二人日和
劇場公開日:2005年11月26日
解説
京都の四季折々の風景を織り交ぜながら、伝統の町家で暮らす老夫婦の日常と、その静かで純粋な愛のかたちを叙情豊かに描いた夫婦愛映画。栗塚旭と藤村志保というベテラン同士が病に直面した夫婦に扮し、慈しみあいながら過ごす姿が京都の街に溶けていく。
2004年製作/111分/日本
配給:パンドラ
劇場公開日:2005年11月26日
ストーリー
京都御所に面して建つ神祇装束司。代々御所関係、貴族や神官の装束を作り続けてきた黒田(栗塚旭)の毎日は、梨木神社の“染井の名水”に水を汲みに行くことから始まる。その水で入れたコーヒーを妻・千恵(藤村志保)と二人で味わう。ことさらに話題はないが、そこに流れる時間はかけがえのないくつろぎの時間だった。しかしある日、千恵が難病のALS(筋萎縮性側素硬化症)に冒されていることが分かる。筋肉を動かす運動神経が冒され、次第に体の自由が奪われていく病気である。医者からは「早ければ半年ほどで、箸や茶碗も持てなくなる」と宣告された。日を追うごとに思うように体が動かせなくなることに、千恵は苛立ちを隠せない。黒田はそんな千恵に優しい言葉はかけないが、彼なりに妻を慰めようとしていた。ある日黒田は、神社の帰り道でよく見かけるマジックの上手な若者を、家に招待する。彼の名は伊藤俊介(賀集利樹)。大学院で遺伝子の研究をしている学生だった。千恵の指の訓練にマジックを教えてくれないかという黒田の提案に戸惑いつつも、ある午後、俊介は黒田夫婦の住む町家を訪れた。鮮やかな手つきでトランプの手品を披露する俊介に千恵は感心し、俊介の訪問は病気でふさぎがちな千恵の心身を癒してくれた。子供のいない黒田夫婦にとって、俊介の来訪は心躍るひとときとなってゆく。時折り訪れる姪の江梨子も、好青年の俊介に興味を覚えたようだ。しかし、ある日雛人形を飾ろうとしていた千恵が倒れてしまう。一方、俊介は教授からアメリカ留学を勧められていた。気持ちは動くが、恋人の恵と何年も離れてしまうと思うと、今一歩踏み切れない。やがて、俊介の出演するマジック・ショーの日が近づく。招待状を病院で受け取った千恵は、外出許可をもらい、黒田の押す車椅子で出かけていく。そして黒田は、千恵を看病するために<二藍の汗衫(ふたあいのかざみ)>の装束の仕事を最後に、長年続けてきた店をたたむ決心をする。