外人部隊(1933)

解説

在仏時代に「雪崩」「カルメン(1926)」等を作り渡米後「接吻」「あけぼの」等を作ったジャック・フェーデが帰仏してからの第一回の監督作品で脚本はフェーデ自身が「父帰らず」のシャルル・スパークと協力して書き下ろしたものである。主演者はコメディー・フランセーズ座附きのマリー・ベルと舞台出のピエール・リシャール・ウィルムとの二人であるが、これを助けて「素晴らしき嘘」のフランソワーズ・ロゼーとフランス劇団の一方の雄ジョルジュ・ピトエフとの二人が重要な役を務めて出演する。その他の出演者は「秘密の家」のシャルル・ヴァネル、「バラライカ」のネストル・アリアニ、「商船テナシチー」のピエール・ラルケ、カミーユ・ベール、レヴュウ女優のリーヌ・クレヴェルス、など。撮影は「レイ・シャルマン」のハリー・ストラドリングとモーリス・フォルステルの二人が担任、音楽は「クウレ・ワムペ」のハンス・アイスラーが担任した。セットは「巴里祭」「自由を我等に」と同じくラザール・メールソン。

1933年製作/フランス
原題または英題:Le Grand Jeu

ストーリー

ピエール・マルテルはその情人フローランスの奢侈を満足させるために多額の金を費消し遂に会社の金にまで手をつけた。で危うく訴訟沙汰になろうとしたところ伯父が金の問題は引き受けてくれたので此の場は丸く納まったが、その代わり彼は外国へ亡命せねばならなくなる。ピエールはフローランスに共に逃げてくれと言うが、淫華な彼女はそれに明確な答弁を與えてくれない。で自棄になったピエールは独り国を去って地獄の生活たるモロッコの外国人部隊に投ずる。行軍と戦いと病気と、それから絶望と空虚との外国人部隊の生活。慰めは酒と女とだけであった。そしてピエールにはフローランスの面影が忘れ様としても忘れられなかった。それがいつ迄も彼の心を苦しめた。此の外国人部隊で彼に親友がいた。ロシアから亡命してきたニコラ・イヴァノフがそれである。ピエールとニコラの二人の宿の主婦はブランシュといって世の中の憂いさも辛さも知り尽くしている女だった。だが、彼女の夫クレマンは怠惰でそれに豚のような心の男であった。ある晩、ピエールはフォリー・パリジェンヌの酒場でフローランスと顔容の同じな歌女イルマを見た。イルマはフローランスの金髪の代わりに黒髪で、それに嗄れた低い声を持った、頭にピストル疵のある教育のない女だった。だが、純情な女だった。そしてピエールがイルマに恋人の面影を見出して彼女と一夜の契りを結んでから、イルマはピエールに真実の恋を捧げた。ピエールにとってもイルマが必要になってきた。そして彼はブランシュの厚意により彼女から金を借りて、イルマを酒場から引き取りクレマンの宿屋に下働きとして住み込ませた。で二人の恋はここに進んで行ったが、時としてピエールにイルマが実はフローランスではないかと狂気染みた妄念が起こるのである。するとイルマは男の言葉が恐ろしく、ただ泣いた。ところでブランシュのカルタの運命判断の占いは実によく当たるのであった。彼女の占いはピエールが人を殺すことを予言したが、それが実となって現れ、イルマをいどんだクレマンはピエールと争って、不慮の死を遂げた。ブランシュはそれを闇に葬ったが、次いで危険な進軍に我と我が身を投出して行ったニコラが死んだ時には、流石のブランシュも嘆きに暮れた。彼女とニコラとの間には人知らぬ情けの心が結ばれていたからである。その後、ピエールの心が漸く平静に立ち返った頃、伯父が死んで彼の許に遺産が入った手紙が来た。五年の年期があけたピエールはイルマの無情の歓喜にまで彼女を伴ってフランスに帰ることを考えた。だが、カザブランカの港から帰国の船に乗るその前日、ピエールは不図バシャに伴われたフローランスに再会した。彼女を見るとピエールの心は再び彼女への熱い思いに乱れた。そして彼女と会談した時、共に逃げてくれと迫った。だが女の心は冷たかった。かくてピエールは前にも増して自棄となった。ピエールはもう世の中に生きる望みはなくなった。イルマと共に暮らす気にもなれぬ。そこで彼はイルマに内緒で再び外国人部隊に入り、イルマには金を與えて後から行くからと云って彼女一人をフランスに立たせた。然し、進軍の朝、ブランシュのカルタの占いは死!と出た。ピエールは今度こそ屹度死ぬに違いない。だが、総ての望みを失った彼は軍隊に加わって行くのである。後に唯一残されたブランシュの悲しみ。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

2.0「モロッコ」の方がまだ納得感が…

2021年4月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

この作品の4年前に製作された
ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の
「モロッコ」と同じ場所、同じ外人部隊との
似た設定だったことから鑑賞。
デュヴィヴィエ作品の中でも一番好きな
「舞踏会の手帖」のマリー・ベルが主役の一人
だったので期待も膨らんだ。

果たして、フローランスとイルマは同一人物
なのかと想像を巡らしながらの鑑賞だった
ので集中出来たまま時間は推移したが、
しかし、どうしても完成度が高い映画とは
思えなかった。

多分に、ピエールは再会したフローランスの
自分への心情は
金があってのことだったとの確証と、
イルマへの想いも単にフローランスに
似ていたからとの気付きから、
女性への邪念を捨てての死への従軍へ、
と言いたいのだろうが、
そのための彼の心象描写が曖昧で
不充分過ぎないたろうか。

イルマの頭の傷で記憶がはっきりしない
との設定の中、
一夜の後の彼女の涙や
何故か知っている車のカラー等、
二人が同一人物ではないかと
観客を混乱させるだけの
狡猾描写が続き過ぎる。
結局は事実では無いのだから、
本来はピエールの心情描写の方に
ウエイトを置くべきではないのか。

主人公の異性への心情が
自然に感じられる分、
「モロッコ」のストーリーの方が腑に落ちた。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
KENZO一級建築士事務所