秘剣
劇場公開日:1963年8月31日
解説
五味康祐原作“秘剣”より「マタンゴ」の木村武と「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」の稲垣浩が共同で脚色、稲垣浩が監督したハードボイルド時代劇。撮影は「独立機関銃隊未だ射撃中」の山田一夫。
1963年製作/108分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1963年8月31日
ストーリー
早川典膳は両親を早く失い、拾われて細尾長十郎と兄弟のようにして育てられた。孤児の典膳は剣の腕にかけては、九州小笠原藩の中でも群を抜いていた。しかし、時は太平ムードの寛永年間のこと、典膳にとっては、退屈な毎日であった。その頃同藩に宮本武蔵がやってきた。夢にまでみた武蔵に一目会いたいと申し出た典膳の願いは、指南役としてかなえられた。血気にはやる若者達も、密かに武蔵の剣に憧れていた。天下太平の世の中に剣はいらぬと説く武蔵の言葉も、若者には通じなかった。かっとなった武蔵は畳のへりをおこし、瞬間一閃、スパッと真二つに斬り捨てた。一座シーンとなった中で一人典膳のみ薄笑うのであった。藩の面目をつぶした罪で典膳は師範代はやめさせられ、婚約者勢以との縁談も破談になった。狐独をかこう典膳は逼塞中にもかかわらず、山中のあばらやに身を寄せるのであった。その板の間で一心に鼓をかきならす三輪の修業に励まされた典膳は厳しい修練のはて神技に近い秘剣をあみだすのであった。しかしその典膳を待っていたのは藩の掟を破った重罪人としての罪であった。追ってにまわった義兄長十郎の努力もむなしく切腹を命ぜられ、江戸の大目付島村邸にかん禁される身であった今や剣に命をかける典膳、血走った目が宙をにらむや、惨然と太刀は島村十左衛門を斬りつけた。静かに眠る町。典膳の剣は右往左往する家老、青年剣士を悪魔の如く襲った。長十郎一人、兄弟として育った典膳を斬るか苦悩する長十郎の顔に“典膳の秘剣は邪剣だ”という正義の声が……長十郎の目は、典膳の姿にひかった。