛しているが彼女の兄はコミュニストで父といつも衝突し、彼女は全く孤独だった。フィリップ(クレマン・チェリ)は大金特の息子だが母は愛人に夢中。エゴイズムな両親の生活と息苦しい現代に捲き捲きした五人はダニエルの家に集りヨットで幸福の島への脱出を夢みたがその空想も現実面で破れ、彼等は女たらしのモンテッソン氏をリリアヌの魅力で釣って邸内に忍び入り資金を得たが見張りのジャンは巡回中の巡査を射殺してしまった。数日後、邸の外に停めておいた自動車の番号から嫌疑はダニエルにかかり、狼狽した四人の仲間は警察で行われると彼等が想像した拷問をダニエルに試みて彼をも浴槽の中で殺してしまった。この頃、モンテッソン氏もリリアヌたちのグループの仕業に感付き、気の弱いジャンは犯した罪の恐しさに自殺を計り、そこに来訪した刑事にすべてを告白した。裁判の結果、フィリップ、リシャール、ジャンの三少年は五年の懲役に処せられ十七歳に充たないリリアヌだけは無罪放免となった。

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