エレメント・オブ・クライム

劇場公開日:1987年4月25日

解説

腐敗と倦怠に包まれた20世紀末のヨーロッパを舞台に、一人の警部が犯罪を追っていく夢とも現実ともつかない作品。ボルヘスの一連の小説や、ロブ・グリエの『消しゴム』を彷彿とさせる。製作はペア・ホルスト。監督・脚本はこの作品が長編デビューのラース・フォン・トリアー。共同脚本にニルス・ヴェーセル。撮影はトム・エリング、音楽はボー・ホルテンが担当。出演はマイケル・エルフィック、エズモンド・ナイトほか。一九八四年カンヌ国際映画祭高等技術委員賞受賞。

1984年製作/104分/デンマーク
原題または英題:Forbrydelsens Element
配給:ユーロスペース
劇場公開日:1987年4月25日

あらすじ

殺人事件を担当する警部フィッシャー(マイケル・エルフィック)はヨーロッパでの捜査を終えてカイロに戻っていたが、その時の精神的ショックがひどく精神科医の治療を受けることになった。催眠状態の中で彼はヨーロッパへ舞い戻る……。フィッシャーは、今は引退している警察学校の恩師オズボーン(エズモンド・ナイト)を訪ねる。彼の著作『犯罪の原理(エレメント・オブ・クライム)』は、フィッシャーの哲学の中核をなすほどだが、オズボーン自身は今や激しく否定していた。フィッシャーは“ロット殺人事件”と呼ばれる猟奇的な少女連続殺人事件を、警察署長クレイマー(ジェロルド・ウェルズ)の指揮のもと担当する。彼は、オズボーンが以前この事件を担当し、殺人をハリー・グレイという男と結びつけていたことを知り、再びオズボーンの家を訪ねる。たがオズボーンは取りつかれたようにグレイはもういない、と主張するのみだった。フィッシャーは、『犯罪の原理』に従い、犯罪をその発端から理解し、解決しようとする。娼婦キム(ミー・ミー・レイ)の助けをかり、事件の仕組みが明らかになるにつれ、フィッシャーはいつしか自分も殺人事件に巻き込まれたことに気づく。ハリー・グレイはもはや存在せず、オズボーンが自ら殺人を犯したと告白し首を吊って自殺していた。彼はあまりにも犯罪者の心理を想定するのにたけていたので、グレイが死んだ時、殺人計画を自分の手で完結させたいという思いを抑えきれなかったのだ。そして悲劇的なまでに皮肉なのは、フィッシャーもまた同じ手法を用いたことだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第37回 カンヌ国際映画祭(1984年)

受賞

コンペティション部門
フランス映画高等技術委員会グランプリ ラース・フォン・トリアー

出品

コンペティション部門
出品作品 ラース・フォン・トリアー
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(C)1984 Liberator S.A.R.L.

映画レビュー

3.5 【”Still il,そして犯罪の原理に取り込まれて行く男。”今作は、セピア色の退廃的な世界の中で繰り広げられる狂気性、精神の闇を描いたラース・フォン・トリアー監督のデビュー作である。】

2025年12月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■年代は明示されないヨーロッパが舞台。
 フィッシャー刑事はかつての恩師・オズボーンを訪ねる。彼の著作「犯罪の原理」は、捜査官が犯罪者の視点に立ち、事件を追体験しながら解決へと導く方法論で、フィッシャーはその影響を強く受けていた。
 そんな中、少女が惨殺されバラバラにされた”宝くじ殺人事件”が起こり、彼はクレイマー所長に命じられ、その捜査に当たるが徐々に、犯罪者”ハリー・グレイ”と同化していくのである。

◆感想

・ご存じの通り、ラース・フォン・トリアー監督と言えば、酷い鬱病を患う中で、精神的に脆く、危うい問題作を公開して来た監督である。

・今作は彼のデビュー作だそうだが、セピア色の世界の中でフィッシャー刑事が、犯人”ハリー・グレイ”の足取り通りの行動をする中で、徐々にハリーと同化していく様が、描かれる。

・非常にアーティスティックな作品でありながら、流れる音楽や世界観に引き込まれる作品である。

<今作は、セピア色の退廃的な世界の中で繰り広げられる狂気性、精神の闇を描いたラース・フォン・トリアー監督のデビュー作である。>

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NOBU

2.5 村上春樹やカフカみたい

2025年5月29日
Androidアプリから投稿

村上春樹やカフカみたいな不思議な映画です。

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van

3.5 白昼夢を体験したことを初めて認識した

2024年3月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

難しい

映像の色味や音楽は幻想的だが美しいと言い切るにはあまりにも廃れた街、家、人々。
玩具の車が走り出し、ぶつかるとともに画面を横切る人の乗った車。
新聞を叩く音が鳥の羽ばたく音に重なる。
無数の空き瓶が敷き詰められた倉庫の中にある、小屋。
主人公フィッシャーの頭痛は動くドアノブと少女の悲鳴が聞こえた、が。眼は開いているはずなのに頭は何も考えておらず、テレビ画面以外には何も見えていない。
主人公は犯罪者の心理に迫り過ぎた?よく分からないが、少しだけわかる気もするストーリーは絶妙なのかもしれない。多分解った風に私の頭が解釈しているだけだとは思うが、いつか再度見直して、答えの無い答え合わせはしなければならないと思う。

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ezio

3.0 迷宮

2023年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

知的

 カイロで精神治療を受けるフィッシャー刑事は、問診により担当していた事件を振り返る。13年ぶりにヨーロッパへもどったフィッシャーは、宝くじ売り少女殺人事件の捜査にあたる。彼の恩師オズボーンの「犯罪の原理」という本に基づいて犯人の足跡を追い、その過程で出会ったキムとともに行動するが。
 公開当時見てみたいと思っていた作品を、ようやく観賞。トリアー監督のものだったのか。夢か現実か、ヨーロッパにいながら中東とアジアの迷宮に落としこまれるような印象でした。事件も迷宮入りかと思われたが、意外にあっさり真相解明。

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sironabe