ヨコハマメリーのレビュー・感想・評価
全13件を表示
ナレーションなしでぐいぐい引き込む、ドキュメンタリーの秀作
封切り後、2週間前後のタイミングで、今はなき横浜ニューテアトルで鑑賞。
中学時代、本物のメリーさんに話しかけられたことがあっただけに、謎が解けた思いだった。
今作の何が凄いかというと、ドキュメンタリー作品であるのにも関わらず、
ナレーションが一切ない。それで92分持たせているところに、中村高寛監督の非凡さを感じずにはいられない。
DVDも購入し、何度となく見ているが、煌びやかで表層的な横浜ではなく、割と泥臭い横浜の姿が映し出されている。横浜という街を介して、日本の戦後史を雄弁に語った作品である。
轟沈しましたよ
ヨコハマに居た女性の話
なんだこの作品は!めちゃくちゃ面白いじゃないか。
ポスターやチラシを見るからにかなりの色物ドキュメンタリかと思ったけれど、とても素晴らしい作品でした。
まず題材がいい、横浜に出没する白塗りの老女。もう都市伝説とか妖怪とかの類を追ったホラードキュメントですよ。
オカルト好きにはたまらんのですが、次第にメリーさんの人物像が浮彫になるにつれて彼女の人生が紐解かれていく。
彼女の正体、出自はわからないけれど、ぼやぼやと人物像が見えてくる。
それは戦後の混沌とした横浜とメリーさんの歴史。
復興と米軍と裏社会、大変そうだけどスリリングでギラギラしていたんだろうなと思いを馳せた。
インタビューする対象も濃いメンツばかり、シャンソン歌手、舞踏家、女優、宝石商、芸者、風俗ライター、愚連隊、それぞれがすでに魅力的でずっと話を聞いていたくなる。
舞踏家さんの話で香水のエピソードが好きですね、表現力もさることながら情景が目に浮かびました。うっとりです。
ヤクザと警察と米兵が入り混じった酒場根岸屋もいい、ただの駐車場になってしまったけれど行ってみたかったですね。
メリーさんの足跡をたどるうちに横浜のアウトサイドを垣間見てしまうのは必然なのだけれど、なにせ都市伝説ハンターだと思って見てたら「ノマドランド」見てました的な感動。
後から後から興味が沸いて出て劇中メリーさんに首ったけでしたね。まあ映画見る前に実際横浜で遭遇したら怖くて近寄れなかっただろうけど。
監督の題材選び、編集のリズムもすばらしくラストのシーンまでの感情の積み重ね方も上手い。
最期の展開では思わず目を見開いてしまいました、そして感動した。いい意味で総毛だちました。
中村監督の作品では「禅と骨」を見たことがあったけれど、正直こちらの作品は心に響かなかった。
題材のヘンリー・ミトワにあまり魅力を感じなかったし、ドラマパートが有ったり、赤い靴の女の子な話が入ったりで散らかった映画だったと記憶している。
でも「ヨコハマメリー」を撮った後だったら次の作品は難しいだろうと理解。
こんなにも素晴らしい傑作を超える作品はなかなか撮れないしお目にかかれない。
自分の街にもメリーさんのような人がいる、苦手だし近づきたくないけれど、「人に歴史あり」「ドラマのない人間はいない」の言葉を思い出して妄想するのもいいかも知れない。
相手の事を知りもしないで差別するのは愚かなことだと自戒して生活していこうと思う。
----------------------------------------
劇中セリフより
「メリーさんに声を掛けられるって事は光栄な事なんです」
人それぞれに見えているモノも見えるモノもは違うんですね。
メリーさんに会えた
メリーさんの噂は当時、地方都市まで聴こえていました。83歳で現役の、、、と。1995年といえば、メリーさんが“キラキラ”していた時代から時は流れ、日本はすでにバブルも弾けていたはず。時代の移り変わりをスーツケースを引きながらメリーさんはどんな思いで見ていたのだろうか。
養老院でのメリーさんとの再会シーン。白化粧ではない、本名で暮らすメリーさん。一つの時代を生き抜いた女性の横顔は本当に美しかった。
ようやく劇場で観れた傑作ドキュメンタリー
白塗りの化粧と白いドレス姿で横浜の街に立ち続けた老女メリーさん。
1995年に姿を消してからも数々の噂がささやかれた。
街に愛される人や場所の存在感は独特で、消えた後でも残り香のようなものが漂うもの。
メリーさんのいたヨコハマを語る人々の生き生きとした姿からも その時代や街の魅力が伝わってくる。
人それぞれの生き様
横浜の伊勢佐木町で戦後から娼婦をしていたといわれている通称メリーさんの生き様を知人達のインタビューをメインに紹介するドキュメンタリー作品。
特に衝撃を受けたのは横浜根岸外国人墓地に戦後の混乱期に800以上と言われる生後間もない混血児が埋葬されたと言うこと。
メリーさん以外にもパンパンと呼ばれる娼婦で生活していた多くの女性が望まない妊娠をした結果らしい。
今でも横浜市は公式には認めていない事実らしいが、映像に残す事の大切さ、後世に伝える事の大切さを思った。
単なる売春婦のドキュメンタリーとして観るのも良いと思うし、公にしたくない事実でも知るという事の大切さを考えさせられる作品です。
決して日野日出志のホラーアニメではない
チラシを見るだけで異様な雰囲気につつまれる人物“ハマのメリー”。写真だって本物じゃないと思っていたけど、森日出夫の写真が映し出されると実在の人物なんだと思い知らされる(イラストも日野日出志ではなくて宇野亜喜良だとわかったし、映画で使われる「伊勢崎町ブルース」も青江三奈じゃなくて渚ようこだった)。
横浜に住んでいる人ならば“メリーさん”と聞いただけでわかる人が多いほど有名人。戦後混乱期から50年間、横浜で娼婦として生きてきた女性だ。「娼婦?」などと聞くと今ではもちろん犯罪ですから、都市伝説のような存在、噂話が膨らんだだけの存在のように思われがちですが、実際に親交のあった者、彼女が利用していた店の人が証言するにつれ真実味を増して、ドキドキするような展開のドキュメンタリーとなっていました。
逮捕歴22回。GI相手の娼婦としてしか生きる術がなかった戦後混乱期の女性が、日々変化する時代に順応することも出来ずにそのまま己の道を貫いたのだろうと想像させられる。加齢とともに歌舞伎役者のように真っ白に塗りたくった顔になってゆくが、本当の自分を隠さざるを得ない心情を思うだけで悲しくなってきました。常に全財産を持ち歩き、定住する家もない。それでも彼女に暖かな心遣いで見守る人たちもいる。過去や境遇は謎に包まれてはいるけど、人々に生きる勇気を与えてくれる人物には違いないんですから・・・
メリーさんの謎を追い求めるドキュメンタリーだと思っていたのですが、同時に永登元次郎という人物にもスポットを当てた内容でした。末期がんに冒されているけど、シャンソン歌手としてリサイタルをひらいたり、精力的。余命いくばくもない彼もまた男娼の経験があり、メリーさんとは通ずるものがあったのだ。1995年に忽然と姿を消したメリーさんにもう一度会いたい。闘病生活の最中に抜け出して、空っぽになった病院のベッドが妙に生々しく映り、最後には涙をこらえることができなかった・・
ひとりの女の一生。本人の口から心を語られることもなく、横浜の風景の一つになっているほど象徴的な人物。敗戦によって日本が失ったモノを彼女の存在そのものが語り継いでいるといえば大げさかもしれませんが、彼女がいなくなってしまうと、終戦からの歴史がひとつ消え去ってしまうように感じる人もいるかもしれません。まだ若い監督の作品らしいですが、映画史に残すべきドキュメンタリーだと思います。
【2006年7月映画館にて】
ヨコハマメリー
戦争の影の部分として扱われがちである”金・生きる為に体を売る行為”とは、実は最も人の根源命題に通ずる。 外観上、一人の貧弱な女性と観られた主人公が最後に見せた、自信と安堵と感謝に満ちた表情に涙なくしてはいられなかった。 素晴らしい映画を有難うございました。
メリーさんと横浜の「戦後」
横浜市民にとって、メリーさんは「伝説」
出会うと衝撃が走るほど 真っ白なお婆さんだった
そして 一瞬で「戦後の歴史」を理解したものだ
それから 我々も生活に追われ、彼女の事を忘れたりしたが その存在は澱のように 心の奥底に沈んでいたことに、気付く!
彼女の痛みは 「港町横浜」の痛み、だったからだろう
だから メリーさんを見る眼は 比較的、温か だったように記憶する
(ただ、生活圏が近い人々とは 揉めてしまうこともあっただろう… 何せ、世界有数の潔癖症民族であるからして… HIVの件にしても、あの当時はピリピリしていた)
彼女は何も語らず、周囲の人々によって その存在が浮き彫りになってゆく
それでも謎が多いことも、惹かれる一因だろう
秘すれば、花 ということか
最後に 故郷の施設で、初めて彼女の素顔を知る
垢抜けていて 美しく、なんだか嬉しかった
(あの白塗りは 紫外線と嫌な思いを ブロックしたのだろうか… )
横浜を 懐かしんでくれたことも、嬉しい
メリーさんを支えた 周りの人々に 感謝したい
記録と記憶
都民の私は、もう40年も前にメリーさんを初めて見た。それは横浜駅だった気がするけど、記憶はあやふやなまま、だけど、メリーさんを見たのは事実。その独特の風貌、佇まいに見ちゃいけないものを見たような感覚でした。
それはこの作品のラストシーンでも感じられるので、メリーさんを知らない人は見て欲しい。
でも、この作品はメリーさんの怪奇な部分に注目するんじゃなくて、メリーさんを通して、伊勢佐木町、そして、そこに生きる人間の業と優しさを感じられる事が良い。芸妓さんのチャリティーライブをやったり、メリーさんを支援したり、メリーさんを故郷に送ったり…
その人たちの目って、上手い役者でも演技に出来ない優しい目をされてました。
とても上品で声の高い夫人でした。
30年位前、当時高校生だった私が伊勢佐木町のダンキンドーナツでアルバイトをしていた時に、メリーさんは毎日の様に、いつもの席でいつものドーナツとコーヒーを召し上がって居ました。
とても上品で高い声の夫人でした。映画になり詳細を知るのですが、とても感慨深く鑑賞しました。伝説の方と実際に触れ合えて幸せだなと思いました。
是非皆さまにも観て頂きたいです。
観る価値がありすぎた
何か面白そうな映画はないか?と検索していると、不気味な画像が飛び込んできた。
ホラー映画と見間違うかのような、強烈なパッケージ画像だった。
よく見ると、白塗りの濃いお化粧に、フリフリのドレスを着た老女が、気品のある笑みを浮かべている。
これがメリーさん、実在した人物だ。
戦後の横浜で外国人将校を相手に娼婦をし、時代が移り変わっても街角に立ち続けたメリーさん。
その異様な風貌から、横浜で知らない人はいないほどの『謎のホームレス』となったが、いつの間にか姿を消す。
そんなメリーさんを追ったドキュメンタリー、それが『ヨコハマメリー』である。
彼女と接点のあった人々が語る、気高きメリーさんの姿や、激動の時代背景。
そして、メリーさんを映した貴重な映像。
どのシーンも、観る価値がありすぎた。
こうして映画という形になって世に残り、本当に良かった。
昔、根岸家でお座敷芸者をしていた五木田京子さんが、力強く三味線を鳴らしながら歌う姿も必見だ。
魂を揺さぶられること間違いなし。
当時、根岸屋に通っていたヤクザなおじいさんの口から飛び出す『刑務所』『○ちん』などの言葉にはドキッとしたが、これがまた味があって良い。
癌と闘ったゲイのシャンソン歌手、元次郎さんも素晴らしかった。
特に、映画終盤で歌う姿に心が震えた。
あのシーンでの大きな感動は、メリーさんに思いを馳せる全ての人々に、あたたかな余韻を残すだろう。
全13件を表示