眼下の敵

劇場公開日:

解説

イギリス海軍中佐D・A・レイナーが自分の体験にもとづいて書いた処女小説「水面下の敵」の映画化で、第二次大戦におけるイギリス駆逐艦とドイツ・Uボートとの戦いを描く戦記もの。「翼よ!あれが巴里の灯だ」の共同脚色者の1人、ウェンデル・メイスが脚色、「夜の乗合自動車」のディック・パウエルが監督した。撮影は「悪い種子」のハロルド・ロッソン、音楽は「気まぐれバス」のリー・ハーライン。主演は「海の荒くれ」のロバート・ミッチャム、「素直な悪女」のクルト・ユールゲンス、新人アル・ヘディソン、「アフリカの女王」のセオドア・バイケル。

1957年製作/アメリカ
原題または英題:The Enemy Below
配給:20世紀フォックス
劇場公開日:1958年1月28日

ストーリー

第二次大戦中の南大西洋。ドイツのUボート狩りをやっていたアメリカの駆逐艦ヘインズ号のマレル艦長(ロバート・ミッチャム)は着任以来自室に閉じこもりきりだった。そこで乗組員たちは彼が民間出身のため船酔いで苦しんでいるのだろうと噂し合っていた。しかし、彼は彼が着任する直前乗っていた船が魚雷攻撃を受け、愛する新妻が自分の前で死んでいくのを見て憔悴していたのだった。それでも彼は個人的にドイツ人を憎む気にはなれないという男だった。ある日、彼の艦のレーダーがUボートをとらえた。初めて彼は乗組員の前に姿を現わし、夜通しの追跡をはじめた。一方Uボートの艦長フォン・ストルバーグ(クルト・ユールゲンス)は、味方が手に入れた敵の暗号書を本国へ持ち帰るという重大な使命をもっていた。彼は沈着で勇敢な男であったが、2人の息子を戦争で失い、無益な戦争を呪っていた。こんな2人の男が水面を境としてお互いに相手のすきを狙って息を殺していた。しかし、いつしか2人の心には、お互い一面識もないが尊敬の念が期せずしてわいて来た。再び行動を開始したUボートは、とっときの魚雷4本で見事ヘインズ号を射止めた。直ちに浮上したストルバーグ艦長は、マレル艦長に5分以内に離艦するよう要求した。これを見たマレル艦長は全員を離艦させ、自らも離艦すると見せかけ、最後の力をふりしぼってUボートに体当たりした。一瞬、すべては終わった。今は敵味方の別なく、海上では彼我の乗員たちが助け合っていた。全員の脱出を認めて離艦しようとしたストルバーグ艦長は、永年の部下の1人の姿が見えないのに気づいた。ようやく水につかった艦内から部下を救い出したストルバーグ艦長は、これ以上の救出が無理なことを知って艦橋に残った。Uボートに仕かけられた時限爆弾の爆発を待つかのように……。その時、ストルバーグ艦長の目に、マレル艦長の姿がうつった。ストルバーグ艦長の手が挙がった。マレル艦長の手も挙がった。2人の海の男の心は今やはっきりと交わり合った。マレル艦長からロープが投げられた。傷ついた部下を、ロープにむすびつけるストルバーグ艦長、これを引くマレル艦長、この2人のところに、生き残った両艦の乗組員が殺到した。翌日、救援にやってきたアメリカ駆遂艦の甲板で、ストルバーグ艦長とマレル艦長が立ち会い部下の葬儀が行なわれた。そこには海に生きる男のみが知る、厳粛な気がみなぎっていた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第30回 アカデミー賞(1958年)

受賞

特殊効果賞  
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映画レビュー

3.5戦艦vs潜水艦

2024年10月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

マジで良い映画だったな~ どっちの艦長も格好良かったし、ラストも最高。

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カミムラ

4.0戦争映画の名作

2021年5月28日
iPhoneアプリから投稿

ロバートミッチャム演じる米駆逐艦艦長とクルトユンゲルス演じる独潜水艦艦長との壮絶な心理戦を描いている戦争映画の名作です。当時としてはとてもリアルに撮影されており、潜水艦内の傾きも再現されており、臨場感が伝わっている。駆逐艦内、潜水艦内と限られた空間のみでの戦争の凄まじさを伝えており、史上最大の作戦のような大規模な戦闘シーンでなくても、真の指揮官の姿、兵士の恐怖などをうまく伝えている名作だと思います。

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シムケン

4.0どこを切り取っても戦争は理不尽

2021年5月27日
iPhoneアプリから投稿

怖い

知的

難しい

戦争の先にある希望とは何だろうか 戦争を始める理由は分かりやすいだろうが終わったその先の希望となるとよく分からない 映画の中でも希望があると言ってます 戦争が終われば戦った相手国の人々までも恨むことはしなくたっていい 何処かの誰かが始めて命令を受けて戦っていただけなのだから恨みで戦っていたわけではないのだ 恨みで戦うことは戦争ではないように思う この先どんな形で「戦争」というものが行われるかは分からないけど今までの歴史から考えるとまだまだ人の命を奪う事が多いのでしょうね その戦いを始める時に事の発端にかかわった人々は希望を持って戦い始めるのでしょうか たぶん前線の兵士たちが自分は何故戦うのだろうと自問し始めた時にこうでも考えなけりゃやってられない、そう信じ込もうと 最初から希望を持つなら戦争なんてやりっこないだろうに

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カルヴェロ

5.0眼下の敵とはなにか? 実はダブルミーイングになっています それは、序盤で新任艦長が老軍医に話すことです

2020年11月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

星5つでは足らない! 7つでも8個でもまだ足らない これは星10 個の作品だ! 余りににも有名 ローマの休日のように、いろいろなジャンルの映画にはそれぞれこれを観てないとお話に成らないでしょ!という映画があります 何で観てないの?おかしいでしょ?! そう言われる映画です 潜水艦ものなら本作です いや戦争映画のベスト5にはいる超傑作なのは間違いないと思います 素晴らしい脚本と演出です 全く無駄がなく、するするとと物語が進み、気がつけばもうクライマックスです 安全深度の限界を超えて深く潜行するシーン 深度計の針がレッドゾーンに入って艦体がガタビシ言っています Uボートのベテラン艦長はそれを命じながら、不安そうに深度計を見つめます その見つめる深度計のすぐそばから、いきなり激しく漏水が噴き出す演出は、一切無駄がない惚れ惚れする見事な演出です 序盤の駆逐艦の士官室のトランプのシーンも、ただのこの艦の状況説明や新任艦長の噂話だけのシーンではないのです これから始まる駆逐艦とU ボートとの頭脳戦を予告するものでもあるのです Uボートの艦長の初登場シーンも、総統がどうしたこうしたのスローガンの看板に冷たい目を向けさせた上で、使ったタオルをわざわざ総統と書いてある部分が見えないようにしてその場から離れさせるのです それを見せてから副長との会話で、彼がどのような人物であるのかじつにスマートに簡潔に紹介してみせます このように枚挙にいとまがありません 眼下の敵 もちろん海面下の潜水艦のことです 劇中、停止した駆逐艦のコックが垂らす釣り糸に沿ってカメラは甲板の高さから喫水線まで降りて、さらに海中に進んで、奥深く海底に潜むUボートを見せるシーンはそのものズバリです しかし、実はダブルミーイングになっています 眼下の敵とはなにか? それは、序盤で新任艦長が老軍医に話すことです 悲惨と破壊に終わりはない 頭を切り落としても、またはえる蛇だ 殺す事はできない 敵は我々自身の中にあるのだ 本当の「眼下の敵」とは、戦争の現実に押し流されてヒューマニティを見失ってしまう、そのことです これがクライマックスでの彼の行動につながっていきます このテーマが本作を貫くバックボーンとして確立されているからこそ本作を名作たらしめているのだと思います 昔、横須賀でタクシーに乗った時、運転手さんからこんな話を聞きました 日本の潜水艦乗りは乗せたらすぐわかる だってディーゼルの臭いが体に染み付いているからと アメリカさんはわからないね だって原潜だからさ 本作のUボートの艦内は、そのディーゼルの臭気や、嫌になる暑さと湿度の高さを感じるリアリティがあります 1957年の作品、米国と西ドイツの合作 だからこそのリアリティなのでしょう 日本にも潜水艦映画はあります 1955年に「人間魚雷回天」が元海軍出身の松林監督が撮影しているものです それだけに日本の潜水艦映画では稀にみるリアリティがあります しかしその題材はまさにこの眼下の敵に自ら負けてしまった特攻兵器の事です 両極端のようでこの二つの作品は、どちらもこの眼下の敵に対して、一方は勝ち、一方は敗れた戦いを描いている同じ物語だったのです 戦争の余りの悲惨が改めて胸迫ります 監督のディック・パウエルは、若い頃は二枚俳優でミュージカルとかに出て、50代で監督になるまで俳優をしていた人 第7回アカデミー賞事件ではベティ・デイヴィスの為に抗議の先頭にも立った人で人望も有ったのでしょう 本作製作時は53歳 予告編に監督本人が登場するのは、そういう事で本人がでたがっていたのか、スタッフが面白がって出ろ出ろとうるさかったのかどちらかだったのでしょう 監督の才能がある人だったと思います 本作を入れて撮ったのは僅か5 作だけでした 58歳の早すぎる死でした もったいないことです

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あき240