約三十の嘘
劇場公開日:2004年12月18日
解説
劇作家・土田英生の同名戯曲に基づき、「avec mon mari アベックモンマリ」「とらばいゆ」の大谷健太郎監督が描く男女6人の密室群像ドラマ。久々にチームを組んだ詐欺師たちが思いがけないハプニングで疑心暗鬼に陥り、それぞれの思惑や本音が浮き彫りになっていく。出演は、椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、八嶋智人、新人の判杏里。共同脚本として、「ジョゼと虎と魚たち」の渡辺あやが参加している。
2004年製作/100分/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2004年12月18日
ストーリー
大阪駅構内。せわしなく行き交う人の流れ。一人二人と姿を現す詐欺師たち。コーヒースタンドのカウンターに立つ三人の男。洒落たスーツ姿の久津内(田辺誠一)は、今回のプロジェクトのチーフで皆に声をかけた張本人。社会心理学まで学んでこの日に臨んだ。その隣、若いのに腕の立つヤリ手詐欺師・佐々木(妻夫木聡)は、昔から酒癖が悪く、酔って転んだのか鼻を白いガーゼで覆っている。情熱家の彼は、カウンターの端でボーッとしているもう一人の男を胡散臭そうに眺めている。見られていることにも関心がなく、のど飴をボリボリと噛み砕いている男・志方(椎名桔平)は、かつて念に五億円以上稼ぐと言われたカリスマ詐欺師…しかし、今はその面影もない。ショッピングモールをビシッと決めたスーツ姿で颯爽と歩いてくる男と女。キリッとした美貌の女詐欺師・宝田(中谷美紀)は、昔の仲間との再会に胸(ちょっと小さめ)を躍らせている。傍らを歩く小柄な男・横山(八嶋智人)は今回、チームに初参加。以前は霊感商法のグループに属し、小銭稼ぎの横山と呼ばれていた。横山は宝田を「ババロアちゃん」と呼び、二人は今、組んで仕事をしている。昔から宝田に密かな想いをよせている佐々木は、横山の参加にイラつく。そして、志方に憧れていた横山はその落ちぶれた姿にガッカリし、宝田も戸惑いを隠せない。チームは微妙にギクシャクしている…。大阪駅ホーム。札幌行きの豪華寝台特急トワイライトエクスプレスが動き出す。お洒落なスーパー・スイート・ホーム901号室で仕事の打ち合わせが始まる。今回の商品は偽物の羽毛布団。一組30万円で500組売り切ると売上合計1億5千万円! 帰りには、用意した白いスーツケースが札束でギッシリになる予定。カラオケセット、抽選会用の景品、レンタカーの手配は要領のよい宝田。スタッフジャンパーの作成はいつも通り佐々木。カラオケショーの司会は志方しかいない。新参者の横山の仕事は、いつもは久津内の仕事だった大役に決定…ゴンゾウという名のパンダの着ぐるみに入ってイベントを盛り上げる仕事だ。名物の手品は「今井がいないんだから、手品はナシね」宝田が冷たく言い放つ。…三年前の苦い記憶がよみがえる。仲間内でよく集まっていた喫茶店で今井(伴杏里)というボインの女の子が働いていた。彼女もチームの一員として皆と組んでいたが、ある仕事に須藤という男を連れてきた。そして、売上のお金とともに2人も姿を消したのだった。京都駅のホームに列車が滑り込む。すると、久津内が突然立ち上がり、「みんなに相談したいことがあるんだ。ちょっと待ってて」と9号車から出て行く…そして、戻ってきた彼の後ろには何とあの今井の姿が! 一同呆然、言葉も出ない。うつむいたまま謝り続ける今井。「あんたのせいで滅茶苦茶になったのよ」と責めまくる宝田。一方、「まあまあ。もう許してあげたっていいんじゃないの」モードな男性陣。結局、今井の涙に負けてチームへの参入が決定し、挨拶代わりの手品が披露される。今井の腕前をはじめて目にした横山は、必要以上に驚き喜び、彼女を「ミルキーちゃん」と命名する。大阪行きのトワイライトエクスプレス。北海道での仕事は大成功を遂げた。行きと同じ901号室、白いスーツケースの中には7千万円もの札束の山!そして“恒例の儀式”が執り行われる。それはスーツケースを持つ人と鍵を持つ人を別にして、お金の管理をするというもの。鍵は全部で5本用意し、一本が本物で残りは偽物。もちろん、誰が本物を持っているかはわからない。結果的に今回もっとも活躍した横山がスーツケース担当。残り5人がテーブルに並んでいる鍵を一本ずつ手にした。夕日の中を走る列車。9号室の通路で、ため息をつく久津内。ゴンゾウを着て踊ったのは、今回もやはり久津内だった。新チーフとして皆を引っ張るつもりだったが、代わりにそれをやってのけたのは新参の横山だった…。そして、自分の愛する今井まで横山に横取りされそうな気配。別室では、今井を口説こうとする横山、また別室の宝田は佐々木に好意を持ちつつ、志方も気になっていた。いろんな想いが交錯する車内。夜が明け、また新しい朝がやってくる。そして、事件が起きた。大金の詰まったスーツケースが消えたのだ!