なみだ川
劇場公開日:1967年10月28日
解説
山本周五郎の原作「おたふく物語」を、「悪名一代」の依田義賢が脚色し、「古都憂愁 姉いもうと」の三隅研次が監督した女性もの。撮影も「悪名一代」の牧浦地志。
1967年製作/79分/日本
原題または英題:The Homely of Sister
配給:大映
劇場公開日:1967年10月28日
ストーリー
嘉永年間。江戸日本橋はせがわ町に、おしず、おたかの姉妹がいた。二人はそれぞれ、長唄の師匠、仕立屋として、神経を病んで仕事を休んでいる彫金師の父新七に代って、一家の生計を支えていた。姉のおしずは、生半可な諺を乱発する癖のあるお人好し、妹は利口で勝気な性格と、対照的だった。この姉妹にとって悩みの種は、ヒョッコリ姿を現わしてはわずかな貯えを持ち出していく兄の栄二のことで、二人の結婚を妨げている原因のひとつであった。ある日、おたかに、彼女が仕立物を納めている信濃屋の一人息子友吉との縁談が持ち上がった。おたかは友吉を憎からず思っていたのだが、彼女は姉よりも先に嫁ぐのが心苦しく、また栄二のこともあるのでその話を断った。だが、妹の本心を知るおしずは、信濃屋の両親に栄二のことを打ち明け、また妹には、自分にも好きな人があって近いうちに祝言を上げるからと、縁談をまとめたのである。おたかは喜びながらも、姉の結婚話は嘘に違いないと胸を痛めるのだった。そして姉が好きな人だという貞二郎にあってみて、自分の思う通りなのを確かめた。だが、おたかは姉が本当に貞二郎に焦がれているのを知っていた。彫金師としては江戸一番の腕を持ちながら少しスネたところのある貞二郎におたかは熱心に頼み込み、おしずに会ってもらうことにしたのである。試しにと、おしずに会った貞二郎は、彼女の天衣無縫な性格に心がなごむ思いだった。だが、このことが、前からおしずを囲ってみたいと思っていた鶴村に伝わると、鶴村は貞二郎に、おしずは自分の囲われ者だと言って手を引かせようとした。それを真に受けた貞二郎は、おたかに会って確めようとした時、おしずの自分を想ういじらしい気持ちを訴えられて我身の卑しい気持ちを恥じるのだった。やがておたかの結納も無事に終えた夜、栄二が姿を現わした。おしずは、栄二が妹の婚礼を邪魔する気なら、刺し違えて自分も死のうと短刀を握りしめたが、栄二は妹たちがそれぞれに幸せを求めて嫁ごうとしているのを知ると、黙って立ち去っていった。婚礼の日、おしずは貞二郎と共に、おたかの美しい花嫁姿をわがことのように喜ぶのだった。