暗黒の恐怖

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解説

「他人の家」のソル・C・シーゲルが製作したセミ・ドキュメンタリ的メロドラマで、「シエラ」のエドナ・アンハルトがエドワード・アンハルトと書き下ろした原作(1950年度アカデミー オリジナル脚本賞受賞)を、「影なき殺人」のリチャード・マーフィーが脚色、エリア・カザンが監督。撮影は「出獄」のジョー・マクドナルド、音楽は「頭上の敵機」のアルフレッド・ニューマン。主演は「海の男」のリチャード・ウィドマークと「大空輸」のポール・ダグラス。ジャック・パランス、ゼロ・モステル、ダン・リスらが共演している。1950年製作。

1950年製作/アメリカ
原題:Panic in the Streets
配給:セントラル

ストーリー

ニューオーリンズのフランス地区、密航上陸したアルメニア人のコチャックは、ポーカーの争いからブラッキー(ジャック・パランス)に殺される。その死体を調べた保険局員リード(リチャード・ウィドマーク)は、被害者が肺ペストだったことを発見、48時間以内に加害者を逮捕しなければ、病毒が全米に広がるであろうと秘密会議で報告した。警察の捜査課長ウォレン(ポール・ダグラス)は、死体を焼却した以上捜査は困難だと主張するが、やむなくリードに協力することに。海員関係を中心とする雲をつかむような犯人探しのうち、被害者が生前食事したカフェの女房が死に、捜査は思うような進展を見せないのだった。一方ブラッキーは警察がコチャックを探すのは、彼が密輸品を持っていたからに違いないと思い込み、殺人の共犯であり被害者の従兄弟であるポルディ(ガイ・トマジャン)をつつくが、ポルディもまた病毒に冒されて高熱を発し始めた。同じころ、警察側の捜査はポルディの線まで延び、ブラッキーはやむなくポーカー仲間のフィッチ(ゼロ・モステル)とともに、ポルディを殺して逃亡しようとする。しかし波止場の倉庫に追いつめられた2人は、警官隊に包囲され、フィッチは捕縛される。貨物船に乗り移ろうとしたブラッキーはついに力尽きて、海中に落ちて果てた。死体発見後、まさに2昼夜にわたる出来事であった。

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映画レビュー

4.0ウィドマークとパランスのくせ顔対決! ペスト防疫をめぐる巨匠カザンの傑作タイム・リミット捜査劇

じゃいさん
2021年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コロナで世界中がてんやわんやのこの時期、シネマヴェーラが「恐ろしい映画」の特集上映に敢えてぶっこんできたのが、ペストのアウトブレイクを題材にとる『暗黒の恐怖』。
いやあ、マジいいセンスしてるわ(笑)。
しかも、観てびっくり。これ、たいした傑作じゃないか!
大変な拾い物に、大興奮の巻。

エリア・カザンの映画は、『エデンの東』『波止場』他5、6本は観てるけど、出来栄えはいずれも文句無しに素晴らしいとはいえ、やはり基本シリアスで重厚なイメージが強かった。
しょうじき、こんな純粋に娯楽作としてかっこよくて、びしっと引き締まった傑作クライム・ムーヴィ
ーを撮ってるとは思いもせず、あらためてその才能に感服した次第。

波止場で発見された密航者の射殺体。ところが検視官は被害者がペストに感染していることに気づく。濃厚接触者である犯人一味を48時間以内に見つけないと、街にパンデミックが起きてしまう。
急遽休暇から呼び戻された衛生局の医務官クリント(リチャード・ウィドマーク)は、まさに今がアウトブレイクの瀬戸際だと判断し、お偉方の集まる会議で、事態の切迫性について必死の演説をぶつ。結果として、彼もまた捜査に携わることになるが、相棒役のベテラン刑事ウォーレン(ポール・ダグラス)とはなかなか反りが合わず……。

本作は、まさに「今観るべき」たぐいの疫病水際対策映画である。
とにかく、リチャード・ウィドマークが最高に熱い! かっこいい!
いや、別に我が国の政治家や役所に文句をつけたいわけでは全然ないんだけど(どうしても叩かれがちだが、それはそれで皆さん必死にやっておられるはず)、やはり「防疫の水際」では、これくらいの熱意と必死さと突破力と行動力をガツッと見せてくれると、守られる側の下々も「俺たちも一緒に頑張ろう」ってな気分になるもんだ。実際、最初はドン引きしてた市のお偉方や警察高官が、ウィドマークの熱意にいつしかほだされて、だんだんやる気を出してく流れは、「プロジェクトX」並みに燃える展開だ。
家での眠そうで、お金がなくて、奥さんにやり込められてる家庭人ウィドマークと、政治家や警察相手にマシンガントークで「いまここにある危機」をわからせようとする勇猛果敢なウィドマーク。この手のくせ顔でスターダムにのし上がった俳優だけあって、その演技力や存在感はほんと抜群である。

本作は防疫お仕事映画であると同時に、捜査物のバディ・ムーヴィーでもある。
若きウィドマークと、老獪な刑事のコンビが、猛烈に素晴らしい。
最初ぶつかりがちだった(もっぱらウィドマークがつっかかるのだが)二人が、お互いを分かり合い、認め合い、協力し合う流れは、この手のバディものが好きな人にとってはもうこたえられない。
会話のリズムがいいんだよね。丁々発止としていて、くすぐりがきいてる。
尋問シーンの「シャラップ」とか、ポール・ダグラス台詞回りが超絶うまいよなあ。
ウィドマークも、記者対応を誤って、刑事が黙ってケツを持ってくれたことに気づいたときの、さりげない後悔と感謝の演技が光っていた。

全体の捜査過程も、緊張と緩和のバランスがいいし、情報の開示がうまいので、話がよく流れている。演出の生き生きとしたリズム感は、さすがカザンとしかいいようがない。
悪党一味が、町中の警官がなぜ自分たちを血眼になって捕まえようとしているのか、どうしても理由がわからず、逆に疑心暗鬼に陥って仲間割れ状態になるというのも、面白い設定だと思う。

この悪党サイドの話が、捜査側以上にみっちり描かれているのも、本作の特徴だ。
やはり賞賛されるべきは、追われる側の地元ギャングのボスを演じたジャック・パランスだろう。
しょうじき、ウィドマークに負けないくらい素晴らしい。
なんとこの人、これがデビュー作。若いころほど顔にクセが強い感じがするけど、あのゾッドみたいな顔、従軍して戦傷を負って、整形手術を受けた結果なんだってね。もともとボクサーだったらしいけど。なんでも、ウィドマークが悪役から善玉に転じて、ウィドマークよりも怖い風貌の男を犯人役にしなければということで抜擢されたとか(笑)。まさに「くせ顔対決」である。
個人的には、『JoJo』でポルナレフと石仮面の男が戦っているかのような気分にさせられた。

パランスは最初から純度100%のパランスだった。
とてもこれがデビューとは思えないくらいの風格。
カリスマはあるんだけど、病的に猜疑心が強く、どこかのバランスが崩れた凶悪なソシオパス。
(首が折れてます!のシーンは、マジで爆笑)
最終盤には、いつ終わるのかと思うくらいの長いサツとの追っかけがあって、もはや完全に主役を食う勢いだ。ペストにかかった手下が弱ってくのを後目に、ひとりピンシャンしたまま、圧倒的な粘りを見せ、ひたすら逃げ続けるパランスの生命力には、悪漢ながら素直に感心してしまう。

こんな防疫措置で本当に「バブル」が成立するのか、とか、途中で出てこなくなった恋人や母親はちゃんと網にかけられてるのか、とか、そこまで予防接種は万能なのか、とか、細部では気になるところもたくさんある。ただ、今のコロナもそうだけど、あまり細かいことをいっても詮無い話だ。むしろ、得体の知れないアウトブレイク阻止に向けての闘いを、うまく「人型の追跡対象」に集約した製作サイドのアイディアをほめるべきだろう。

観られて本当によかった。おすすめです。

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じゃい
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