BOXER JOE
劇場公開日:1995年5月27日
解説
ボクサーとしては致命的な網膜剥離を克服し、現役復帰を果たしたプロボクサー・辰吉丈一郎。彼の勇姿は多くのボクシング・ファンを大いに熱くさせたが、そんな彼のインタビューと架空のドラマを融合させた異色のボクシング映画。ドキュメンタリー部分では辰吉のインタビューの他に、父親や奥さんのインタビューや、日本中を興奮の渦に叩き込んだ薬師寺保栄との試合をじっくり見せている。また、ドラマ部分では辰吉の熱狂的ファンである、あるお好み焼屋の主人を中心とする人たちの人間模様を、コメディ・タッチで描く。監督は「トカレフ」の阪本順治。脚本は阪本と「潤の街」の金秀吉。撮影は「エンジェル・ダスト」の笠松則通と「女帝(1995)」の田中一成が担当している。ドラマ部分の主演は宇崎竜童。スーパー16ミリからのブローアップ。
1995年製作/118分/日本
配給:電通=シネセゾン
劇場公開日:1995年5月27日
ストーリー
お好み焼屋のガンさんは大の辰吉丈一郎ファン。そんな彼の夢はアメリカでの辰吉のファイトを観戦することだった。しかし、あまり仕事熱心でないガンさんにそんな費用があるわけはない。そこで、ガンさんの娘・ユウコはその費用を捻出するために父親に仕事をするよう仕向けるのであった。ガンさんの店には清という青年と、役所の職員である喜一という男がよく出入りしていた。彼らもまた辰吉ファンであることは違いなく、ガンさんと一緒にアメリカへ行こうと店の仕事を手伝うのであった。はりきるガンさんはチャンピオンベルトに見立てた“辰吉焼き”なるメニューを考え出し、それなりに店も繁盛するようになる。また、その合間を縫って応援の練習にも余念がなかった。しかし、お人好しのガンさんはある日、昔なじみの男に金の無心をされ、断りきれずに貯金した渡米費用に手をつけてしまう。清と喜一は金がなくなったことを知って怒った。学校をサボったり、役所を休んだりしながら店を手伝った彼らにとって、それは当然我慢のならないことだった。しかし、それをフォローしたのはユウコだった。父親の性格を知り尽くした彼女は清と喜一を宥める。アメリカへの費用はなくしたものの、辰吉の試合が地元名古屋であることを聞いたガンさんたちは、そのチケット入手に成功。試合までの日を首を長くして待つのであった。いよいよ試合当日、店を臨時休業してレインボーホールへ向かおうとしたガンさんたちだったが、いざ家を出ようとした時に清の祖母・フクの訃報が届く。「僕を置いて見に行ってくれ」と言う清に、ガンさんは「四人で見に行けなければ意味がない」と優しく語った。試合開始時間が刻一刻と迫る中、しめやかに通夜は執り行われる。だが、四人だけはこっそり別の部屋で、やはり辰吉のファンだったフクの弔いをするために、テレビで辰吉と薬師寺保栄の試合をしっかり見るのだった。