ヨコハマメリーのレビュー・感想・評価
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ナレーションなしでぐいぐい引き込む、ドキュメンタリーの秀作
封切り後、2週間前後のタイミングで、今はなき横浜ニューテアトルで鑑賞。
中学時代、本物のメリーさんに話しかけられたことがあっただけに、謎が解けた思いだった。
今作の何が凄いかというと、ドキュメンタリー作品であるのにも関わらず、
ナレーションが一切ない。それで92分持たせているところに、中村高寛監督の非凡さを感じずにはいられない。
DVDも購入し、何度となく見ているが、煌びやかで表層的な横浜ではなく、割と泥臭い横浜の姿が映し出されている。横浜という街を介して、日本の戦後史を雄弁に語った作品である。
轟沈しましたよ
ヨコハマに居た女性の話
なんだこの作品は!めちゃくちゃ面白いじゃないか。
ポスターやチラシを見るからにかなりの色物ドキュメンタリかと思ったけれど、とても素晴らしい作品でした。
まず題材がいい、横浜に出没する白塗りの老女。もう都市伝説とか妖怪とかの類を追ったホラードキュメントですよ。
オカルト好きにはたまらんのですが、次第にメリーさんの人物像が浮彫になるにつれて彼女の人生が紐解かれていく。
彼女の正体、出自はわからないけれど、ぼやぼやと人物像が見えてくる。
それは戦後の混沌とした横浜とメリーさんの歴史。
復興と米軍と裏社会、大変そうだけどスリリングでギラギラしていたんだろうなと思いを馳せた。
インタビューする対象も濃いメンツばかり、シャンソン歌手、舞踏家、女優、宝石商、芸者、風俗ライター、愚連隊、それぞれがすでに魅力的でずっと話を聞いていたくなる。
舞踏家さんの話で香水のエピソードが好きですね、表現力もさることながら情景が目に浮かびました。うっとりです。
ヤクザと警察と米兵が入り混じった酒場根岸屋もいい、ただの駐車場になってしまったけれど行ってみたかったですね。
メリーさんの足跡をたどるうちに横浜のアウトサイドを垣間見てしまうのは必然なのだけれど、なにせ都市伝説ハンターだと思って見てたら「ノマドランド」見てました的な感動。
後から後から興味が沸いて出て劇中メリーさんに首ったけでしたね。まあ映画見る前に実際横浜で遭遇したら怖くて近寄れなかっただろうけど。
監督の題材選び、編集のリズムもすばらしくラストのシーンまでの感情の積み重ね方も上手い。
最期の展開では思わず目を見開いてしまいました、そして感動した。いい意味で総毛だちました。
中村監督の作品では「禅と骨」を見たことがあったけれど、正直こちらの作品は心に響かなかった。
題材のヘンリー・ミトワにあまり魅力を感じなかったし、ドラマパートが有ったり、赤い靴の女の子な話が入ったりで散らかった映画だったと記憶している。
でも「ヨコハマメリー」を撮った後だったら次の作品は難しいだろうと理解。
こんなにも素晴らしい傑作を超える作品はなかなか撮れないしお目にかかれない。
自分の街にもメリーさんのような人がいる、苦手だし近づきたくないけれど、「人に歴史あり」「ドラマのない人間はいない」の言葉を思い出して妄想するのもいいかも知れない。
相手の事を知りもしないで差別するのは愚かなことだと自戒して生活していこうと思う。
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劇中セリフより
「メリーさんに声を掛けられるって事は光栄な事なんです」
人それぞれに見えているモノも見えるモノもは違うんですね。
メリーさんに会えた
ようやく劇場で観れた傑作ドキュメンタリー
人それぞれの生き様
伊勢崎町ブルースで
映画の始まりは、伊勢崎町ブルース。
それがあのお馴染みの青江みなじゃなく渚ようこなのだ。掠れていない綺麗な声。
非常に面白い映画だった。
もちろんメリーさんは見た目も中身もダントツに個性的を突き抜けているんだけれど、ここに出てきた人達も、みな、どこかあやしい匂いがぷんぷんである。
特にわたしが一番興味を抱いたのが大衆酒場の「根岸家」さん。もう想像するだけでワクワクなんてものじゃない。夢に見ちゃいそう、というより夢に出てこないかな。
最後に、いつの間にかヨコハマからいなくなったメリーさんが現れる。
びっくりだ。
彼女は以前の白塗りではなく、自然な化粧で品のある普通のおばあさんになっていた。
人間界に戻ったのかい?と聞いてみたくなるほど。
あの時代はなんだったのだろう。
もうほんとに摩訶不思議なのである。
約一時間三十分、奇妙な体験をした気分でした。
ドキュメンタリーのお手本の様な良質を堪能出来ます。
以前から気になってた作品で、出来れば劇場で観たかったの、上映のタイミングをいろいろと確認してたら、都内で渋谷の「アップリンク渋谷」で上映を知り、観賞しました。
場内は全席解放されていて満員。
過去作のリバイバル上映で、平日の昼間で満員は凄いです。
で、感想はと言うと、良い♪
良質のドキュメンタリー作品です。
作品自体は以前から知っていたけど、今から約2年前に不定期放送で特集された「マツコが日本の風俗を紐解く「かたせ梨乃が進駐軍の前で踊り狂った時代…マツコ」と言う番組でメリーさんを紹介する映像を見てから、俄然興味が沸いていたので、とても満足。
劇中での永登元次郎さんの歌う「マイウェイ」も良いんですが、オープニングとエンディングで流れる「伊勢佐木町ブルース」が良いんですよね♪
関内は仕事でよく行ってたんですが、伊勢佐木町では殆ど飲んだ事がなかったのがちょっと後悔w
メリーさんの生き方は孤高で粋。そしてブルース。
だからこそ、伊勢佐木町ブルースが作品に良く似合う♪
横浜の関内にある伊勢佐木町で都市伝説の如く語られる、白塗りの高齢の娼婦、メリーさんの半生と関係者の証言で構成された作品で、長い時間を掛けて取材された証言や映像はドキュメンタリーのお手本の様な作り方。
なんせ、製作を開始された時にはメリーさんは伊勢佐木町から姿を消し、生まれ故郷の岡山で余生を過ごされているから、その取材の大変さはかなりの物と言うのが画面を通して分かるぐらい。
また、所謂街の有名人的な方なので、周りの方々に取材をし、話を聞くだけでも一苦労。
周囲の方々もなかなか一筋縄でいかないメリーさんには多分いろんな思いがあったと思うし、いろんな偏見もあった中で声を出して、メリーさんの事を言うのは憚る事もあったと思う。
それでも、メリーさんを知る人が少なくなっていく中で、様々な証言と映像、写真を探しだすのはかなりの苦労かと。
特にメリーさんと交流のあった永登元次郎さんの証言などはかなり貴重。
戦後、外国将校を相手の娼婦として生計を立てると言うのは、様々な時代背景があったにしても、触れられたくない過去もあると思うだけに、その辺りのさじ加減がかなり難しい。
いろんな形で取り上げられ、有名人として皆に愛されたとしても、腫れ物に触るかの様な扱いや様々な誹謗中傷もあったのは劇中でも語られただけに、メリーさんを始め、周囲の人々も必要以上に触れられるのはやはり難色を示すのではないだろうか?
それでもメリーさんの半生を聞くと切ない。
娼婦として気高く、プライドが高く、それでいて他人とは簡単に迎合しない。
我は我。と言う気持ちを貫き通すのは並大抵ではないと思う。
いろんな事情があるにしても、その生き方を貫いたのは人生でたった1人、好きになった人がいて、その人が再び帰ってきた際に自分が分かる様にドレスを着て、白塗りの化粧をしているなんて、一途に貫かれた純情以外の何物でもない。
多分メリーさんの考え方や生き方を全て知る事は出来ない。
その都度に「何故?」と言う言葉が遮ると思う。
そんなメリーさんの半生を追い求め、ラストで岡山の老人ホームに元次郎さんが慰問コンサートをし、そこに白塗りをしない、優しい顔のメリーさんの映像が流れた時は流石に涙腺が緩くなって、胸にグッと来た。
また、デパートに行った際にピアノで弾いて口ずさんだ「海」の一節は切なくて悲しい。
丹念に丹念に描かれてた作品はホント貴重な映像作品だと思うし、素晴らしい作品だと思う。
ラストの映像までの持っていき方も素晴らしい。
沢山の人に見てもらいたいだけの良質な作りのドキュメンタリーですが、パンパンを始め、時代考証を考えたとしても、今はなかなかテレビでは放送出来ない倫理を考えると、劇場で観れるのはやっぱりラッキー。
戦後の日本の時代の事情も踏まえて、風俗文化や繁華街事情、浮き彫りにされていく状況が異文化交流が盛んな港町、横浜とそして日本という国の一面を1人の女性の人生を通して見た感じ。
良いドキュメンタリー作品なので、機会があれば、出来れば劇場で。ダメてもDVD等で見てもらいたい作品です。
決して日野日出志のホラーアニメではない
チラシを見るだけで異様な雰囲気につつまれる人物“ハマのメリー”。写真だって本物じゃないと思っていたけど、森日出夫の写真が映し出されると実在の人物なんだと思い知らされる(イラストも日野日出志ではなくて宇野亜喜良だとわかったし、映画で使われる「伊勢崎町ブルース」も青江三奈じゃなくて渚ようこだった)。
横浜に住んでいる人ならば“メリーさん”と聞いただけでわかる人が多いほど有名人。戦後混乱期から50年間、横浜で娼婦として生きてきた女性だ。「娼婦?」などと聞くと今ではもちろん犯罪ですから、都市伝説のような存在、噂話が膨らんだだけの存在のように思われがちですが、実際に親交のあった者、彼女が利用していた店の人が証言するにつれ真実味を増して、ドキドキするような展開のドキュメンタリーとなっていました。
逮捕歴22回。GI相手の娼婦としてしか生きる術がなかった戦後混乱期の女性が、日々変化する時代に順応することも出来ずにそのまま己の道を貫いたのだろうと想像させられる。加齢とともに歌舞伎役者のように真っ白に塗りたくった顔になってゆくが、本当の自分を隠さざるを得ない心情を思うだけで悲しくなってきました。常に全財産を持ち歩き、定住する家もない。それでも彼女に暖かな心遣いで見守る人たちもいる。過去や境遇は謎に包まれてはいるけど、人々に生きる勇気を与えてくれる人物には違いないんですから・・・
メリーさんの謎を追い求めるドキュメンタリーだと思っていたのですが、同時に永登元次郎という人物にもスポットを当てた内容でした。末期がんに冒されているけど、シャンソン歌手としてリサイタルをひらいたり、精力的。余命いくばくもない彼もまた男娼の経験があり、メリーさんとは通ずるものがあったのだ。1995年に忽然と姿を消したメリーさんにもう一度会いたい。闘病生活の最中に抜け出して、空っぽになった病院のベッドが妙に生々しく映り、最後には涙をこらえることができなかった・・
ひとりの女の一生。本人の口から心を語られることもなく、横浜の風景の一つになっているほど象徴的な人物。敗戦によって日本が失ったモノを彼女の存在そのものが語り継いでいるといえば大げさかもしれませんが、彼女がいなくなってしまうと、終戦からの歴史がひとつ消え去ってしまうように感じる人もいるかもしれません。まだ若い監督の作品らしいですが、映画史に残すべきドキュメンタリーだと思います。
【2006年7月映画館にて】
ヨコハマメリー
メリーさんと横浜の「戦後」
横浜市民にとって、メリーさんは「伝説」
出会うと衝撃が走るほど 真っ白なお婆さんだった
そして 一瞬で「戦後の歴史」を理解したものだ
それから 我々も生活に追われ、彼女の事を忘れたりしたが その存在は澱のように 心の奥底に沈んでいたことに、気付く!
彼女の痛みは 「港町横浜」の痛み、だったからだろう
だから メリーさんを見る眼は 比較的、温か だったように記憶する
(ただ、生活圏が近い人々とは 揉めてしまうこともあっただろう… 何せ、世界有数の潔癖症民族であるからして… HIVの件にしても、あの当時はピリピリしていた)
彼女は何も語らず、周囲の人々によって その存在が浮き彫りになってゆく
それでも謎が多いことも、惹かれる一因だろう
秘すれば、花 ということか
最後に 故郷の施設で、初めて彼女の素顔を知る
垢抜けていて 美しく、なんだか嬉しかった
(あの白塗りは 紫外線と嫌な思いを ブロックしたのだろうか… )
横浜を 懐かしんでくれたことも、嬉しい
メリーさんを支えた 周りの人々に 感謝したい
記録と記憶
都民の私は、もう40年も前にメリーさんを初めて見た。それは横浜駅だった気がするけど、記憶はあやふやなまま、だけど、メリーさんを見たのは事実。その独特の風貌、佇まいに見ちゃいけないものを見たような感覚でした。
それはこの作品のラストシーンでも感じられるので、メリーさんを知らない人は見て欲しい。
でも、この作品はメリーさんの怪奇な部分に注目するんじゃなくて、メリーさんを通して、伊勢佐木町、そして、そこに生きる人間の業と優しさを感じられる事が良い。芸妓さんのチャリティーライブをやったり、メリーさんを支援したり、メリーさんを故郷に送ったり…
その人たちの目って、上手い役者でも演技に出来ない優しい目をされてました。
とても上品で声の高い夫人でした。
観る価値がありすぎた
何か面白そうな映画はないか?と検索していると、不気味な画像が飛び込んできた。
ホラー映画と見間違うかのような、強烈なパッケージ画像だった。
よく見ると、白塗りの濃いお化粧に、フリフリのドレスを着た老女が、気品のある笑みを浮かべている。
これがメリーさん、実在した人物だ。
戦後の横浜で外国人将校を相手に娼婦をし、時代が移り変わっても街角に立ち続けたメリーさん。
その異様な風貌から、横浜で知らない人はいないほどの『謎のホームレス』となったが、いつの間にか姿を消す。
そんなメリーさんを追ったドキュメンタリー、それが『ヨコハマメリー』である。
彼女と接点のあった人々が語る、気高きメリーさんの姿や、激動の時代背景。
そして、メリーさんを映した貴重な映像。
どのシーンも、観る価値がありすぎた。
こうして映画という形になって世に残り、本当に良かった。
昔、根岸家でお座敷芸者をしていた五木田京子さんが、力強く三味線を鳴らしながら歌う姿も必見だ。
魂を揺さぶられること間違いなし。
当時、根岸屋に通っていたヤクザなおじいさんの口から飛び出す『刑務所』『○ちん』などの言葉にはドキッとしたが、これがまた味があって良い。
癌と闘ったゲイのシャンソン歌手、元次郎さんも素晴らしかった。
特に、映画終盤で歌う姿に心が震えた。
あのシーンでの大きな感動は、メリーさんに思いを馳せる全ての人々に、あたたかな余韻を残すだろう。
粋
マニュアル化され、みんなが同じ顔をした現代で、白塗りのメリーさんが貫いた人生は「粋」でかっこいいです。
また、メリーさんを知る登場人物も自分の美学を昇華させている魅力的な方ばかりでした。不寛容な社会の中で、寛容さのある良き時代が羨ましく思えます。
ラストに見せたメリーさんの微笑みは、自分の人生を生きてみようと自信を持たせてくれました。
介護福祉士を目指すキッカケを作ってくれた作品
メリーさんを知る人々のインタビューから始まり、彼女の生い立ちから、仲間達の人生、そして、戦後の横浜そのものの歴史へと遡っていく。
人物を探すインタビュードキュメンタリーやと、その前に観た『デヴラ・ウインガーを探して』が代表的である。
相手が有名ハリウッド女優だっただけに、すぐに見つかり、拍子抜けした『デヴラ〜』に対し、メリーさんの行方は、最後の最後まで一切足取りが掴めない。
無理もない。
全身白塗りの異様な風体である以外、本名も素性も全て謎だったからだ。
街の名物として味方してくれる人々も多かったが、《パンパンさん》という職業と外見からヒドい偏見を抱いていた人達の方が遥かに多かった。
「病気を持っているんじゃないか?」
っと、客からクレームをつけられ、イキツケの美容室が出入り禁止を食らった時は、どれだけ辛かった事だろう…。
「何処かで野垂れ死にしたのかなぁ…」
っと落胆していた矢先、故郷の老人ホームで暮らしている事を突き止め、メリーさんを母と慕うシャンソン歌手・長登元次郎が末期ガンに冒されながらも、逢いに出掛ける。
念願のメリーさん本人に再会し、魂を振り絞って『マイウェイ』を熱唱するラストは鳥肌が立った。
上映当時、劇場全体が
「メリーさん生きていたんだぁ〜。良かったぁ〜」
という安堵感でいっぱいになり、やがて直ぐに涙へと変わった。
あの時の温かい一体感は、今でも言葉では言い表せない。
では、最後に短歌を一首
『シャンソンの 余韻にむせぶ ハマの夜 いろいろあったね なぁメリーさん』
by全竜
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