裸の十九才

劇場公開日:

解説

地方から上京した少年が大都会の非常なメカニズムの車輪に巻きこまれ、次第に脱落し、ふとしたはずみで殺人を犯すという事件を素材にした、近代映協創立二十周年記念映画。脚本は「かげろう」の関功と松田昭三、監督は脚本にも参加している「かげろう」の新藤兼人、撮影は同作の黒田清巳がそれぞれ担当。

1970年製作/120分/日本
原題または英題:Live Today;Die Tommorow!
配給:東宝
劇場公開日:1970年10月31日

ストーリー

山田タケは明治の末年北海道で生まれ、青森県細柳で成人した。リンゴ園の渡り職人と結婚し、次々と子供を生んだが、妻子を顧みない夫のために喰いつめ、一家は北海道網走に渡った。貧苦の中で八人の子供を生み、離婚して再び細柳に帰って来た。タケは魚の行商をして子供たちを育て、やがて成長した子供たちは都会へと巣立っていった。七人目の道夫も四年前希望に胸をふくらませ、集団就職で上京したが、大都会の孤独に耐えきれず、勤め先のフルーツパーラーをやめた。それからの道夫は、勤め口を転々として、脱落の一途をたどった。彼には最早いくべきところがなかった。道夫を支えるものは、かつて横須賀米軍基地から盗んだ、ずっしりと手応えのある拳銃だけだった。夜更けの都会をさまよう道夫は、華やかな明るさにひかれるようにホテルの庭に忍びこんだが、不意にガードマンに襟首をとらえられ、無我夢中で引き金を引いた。殺人は想像を絶する簡単さでなされてしまった。道夫は京都に逃れたが、衝動的に八坂神社のガードマンを射殺し、北海道に渡った。道夫は生まれ故郷で自殺を企てたが果せず、帰りの旅費欲しさに函館のタクシー運転手を殺した。そして数日後、名古屋に現われての第四の殺人。今度も犠牲者はタクシーの運転手だった。金を求めて、深夜のオフィスに忍びこみガードマンに発見されたが、発砲して一旦は逃れたものの、明け方歩行中をパトカーの警官に訊問され、ほとんど無抵抗で逮捕された。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

4.0どうしてこの事件が起きたのか。 ドキュメンタリータッチで迫る。

2022年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

連続殺人事件の永山則夫をテーマに、ドキュメンタリータッチで描いた映画。若き原田大二郎がとても光って熱演している。その母親役の乙羽信子は東北の田舎に住み、ぐうたらで家に帰らず博打で金のない夫との間にもうけ、たくさんの子どもと暮らしている。しかも子どもができたら産むという純朴であるが立場の弱い母親を演じている。
どうしてこの事件が起きたのか。父親・母親、兄弟関係、貧困の中での生い立ちが原因なのか。
貧困で食にも困る東北の田舎の状況から脱出するように、また夢を描生きながら上京する主人公。上京してきたものの、集団就職に馴染めない多くの若者。そして対比するように映し出される学生デモや過激派。これらのデモは集団就職の若者にはどう映ったであろうか。
当時の集団就職ではよくあったことらしいが、長く勤めることができず職を転々とし、ドロップアウトする若者も多い。中には闇の世界に入っていく者も。
同様に主人公は転々と仕事を変え、人殺ししても淡々と生き延び、純朴な青年を演じ平気で嘘をつく。
どうしてこのような性格になったのか、単に貧困なのか、その生い立ちの中で培われたものなのか、集団就職で蔑まれたことへの腹いせなのか。母親、父親への恨みなのかそれは分からない。

今回2回目であったのでストーリー展開が分かっており、衝撃的な印象が薄れてしまったが、見る価値のある映画である。

広島市映像文化ライブラリー。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
M.Joe