震える舌

劇場公開日

解説

郊外の団地で平穏に暮す親娘の三人家族の娘が、テタナス(破傷風菌)に取りつかれ、伝染の恐怖におののく家族を描く。芥川賞作家、三木卓の同名の小説を映画化したもので脚本は「わるいやつら」の井手雅人、監督も同作の野村芳太郎、撮影も高作の川又昂がそれぞれ担当。

1980年製作/114分/日本
原題:Writhing Tongue
配給:松竹

ストーリー

東京のベッド・タウンである千葉郊外の団地に三好昭と妻の邦江、娘の昌子の三人家族は住んでいる。その付近には、まだ葦の繁みがあり、昌子は湿地の泥の中を蝶を追って捕虫網をふりまわしていた。一人っ子の昌子はおとなしく、無口な少女だ。昌子はすんでのところで珍しい蝶を取り逃がしてしまった。その晩、昌子は夢を見た。蝶がぐんぐん自分に迫り、目の中に飛び込んで来た。「こわいよ」と叫ぶ昌子。かけつけてきた昭は、ぞっとする何かを感じ、身震いするのだった。数日後、母の邦江は昌子の小さな異常に気づいた。食事中、昌子は食物をポロポロこぼし、トイレに立った後姿は鵞鳥のような歩き方をしている。風邪かなと邦江は心配した。しかし、その直後、昌子は絶叫をあげて倒れた。白い歯の間に小さな赤い舌がはさまってもがいていた。邦江は舌をはずそうとするが、昌子の顎はけいれんして動かない。昭はとっさに箸をくわえさせた。救急車で病院へ運ばれる途中も、昌子の発作は続いた。舌を噛まないように差し込んだ昭の指はくい破られ、血が吹きだしていた。大学病院で、昌子は医師団に裸にされ、何時間も調べられた。「テタナスだ!」と叫ぶ医師たち。テタナスとは、幾億年も昔、まだ人類などいない頃、地球に存在した微生物だ。酸素を嫌うこの微生物は、その後絶滅したかに思われたが、湿地の泥の中や鉄のサビの中など、酸素の少ない場所にじっとひそんでいたのだ。テタナスは、ほんの僅かな傷口から人間の体内に侵入し、二〇グラムで日本を絶滅させるという。そのテタナスが昌子の体の中に凄みついたのだ。テタナスに対抗するためには光と音を遮断することが絶対に必要であるという。昌子は暗い病室の中でビニールの酸素テントをかぶされ、ベッドの枠に手足を縛りつけられている。噛み合った歯はへし折れ、金属のエア・ウェイがくわえさせられている。担当女医の能勢は、テキパキと合理的な処置を下すが、近代医学はテタナスを打ち破ることが出来るのか。昌子はうめき声をあげ、体を弓なりに反らせる。これ以上反ったら、背骨が折れてしまう。昭、邦江、能勢の不眠の数日が続く。もうろうとする昭の頭に「昌子に噛まれた指の傷から、奴等が入り込んだのでは」という恐怖が生まれた。邦江も「わたし、うつっちゃった。死んでしまうんだわ」と妄想に取りつかれた。今、三人の親娘は完全にテタナスのとりことなっていた。平和な家庭は、一転して、底知れぬ地獄の中に投げこまれてしまったのだ。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第4回 日本アカデミー賞(1981年)

ノミネート

監督賞 野村芳太郎
主演男優賞 渡瀬恒彦
助演女優賞 中野良子
音楽賞 芥川也寸志
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オソレゾーン

映画レビュー

4.0ある意味ホラー 平成生まれ以降は理解し難いのでは。

2022年6月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

古き良き昭和の日本を体感出来る作品。
平成以降に生まれた人には、理解し難いのでは部分ありかも。

感染症が題材なのに、両親がヤツレていくとなる、ある意味ホラー映画。

最近の日本映画が、如何に物足りないかが、良く理解出来る作品でした。

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案山子男

4.0当時の病院

2022年5月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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くろすけ

3.5日本版エクソシスト

佐ぶさん
2022年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

エクソシストの元ネタの症状も破傷風だった説がありますが、こちらは病院で普通に治療します。悪魔がついているわけではありませんが、その症状はエクソシスト並の恐ろしさ。
今は多くの人が破傷風のワクチンを小さい頃に打っているので発症確率は低いですが、当時は啓蒙映画として効果絶大だったのではないかと思います。自分も子供の頃に足の裏に釘が刺さったとき破傷風が脳裏をよぎりました。

大人になって鑑賞してみると、自分は冷静を保てる自信があるためか両親には感情移入出来ませんでしたが、昌子ちゃんは本当に可愛そう。今でも破傷風にかかる確率はゼロではないので注意しないとなりませんね。

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佐ぶ

4.0野村監督にしてやられましたホラー映画として観てたでしょう?そんな監督の声が聞こえてきそうです

あき240さん
2022年4月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1980年公開
内容は普通ならガチガチの医療映画になるところ、ホラー風味で撮られているところが特徴です

破傷風にかかった6歳の少女
大した病名ではないように思えるけれど、実はなかなかに難病でかつ想像以上の重篤さです
それは劇中でも医師の台詞として説明されます

この難病の苦しみの光景は1973年のエクソシストを思いおこさせるように仕組まれています

つまり悪魔たる悪性の病原菌が少女に乗り移って、少女や両親を苦しめていると思わせる映像なのです
さしずめ中野良子が演じる女医は、神父に相当します
悪魔払いは様々な医療行為に置き換えられる訳です

看病で疲れ果てて、両親が心神耗弱に陥るシーン特に母役の十朱幸代が錯乱してしまう演技は迫真性があります
まるで悪魔が乗り移ったかのようです

6歳の少女
可愛い盛りです
その子供が身をよじって苦しみもがき、悲鳴を上げ続けるシーンが長く何度も何度もあります

子供を持って、高熱を発してうなされたりした経験が有れば、さらに威力を倍増して、観客まで心神耗弱にしかねないほどです

物語はハッピーエンドで唐突に終わります
しかし、ホラー映画にすれた観客はそんな訳がないと疑ってしまうのです
もうひと波乱あるはず
いまか、いまかと身構えてしまうのです
しかし、そのままエンドマークがでてしまうのです

なぜなら本作はホラー映画ではなく、医療映画なのですから

私達観客には、結局のところ専門的な医療のことは分からないのです
まして難病となれば、医師の言うとおりにただ看病して快癒を祈るしかないのです

だったら、悪魔払いと大して変わらないでしょう?

つまり野村監督に観客はしてやられているのです
ホラー映画として観てたでしょう?
違いますよ、普通の医療映画です
だからハッピーエンドだったでしょう
そんな監督の声が聞こえてきそうです

さすがです

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あき240
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