土佐の一本釣り
劇場公開日:1980年12月27日
解説
中学を卒業すると、海に生きる漁師に憧れ、カツオ船に乗った若者と、二歳年上の恋人を中心に土佐の人々の生きる姿を描く。「ビッグコミック」に連載中の青柳裕介の人気漫画を映画化したもので、脚本は「神様のくれた赤ん坊」の前田陽一と松原信吾の共同執筆、監督も同作の前田陽一、撮影は「サッちゃんの四角い空」の長沼六男がそれぞれ担当。
1980年製作/91分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1980年12月27日
ストーリー
高知県土佐清水の近くにあるカツオ漁港の漁村久礼。カツオ船、第一福丸が大漁旗を掲げ入港している。下船する船員の中に純平の顔が見える。今年三月、中学を卒業するとすぐにカツオ船に乗り込んだ。最初は船酔いで苦しんだが、今はすっかり海の生活に慣れている。船をおりた男たちは、酒と女に明け暮れる。純平は二つ年上の恋人、八千代に「仲間と女を買ってくるから」と告げた。ツッパッているのだ。その夜、高知のバーで酒を呑む純平、勝、熊、政たち。女たちと部屋に消えていく仲間。純平はタオルで目隠しをして「八千代……」と呟きながら女に乗っていた。店を出た純平は八千代の家の前に行くと、屋根に小石を投げた。窓を開けた八千代は純平を見つけると、窓を閉めてしまった。夜が明け、窓を開けた八千代は、そこで純平が眠っているのを見てびっくりするのだった。双名島の神社境内で“チラ見せ祭り”という女だけの行事がとり行なわれていた。大事な亭主の無事と大漁を祈って、女の大切な部分を弁天様におがませる行事だ。八千代は夜中になると、一人、神社に行き、愛する純平のためにそれを実行するのだった。ある日、純平は二階の八千代の部屋にいた。口論となり気まずい雰囲気に包まれる。自分の非を認め、自分の方からキスをする八千代。下の座敷では父の千代亀が二人が一緒になってくれればと思っていたが、妻の多恵は、もう漁師の女房は沢山と反対した。九月の久礼八幡祭りの日、千代亀の家に第一福丸の船員たちが集まり宴会を開いている。八千代は純平を祭りに誘うが、彼は仲間と酒を呑むと皆の前でカッコつける。ヤケになって酒を呑みだす八千代。そんな八千代に、純平は「明日お前を抱いちゃる、駅で待っとるぞ」と叫んだ。翌朝、断わるつもりで八千代は駅で待っていた。そこへ現れた純平、グズグズする八千代を強引にラブホテルへ連れていってしまう。ホテルに入ったものの、何時間たっても、一向にらちがあかない。回転ベッドにあぐらをかきビールを飲む純平。壁に向かって正座して固くなっている八千代。「よし、今日は帰ろう。無理強いは嫌だからな」そう言って純平が腰を上げたとき、八千代はゆっくり立ち上がって後向きのまま服を脱ぎ始めた。茫然と見つめる純平。年が明け、二月半ば。初出漁に出かける第一福丸。見送る人々の中に八千代の笑顔がある。嬉しそうな純平。船上でカツオとの闘いが始まった。「純平、お前も一人前だ。釣ってもいいぞ!」今日でカシキ(めし炊き)は卒業だ。「海にカツオがいなくなるまで、釣りまくってやるぞ」純平は歓喜の声をあげるのだった。