人間の証明

劇場公開日:

解説

「犬神家の一族」に次ぐ角川春樹事務所製作第二弾。舞台を日本とアメリカに据え、戦後三十年という歳月の流れをつつむさまざまな人間の生きざまを描く。脚本は一般公募で選ばれた「ふたりのイーダ」の松山善三、監督は「新幹線大爆破」の佐藤純彌、撮影は「悶絶!! どんでん返し」の姫田真佐久がそれぞれ担当。

1977年製作/132分/日本
配給:東映
劇場公開日:1977年10月8日

あらすじ

東洋的な風貌を頬に刻んだひとりの黒人青年が、ニューヨーク・バンクで六千ドルの大金を白人紳士から受け取り、みすぼらしいスラムをあとに、一路東京へと飛び発った。キスミーに行くという言葉を残して。東京ロイヤル・ホテルの四十二階で、人気絶頂の女流デザイナー八杉恭子のファッション・ショーが始まって間もないころ、エレベーターの中で、黒人が胸にナイフを突き刺し、西条八十詩集を抱いたままその場に倒れて死んでいた。男の名は、ジョニー・ヘイワード。麹町署に捜査本部を置き、警視庁の那須班の刑事たちは、エレベーター・ガールの証言から、ジョニーが死にぎわに口走った“ストウハ……”という言葉を最初の手がかりとして、捜査を開始した。棟居刑事とベテラン刑事横渡らは、現場近くの潜水公園を検証し、そこで古い麦わら帽子を発見した。ストウハ……、それはストロウ・ハット(麦わら帽子)のことなのか?--その夜、別の場所で車による轢殺事件が起きた。東洋技研の新見部長に、家の近くまで送られてきたホステスのなおみが車から降りて間もなく、別の方向から走ってきた車にはね飛ばされた。運転していた郡恭平は、女友達の路子と共に、なおみの死体を車に担ぎこみ、海に棄てた。一方、なおみのことが気にかかり、彼女と別れた場所に戻った新見は、そこで血のにじんだ時計を見つける。それは息子の恭平に、八杉恭子が買い与えた物だった。ニューヨーク市誓の刑事ケン・シュフタンは、日本からの依頼で、ジョニーの身元捜査のため、彼のアパートを訪ね、そこでパーク・アベニューに住む、ライオネル・アダムスの名を記したメモを見つけた。アダムスの話によると、数カ月前、彼の車にぶつかってきたウィルシャー・ヘイワードという名の黒人に六千ドルを要求され、彼の息子のジョニーに支払ったという。一方、失踪した愛人のなおみを追っていた新見は、時計の持主が郡恭平であることをつきとめた。新見から依頼を受けた棟居と横渡が、郡家を訪れると、すでに恭平はニューヨークへ発ったあとである。恭平が事故を起こした事を知った恭子が、彼を国外へ逃がしたのであった。郡家からの帰途、おでん屋に立ち寄った棟居と横渡は、酔い痴れた客が、西条八十の詩の中の“霧積”と言葉を口ずさむのを耳にする。ジョニーが言った“キスミー”それは、もしかすると、この霧積のことではないのか? 早速その霧積へ飛んだ棟居と横渡は、この地に古くから住む中山たねという老婆が、昔、霧積にやって来た黒人の親子連れを見かけたことがあるという話を聞きこみ、そのたねのもとへ駈けつけたが、たねはその直前に殺されていた。棟居らは、たねのいとこよしのから、たねが終戦直後、横須賀でバーを開いていたこと、そしてその店で意外な女性が働いていたことを知った。中山たねが、昔見かけた黒人の親子連れというのは、この女と、ウィルシャー・ヘイワード、そしてジョニーのことではないだろうか。ウィルシャーが、わが身を犠牲にしてまで、息子を日本へ旅立たせた訳は、ジョニーを母に会わせるためだったのではないだろうか? そして、日本へやって来たジョニーと、この母との間に何かが起きた--棟居はいっきにニューヨークに飛び、25分署のケン・シュフタンとコンビを組んで、ジョニーの父親ウィルシャー・ヘイワードの捜査を開始したが、意外にも日本とアメリカの二人の刑事は、宿命的な絆によって結ばれていたのだ。戦後30年、さまざまな生き方をしてきた人々が、見えない一本の糸にからまれるように、深く関り合う。東京とニューヨークを結ぶこの捜査がすすむにつれ、事態の展開は、息をのむような新しい事実をほりおこし、また意外な事件を生んでゆく…。

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映画レビュー

3.0まま~♪どぅゆりめんば~♪

2025年5月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

米国からやって来た黒人青年の殺人事件を捜査する話。
公開当時のTVCMは遺伝子レベルで憶えているが映画自体は今回が初見。
ミステリーだが「誰が」「どうやって」より「何故」が中心なので犯行方法など雑な部分が多いように感じた。
既に逝去された方を含めて様々な俳優が相応しい演技を演じる中で、昔も今も変わらぬ岩城滉一。
松田優作は演技と映画の質が会っていないように思う。
ラストシーン直前に「結局、こいつが全ての元凶じゃね?」と思った直後に裁きが下ってワロタ。
あとBGMはルパンにしか聴こえない。

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ジョン・ドゥ

2.0霧積温泉に私も行きたいです

2025年5月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

原作を読んでしまっているからなのか、普通という感想です。
ハナ肇さんが良かった。
三船敏郎さんは、なんだか安っぽい台詞の連続で可哀想だったけれど、そもそもあんなものなのかもしれない。
松田優作さんは流石でしたね。この映画、わたしにとっては一番良いかもしれないです。

森村誠一さんが一寸出てくるのが笑えました。
霧積温泉、私も行きたいです。

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ねこたま

4.0松田優作の態度が悪い

2025年5月7日
Androidアプリから投稿

松田優作が聞き込み調査をしているにもかかわらず人の話を聞く態度ではありません

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van

5.0岡田茉莉子氏の目力と圧倒的な存在感はまさに女優、白眉です。

2025年4月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

新文芸坐さんにて「完全版 最後の角川春樹」出版記念『日本映画変革の時代・スペクタクル』(2025年4月14日~24日)と題した特集上映。まず本日1本目は『人間の証明』。

『人間の証明』(1977年/132分/35mm)
「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね ええ、夏、碓氷から霧積へ行くみちで 渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ…」の台詞、渓谷に落ちていく麦わら帽子が今でも印象に残る本作。

刺殺された黒人青年ジョニー・ヘイワード(演:ジョー山中氏)の残した「キスミー」(=霧積)、「ストウハ」(=麦わら帽子)の言葉を手掛かりに捜査を進めていく展開は『砂の器』(1974)の東北訛り「カメダ」(=島根県亀嵩)との類似点もありますが、公開当時は日本映画史上初の本格的なニューヨークロケは今観ても大作感があり両作とも壮大な推理サスペンスとしても傑作ですね。

戦後の混沌とした時代を生き抜いた棟居刑事(演:松田優作氏)、ファッションデザイナー八杉恭子(演;岡田茉莉子氏)、ジョージ・ケネディ氏演じるニューヨーク警察署の刑事ケン・シュフタン(ジョージ・ケネディ氏)の3人の数奇な巡り合わせのサイドストーリー、因果応報な展開も実に良いですね。
三船敏郎氏、鶴田浩二氏の大物俳優、野性味溢れる若き松田優作氏にも目を奪われますが、特に地位や名誉、そして母性に葛藤する岡田茉莉子氏の目力と圧倒的な存在感はまさに女優、白眉です。

そしてジョー山中氏が歌い上げる伸びやかなテーマ曲。
霧積の渓谷に麦わら帽子が落ちていく絶妙なタイミングのインサート、これほど作品にマッチする映画音楽もなかなかないですね。さすが大野雄二氏です。

この時期の角川映画は実に豪華で贅沢、何度も観ても面白いですね。

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矢萩久登