若き日の啄木 雲は天才である
劇場公開日:1954年5月25日
解説
題名を啄木の代表小説にとって館岡謙之助(君ゆえに)がオリジナルを執筆し、「思春の泉」の中川信夫が監督している。撮影は「花と波涛」の横山実、音楽は「陽は沈まず」の黛敏郎である。出演者は「勲章」の岡田英次、「素ッ飛び男」の若山セツ子、「放浪記(1954)」の角梨枝子、「大阪の宿」の左幸子、細川俊夫など。
1954年製作/100分/日本
劇場公開日:1954年5月25日
ストーリー
熱のある進歩的教育の故に渋民村の人達から圧迫を加えられた石川啄木は妻節子の激励で東京へ出て文筆で身を立てようと決心した。しかし一家の窮乏を見ると、自分の文学を育てるために一家を更にどん底に陥らす事は忍びなかった。まず生活を建直す事が第一と自由の新天地北海道に向い、親友宮川緑雨の世話で小樽日報の仕事にありついた。そこで再び改革をはかって敗れた啄木は、更に北の巣、釧路に向った。啄木の勤めた釧路新報は競争紙「北東日報」と激しく対立していたが、啄木は大いに鋭筆を振い、果然北東日報を抑えた。そんな頃北東日報の社長の魔手から小奴を救った事から、芸者の小奴、ぽんたと知り合った。釧路で啄木を慰めてくれるのは、この二人のほか同郷の菊地だけだった。やがて啄木は編集長になり、釧路きっての名物男になったが、目的のない生活に飽き足りず、やはり文学をやりたかった。小樽で啄木の天才を信じて待っている節子に会ってきた宮川緑雨は、悶々としている啄木を怒鳴りつけ、小奴も彼を励した。啄木は白川社長の懇願もしりぞけ、東京行を決心した。悲しさに取乱しそうな小奴は遂に港へ送って来なかった。一人昂然と胸を張った啄木を乗せた貸物船は波を蹴って進んでいった。