今 敏監督作品。
今 敏は元々は漫画家としてスタート。
30代半ばからアニメーターとして活躍。絵がとても上手い。
「パーフェクト・ブルー」は1998年公開で81分。
製作費は9千万円。
今 敏(1963年~2,010年)は46歳で亡くなっている。
今生きていてもまだ62歳ですのでとても惜しい方ですね。
今作の魅力は、
●衝撃的で過激な性描写、そしてカット割りとレイアウトと構成力。
●現実と虚構が混沌として、何が真実なのかを、
わざと解りにくくした演出。
この2点だと思います。
1998年といえば「モーニング娘。」がデビューした年です。
オーディション番組「ASAYAN(あさやん)」の出身で、
当時夢中で見ていた記憶があります。
アイドルから女優に転身した「AKB 48」の前田敦子や大島優子は、
今や第一線で演技派女優として大活躍しています。
アイドルグループは、【卒業】という形で独り立ちしていきますが、
霧越未麻のいたアイドルグループ【CHAM】は3人グループで、
未麻が抜けて2人になってからの方が活躍し出して、
そのことも未麻の焦りを駆り立てます。
■
【笑顔】
アイドルは常に機嫌良く明るく愛想を振り撒くのが仕事です。
頭の痛い時も、不機嫌な時も腹が立つ時も常に笑顔、
どんだけストレスに晒されるでしょうか?
■
熾烈な【競争】
たとえば48人ものメンバーの中でセンターに抜擢されるのが、
どれほど大変か?想像するだけでも気が遠くなる。
そして彼女たちはメンバー交換を繰り返して消費されていくのです。
■ストーカーの存在、
アイドルの押し活に、命懸けの人々。
未麻が女優に転身するステップとして、レイプシーンや
過激なグラビア写真に
挑戦して行くのですが、未麻をガードして守ってくれる強力な
大手芸能プロダクションや、売り出し戦略を綿密に立ててくれる
プロジェクトチームがいなかったから
経験の少ない未麻本人に決断を任されている・・・
そこにも問題があったとそう思います。
★★☆
ドラマ【ダブルバインド】の収録と未麻の妄想が交互に出て、
カット割りされる
ますます現実と虚構の分かれ目が曖昧な手法がとられていて、
観客は余計に惑わされ混乱するのです。
【ダブルバインド】の言葉の意味は、“二重拘束“
上手いですね。
未麻のアイドルとしての清純な姿と、
女優として挑戦しなければという意識の拘束。
未麻は“ダブルバインド“に心が引き裂かれて行くのです。
もう一人の自分・・・アイドル霧越未麻が現れて、
ダーレン・アロノフスキー監督の
「ブラック・スワン」の白鳥と黒鳥のように二重構造になり、
未麻を狂気へと誘うのです。
(アロノフスキー監督がパーフェクトブルーの大ファンで、
「ブラックスワン」の方がオマージュだとの説もあります。
【そして終盤】
•脚本家の渋谷先生が殺され、
•カメラマンの村野がエレベーター内で目を刺されて殺され、
•ストーカーの内田が遺体で発見される。
•内田が未麻の所属事務所の社長・田所も殺されたか?重症です。
【真犯人とその動機】
真犯人らしいのはマネージャーのルミ・・・ですが、
映像の中では未麻がナイフで刺しているシーンも混ざり、
ストーカーの内田が殺したらしいカットも混ざり判然としません。
ただ分かっていることは、
「アイドルの神秘性」にこだわりを持ち、未麻にそれを求めるルミが、
最初から怪しかった。
未麻と顔も体型も正反対のルミの羨望と嫉妬、二つの歪み。
冒頭のホームページの作り方をレクチャーする段階で未麻になるすまして
未麻の私生活や行動をパソコン画面に流して未麻を洗脳して
操縦していたとも思えます。
【ラスト】
アイドルの衣装のルミ、
未麻の命を狙ってどこまでも追ってくるルミ。
お腹に尖ったものが突き刺さり、国道を走ってくる
宅配便のトラックのライトに向かって両手を広げ、
“未麻になりきったルミは恍惚の表情を浮かべます
(まるでスポットライトに微笑むアイドルになり切って、)
ルミは本当はアイドルになりたかった‼️
咄嗟にルミを突き飛ばす未麻。
◆病院
ルミは重症で多重人格者として、時々はルミに戻るという。
◆未麻の言葉。
「私がこうなれたのはあの人のおかげ、
「私は本物よ‼️」
■■観終わって、
アニメでなければできない映像表現が多々ありました。
人物の入れ替わりや顔のすり替え、過去と現在、ドラマと現実、
そして本当に狂っているのはルミだけなのか?
未麻は正常な神経だと言い切れるのでしょうか❓
・魑魅魍魎の多い芸能界、
・精神を病むアイドルや、その消費期限。
30年近く前の作品ですが、斬新なカメラワークに翻弄されて
引き込まれました。