必殺仕掛人

劇場公開日:

解説

法に代って、庶民の怨みを晴らす“殺しの代行者”仕掛人の活躍を描く、池波正太郎原作、同名のテレビ・ドラマの映画化。脚本は安倍徹郎、監督は脚本も執筆している「舞妓はんだよ 全員集合!!」の渡辺祐介、撮影は「男じゃないか 闘志満々」の小杉正雄がそれぞれ担当。

1973年製作/87分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1973年6月9日

あらすじ

鍼医者・藤枝梅安は、仕掛人の元締・音羽屋半右衛門から前金二十五両と引換えに日本橋蝋燭問屋・辻屋文吉の後添いお照を殺した。お照は、盗っ人稼業駿府の音蔵の娘で、音蔵が乾分の徳次郎に殺された後は、孫八と組んで悪事を重ねていた。その上、老い先短い文吉をたぶらかして後妻に入り込み辻屋の身代を狙っていた。文吉がお照の仕掛を依頼したのもそのためであった。翌日、梅安は血の匂いを消すため、今では梅安の助っ人となっている徳次郎を連れて甲州へ旅立った。二人の後を、梅安のお照殺しを目撃していた孫八が尾けていた。その夜、徳次郎は裏切者として孫八に殺された。仕掛人西村左内は研師を稼業としていたが、その喧嘩さばきを買われて、八丁堀同心峯山又十郎から町方同心になることをすすめられていた。ただし、与力、組頭への手土産として三十両が必要だという。だが、それは又十郎の地位利用のユスリタカリだった。街はずれの私娼宿の女将・お吉は、上野界隈を縄張りとする香具師・三の松の平十の妾だが、今では平十の乾分になっている孫八とも深い仲であった。やがて、病弱な平十は、度々難癖つけてユスっていた又十郎の殺しを音羽屋に依頼して息を引き取った。平十の弟分・聖天の大五郎もあらためて又十郎殺しと、そしてお吉の仕掛を依頼した。音羽屋は、又十郎を左内に、お吉の仕掛を梅安に命じた。左内の大刀が一閃した。又十郎は愛妾の絶叫を聞きながら死んでいった。一方、梅安は、お吉と孫八が情欲の後、熟睡している時を狙って殺した。平十の遺児・為吉は、お吉、孫八、又十郎と邪魔者が亡くなって平十の縄張りを継いだ。ところが、大五郎はかねてからの計画通りに、為吉を殺し、縄張りを手中にした。だが、大五郎に利用されたと知った音羽屋は、大五郎を許さなかった。音羽屋の白扇の柄からスッと抜かれた細い刃が一閃した……。数日後、音羽屋、梅安、左内が酒を交わしていた。そして、梅安が淋しそうに言った。「あのお吉の目が、おふくろの目にそっくりだったんですよ……。」

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0良くも悪くも昭和のアンチヒーロー

2025年6月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

藤枝梅安。
名前がカッコいい。
殺し屋のことを「仕掛人」と呼ぶのはこのシリーズの中だけの造語のようなのだけれど、これもカッコいい。
時代劇はやっぱり名前が命だなあとつくづく思う。

この卓越したネーミングセンスの持ち主は原作者の池波正太郎。言わずと知れた時代小説の大家である。
池波正太郎といえば、藤沢周平、司馬遼太郎と共に「一平二太郎」と呼ばれ、昭和の中年男性から絶大な人気を誇る三大時代小説家の一人だった。
「一平二太郎」の作品群が全て中年男性だけをターゲットにしているというわけではないだろうけれど、本作は本質的には中年男性向けのアクション時代劇である。

本作はテレビシリーズが先行しているのだけれど、ドラマの方で藤枝梅安を演じていたのは緒形拳である。本作の田宮二郎もミスキャストというわけではないけれど、やっぱり緒形拳の方が藤枝梅安というキャラクターに合っている気がする。
実際、本作の後に作られた第二作『必殺仕掛人 梅安蟻地獄』と第三作『必殺仕掛人 春雪仕掛針』は緒形拳に戻っている。

田宮二郎演じる藤枝梅安は甘いマスクと飄々としたキャラクターであまり裏稼業の人間という凄みは感じられない。そのぶん憎めない愛敬があって、製作陣は女性観客のことも意識して田宮二郎を起用したのかもしれない。

でも田宮二郎が演じることで多少雰囲気がやわらいでいるとはいえ、本作が中年男性向けの娯楽作品だというのは変わらない。

藤枝梅安は表向きは腕のいい鍼医者だが、裏では金で殺しを請け負う仕掛人と呼ばれる凄腕の殺し屋である。生きていては世のため人のためにならないような極悪人を得意の鍼を使って人知れず抹殺するのが仕事だ。
ただ、ターゲットが本当に死に値するほどの極悪人なのかどうかは元締めの判断に委ねられていて、梅安自身が裁きを下すわけではない。

梅安自身が自分の意思で裁きを下すわけではないので、いわゆる勧善懲悪的なスッキリ感はあまりない。
梅安はあくまで金を貰って人を殺す実行役でしかないのだ。なので、今ひとつ感情移入しづらくてモヤモヤ感が残る。

でも、昭和の中年男性たちはこういう、善とも悪とも判断しづらいグレーゾーンの領域にいるアンチヒーローを受け入れる、良く言えば懐の深さ、悪く言えばルーズさがあった。

梅安はけっこう女好きでもあり、女郎屋通いもする。結局は女郎にうまくあしらわれて何もできなかったというような三枚目的なところもあり、なんとなく短髪の田宮二郎がルパン三世みたいに見えてくる(笑)。
こういう、平気で女郎屋通いをする女好きというキャラクターも、当時の中年男性たちは普通に受け入れていたのだが、最近はアウトになりつつある。

本作の藤枝梅安は、良くも悪くも昭和のアンチヒーローだと言えるだろう。

かつてはボンドガールを取っ替え引っ替えしていた昭和の絶倫男ジェームズ・ボンドもダニエル・クレイグの代になってからは一途な愛を貫くキャラクターになり、女性観客にも受け入れられるようになった。

藤枝梅安は昭和から平成にかけて四度テレビドラマ化されていて、いずれも自分は未見なのだけれど、規制の厳しいテレビの世界でお茶の間受けするようなキャラクターに変わっていったであろうことは想像に難くない。

そして、最後の映像化から十数年の時を経て、令和になって突如として藤枝梅安は豊川悦司主演で蘇った。

自分の中では仕掛人・藤枝梅安というのはあくまで小説のシリーズであり、こっそりと(?)読んで楽しむものだった(笑)。
だからいずれの映像作品にも食指が動かず、ずっと未見だったのだけれど、今回初めて田宮二郎版を観て、豊川悦司版にも興味が湧いてきた。

昭和のアンチヒーローが令和でどのように描かれたのかこの目で確認してみたくなった。

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盟吉津堂

4.0人知れず仕掛けて仕損じ無し・・・

2025年1月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

興奮

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ratien

0.5タイトルなし(ネタバレ)

2023年5月15日
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鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.5梅安大ピンチ!

2023年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 田宮二郎演ずる藤枝梅安は初めて見た。ついでに西村左内が高橋幸治になっている。元締めである音羽屋半右衛門役は山村聰、岬の千蔵は津坂匡章(76年に秋野大作と改名)だ。

 梅安、左内、半右衛門がそれぞれ活躍するという豪華な設定だが、TV版とは違い、池波正太郎原作本に忠実であるとのこと。そして、仕掛ける相手の下見調査も徹底していて、最初に殺したお照(川崎あかね)の濡れ場も覗き見る・・・そこまでせんでも・・・

 左内は貧乏暮らしで将棋打ち。風呂屋で喧嘩を仲裁したところから八丁堀の峯山(室田日出男)から町方同心に誘われるも、紹介料が三十両かかるという。また、峯山は悪徳警官そのもので町民から金を取り、私腹を肥やしていたという悪人だと分かる。

 盗人稼業の親分みたいな孫八とその情婦を殺すよう依頼された仕掛人。梅安が二人とも殺そうとするが返り討ち。簀巻きにされたところを千蔵に助けられ、その晩のうちにもう一度仕掛けるという荒技。ボコボコに痛々しい姿で殺しをやるが、女(野際陽子)の目が生き別れになった妹のような気がしてならなかったという話。また、孫八を殺したものの、上には上がいて、香具師のシマを取り返したと思った為吉がおじきである大五郎に殺される・・・大五郎に利用されたと知った半右衛門が掟破りの罪により処刑。

 全体的に結構重苦しい雰囲気だった。梅安が殺されるんじゃないかとヒヤヒヤさせられたけど、死ぬわけないよね。ただし、次回作からはテレビ版と同じく緒形拳が演ずることに。

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kossy