連合艦隊司令長官 山本五十六

劇場公開日:

解説

「でっかい太陽」の須崎勝弥と「父子草」の監督丸山誠治が共同でシナリオを執筆し、丸山誠治が監督した戦記もの。撮影は「100発100中 黄金の眼」の山田一夫が担当。

1968年製作/128分/日本
原題または英題:Admiral Yamamoto
配給:東宝
劇場公開日:1968年8月14日

ストーリー

昭和十四年。揺れ動く世界情勢は未曽有の危機をはらんでいた。折しも日本国内では、日独伊軍事同盟をめぐって、陸軍を中心とする軍事同盟賛成派と一部良識派が、対立していた。時の海軍次官山本五十六は、世界大戦突入を憂慮し、同盟結成を阻止しようとしていたが、皮肉にも連合艦隊司令長官に任命されてしまった。翌年九月二十七日、日独伊三国同盟が調印された。山本司令長官は任務のために真珠湾奇襲作戦に出たが、それは早期講和に持込むための布石だった。この作戦は予想以上の戦果をあげた。だが、米軍の空母が無傷だったことは、開戦劈頭に相手に致命的打撃を与え早期講和につなごうという念願を崩し去った。やがて、“大和”が連合艦隊の旗艦として就役。真珠湾の余勢を駆って、日本軍は西南太平洋から印度洋にかけて、破竹の進撃を続けた。だが昭和十七年四月十八日、米空母ホーネットを発艦したB52の編隊が、日本本土を初空襲。これに動揺した軍上層部は、ミッドウェー作戦を強行した。しかし、作戦指導の失敗から、四空母を失い、山本長官の念願していた早期講和への道は、全く絶たれてしまった。ミッドウェーの勝利から米軍は、俄然反撃に転じ、ガダルカナルへの上陸作戦を開始した。日本軍はラバウルを基地に善戦したものの、補給に継ぐ補給、消耗に継ぐ消耗と日米の物量の差が日増しにあらわれ始めた。ガダルカナルの将兵には、飢餓、酷熱、疫病との戦いも加わり全滅寸前。ここに山本長官は全責任を一身に集め、作戦を中止し一万余の将兵を救うべくガ島撤収命令を出した。撤収を終った山本長官は、戦局挽回のため自らもラバウルに将旗を飜えした。そして昭和十八年四月十八日、山本長官は六機の零戦に護られて前線部隊の激励に出かけた。しかし米軍は日本軍の機密暗号電報を解読していた。やがて、長官機は護衛機必死の応戦もむなしく、米軍P38に襲われ火を吐いた。戦争反対を主張しながらも、戦争を余儀なくされた山本五十六は、皮肉にも自らの戦死によってその責任を全うしたのである。

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スタッフ・キャスト

監督
特技監督
円谷英二
脚本
須崎勝弥
丸山誠治
製作
田中友幸
撮影
山田一夫
美術
北猛夫
音楽
佐藤勝
録音
西川善男
照明
平野清久
原文良
編集
藤井良平
助監督
長野卓
スチル
山崎淳
特技撮影
富岡素敬
真野田陽一
特技美術
井上泰幸
光学撮影
徳政義行
合成
向山宏
合成撮影
土井三郎
操演
中代文雄
石膏
安丸信行
特技助監督
中野昭慶
ナレーター
仲代達矢
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映画レビュー

4.0怪獣が出現しそうな東宝特撮戦記

2021年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 先に2011年版を観ていたので、どうしても同じ台詞に納得してしまう。逆に考えると、40数年前にこの迫力を描き切ったという円谷英二に軍配が上がってしまう。その2011年版と比較しながら見ると、こだわりが感じられるのが海軍と陸軍との確執、飛行機乗りの飛行時間、ミッドウェー以降のラバウル、ガダルカナルの描写など。このガダルカナルの映像が戦争の悲惨さ、物資を運搬する光景、飢餓にあえぐ一般兵たちが悲しく映る。  山本五十六の人間味溢れる描写よりは、軍人としてキリっとした雰囲気が印象に残る。やはり、日米開戦を避けたかったという彼の人間像は浮彫にされているが、その諦めるところもあっさり描き、決断力や南太平洋海戦以降の覚悟が伝わってくるのです。ただ、ドラマとしては平淡で、ドキュメンタリーを見ているような気分にもなるのですが、太平洋戦争の歴史を勉強するにはありがたい作品でもある。  また、描写は少ないが大本営発表を鵜呑みにしてしまうマスコミの愚かな姿も描かれ、ミッドウェーでの4隻もの空母を失った事実さえ国民は知らずに戦勝ムードにあったことなど、山本五十六が死ぬまで皆頼り切っていたんだなぁと痛感。死を覚悟したかのように三船敏郎の目が潤んでいるところもいい。  あきらかに模型だとわかる特撮はさすがの東宝特撮。逆に、あの空母から発射される砲弾はどうやって撮ったのだろうかと首をかしげるほど上手く作られていると感心した。プラモデルを作りたくなること必至。

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kossy

3.5見応えある日本帝国軍戦記

2020年9月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

WOWOWの放送で観賞。 子供の頃、母親に連れられてこの映画を劇場で観た。 1968年8月の公開だというから小学校1年生の夏だが、母親が山本五十六という人がいかに立派な軍人だったかを力説していたことをうっすら憶えているので、もっと後だった気もする。 オープニングの加治川の小舟の上で逆立ちするシーンはよく憶えている。五十六の人物像を紹介する日本の伝記映画らしい演出だ。 映画は「定説」に割りと忠実に描かれている。 帝国軍人の中にも戦争を望まない人たちはいた。 島国日本の陸軍は海を歩いて渡らない限り海軍なくしては戦えない。海軍は最強艦隊として世界に勇名を轟かせている。 陸軍省はソ連の脅威に対抗するためにドイツと軍事同盟を結びたいのだが、海軍省は三国同盟が締結されると米英との開戦が避けられないことから反対している。 海軍省次官から連合艦隊司令長官に抜擢された山本五十六は、戦争はすべきではないと考えながら、一旦日米衝突が確定的となれば、日本が有利な立場でアメリカを講和交渉に誘導出きるように米艦隊に打撃を与える策を立てる。 真珠湾攻撃の直前まで、 アメリカ側に宣戦布告したかを外務省に確認しようとする正々堂々たる軍人だ。 男たちはそれぞれに軍人魂に満ち、気概と悲哀の場面が続く。人間ドラマは割りと淡々とした演出で描かれているが、その一方でミニチュア特撮シーンは凝っている。 ミニチュアであることは分かるのだが、そこに存在しているからこそのリアリティとでも言うか、CGでは出せない迫力がある。ハイスピード撮影によって重量感を出す技術が、空母や戦艦が波を切って進む姿を勇壮に映し出している。 円谷英二としては晩年の作品である。過去作からの流用映像も多いようだが、零戦の窓越しに撃墜した敵機を見るシーンなど、拘りと挑戦は感じられる。 真珠湾攻撃に向かった零戦がオアフ島を回り込むときに木々の枝葉を揺らす場面、空母の甲板から零戦が飛び立つときの移動撮影などは心憎い。 いよいよ五十六最期の飛行場面、派手ではないが、護衛機の前に雲間から敵機編隊が出現するシーンは芸術的だ。 有利に進めたはずのミッドウェイ海戦で日本が敗退したのは、敵艦隊の動きを見誤った、あるいは索敵機からの情報処理を誤ったことに一因があった。 艦載機の魚雷を爆弾に積み替え、また魚雷に積み替えるドタバタが実際にあったようだ。 この海戦が太平洋戦争全体の形勢を逆転し、この大戦の行方を決したとも言われている。物資に劣る日本軍は敗戦に向けて突き進んでいくことになる。 開戦前、五十六が近衛総理に言う「はじめの半年や1年はずいぶんと暴れて見せましょう。2年3年となると、全く確信はありません!」

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kazz

4.0特撮もまた米英に敗戦したことが明らかになったのです

2020年9月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1967年から6年間続いた東宝8.15シリーズの第2弾です 第1弾は名作「日本のいちばん長い日」です 本作も良くご覧になれれば反戦メッセージの映画であると分かって頂けると思います 実質的に1953年公開の本多猪四郎監督の「太平洋の鷲」のリメイクです 特に前半はほとんど同一のシーンや台詞があります 内容も同じく、海軍次官時代から始まり、南方で待ち伏せ攻撃を受け戦死するまでを描いています 序盤は三国軍事同盟を阻止しようと努力し、対米戦回避をいかに山本五十六が主張した人物であるのかを描きます 中盤からは真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦、ガダルカナルの戦いを描き 終盤はブーゲンビル上空での戦死です この構成は「太平洋の鷲」と変わりありませんが、重点の置き方の配分が異なります 本作ではガダルカナルの戦い、ソロモン海海戦、ルンガ沖夜戦、南太平洋海戦に重点が置かれておます 「太平洋の鷲」ではミッドウェー海戦に重点が置かれています ミッドウェー海戦の描き方は「太平洋の鷲」が白黒作品でも一番スリリングにかつ、何が問題であったのかを的確に表現できていました 真珠湾攻撃なら、戦中の1942年に公開された「ハワイマレー沖海戦」 ミッドウェー海戦なら、1953年の「太平洋の鷲」、1960年の「太平洋の嵐」 ガダルカナルの戦いなどなら、1968年の本作、1954年の「さらばラバウル」 こういう具合に作品毎に重点が異なります もちろん特撮は全て円谷英二特技監督です 特撮の系譜の中では、1968年8月1日公開の怪獣総進撃の直後同年8月14日公開の作品となります 特撮は過去の戦争映画のカラー撮影の特撮シーンから抜粋を中心に不足する部分を新撮影で補っている程度です 新撮影は3割程度の印象です 過去作品より後の作品ですから、新撮影の特撮シーンの方が技術が進化して良い映像であると思いたいのですが、そうではないのが辛いところです 正直、1960年の「太平洋の嵐」が、本編も、特撮も最も優れていたと言わざるを得ません それより8年も後の本作はあまり特撮の進化を認められません ごく一部良い特撮映像もあることはあるのですが実態はこれです それは怪獣映画と同じだったと言うことです 1960年頃が東宝特撮イコール日本の特撮のピークだったのです 本作の翌年の1969年のイギリス映画の空軍大戦略の空戦シーンの方が特撮のクオリティは上でした もっと言えば1970年の米国映画のトラトラトラの特撮には逆立ちしても太刀打ち出来ません 何より本作の4ヶ月前には「2001年宇宙の旅」が日本でも公開されていたのです 日本の特撮界にとっては黒船どころか、原爆が落ちたようなものです つまりガラパゴスに陥り進化を止めていたことが明らかになったのです 残念で悲しいことです 特撮もまた米英に敗戦したことがあきらかになったのです しかも本編のセット、美術、エキストラの動き、そして特撮 どれも8年前の1960年の「太平洋の嵐」の方が優れています 退化しつつもあったのです では本作は全く駄目な映画かというとそうではありません これまで何作も戦争映画に三船敏郎が出演していますが、今まで山本五十六を演じるのは違う役者でした しかし本作で初めて、三船敏郎が山本五十六を演じるのです! 「太平洋の鷲」での大河内傳次郎が写真の本人に一番近いリアルな山本五十六なら、本作の三船敏郎は、日本人が司令長官はこうであって欲しいという、山本五十六のイメージを体現しています 日本人の思う偉い人!という姿形、オーラを発しています それを愛でる値打ちはあります

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あき240

3.5先の読める人はつらい

2020年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

山本五十六(三船敏郎)は開戦には反対していたが、いざ戦争となると早期講和を目指す先制攻撃に踏み切る。 ところが国民は「勝っているのになぜ?」と浮かれている。 ミッドウェイの敗北で見通しは立たなくなり、ガダルカナルで決定的になる。 特撮は素晴らしい。

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いやよセブン