同棲時代 今日子と次郎
劇場公開日:1973年4月14日
解説
「同棲」という愛のかたちを形成しながら、互いに傷つきあい、愛しあう二人の若者を妖しい美しさで描いた上村一夫の原作・劇画の映画化。脚本は「旅の重さ」の石森史郎、監督は新人の山根成之、撮影は「辻が花」の川又昂がそれぞれ担当。
1973年製作/87分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1973年4月14日
ストーリー
「ねえ次郎、このままのほほんと生きて行こうね」「ああ、それがいい」。女、飛鳥今日子は広告代理店に勤める21歳のO・L。男、江夏次郎は22歳になるかけだしのイラストレーター。二人は同棲中である。「同棲しない?」と誘ったのは今日子の方からであった。デザイン・スクールの同期生である二人が雑踏の中で久しぶりに再会した時、何となく心が通じあい、その夜、今日子は次郎に処女を与えた。そして、その日から二人は一緒に暮し始めたのだった。ある日、今日子は33歳になる会社の社長・上条にプロポーズされた。中年の魅力あふれる上条。しかし今日子は思う。「判らない部分の多い完成された男よりも、やることなすこと丸見えの未完成の男が私には愛しい」。ある雨の朝。同じアパートの住人の五十嵐の妻・澄江が死んだ。五十嵐夫婦はいわば今日子と次郎たちの先輩だった。彼等が同棲時代に終止符を打った時、子供を三度も中絶した妻の肉体は破壊されていた。その上、愛も冷えきっていた……。今日子と次郎が同棲して丁度一年目がやって来た。二人はささやかなパーティをやろうと約束したが、次郎が酔って帰って来たのは深夜だった。今日子の平手打ちが次郎の頬にとんだ。次郎はへラヘラ笑い、酒くさい体で彼女を無理矢理組みふせた。みじめになる今日子。だが、セックスのあと眠り呆ける次郎のポケットから、リボンをかけたプレゼントの小箱がこばれ落ちたのを見て、今日子は次郎への愛しさに満たされた。数日後。今日子は妊娠したことを知った。次郎はうろたえ、そして怒った。「そんなものを作るために同棲したんじゃないだろう!」この言葉に、今日子が反発すると、次郎は、怒りを露わに、部屋を飛び出した。次郎はその足で深夜まで飲み歩き、なじみのスナックのママで彼に好意を寄せている礼子を口説いて、彼女と寝た。ベッドの中でも次郎の頭が今日子のことでいっぱいなことを知った礼子は、彼を叱った。「そんな時は彼女のそばにいてやるもんよ!」次郎がアパートに帰ると、テーブルに置手紙があった。「ごめんね。子供は堕します。私はもうしばらく次郎と一緒にいたいのです」次郎は病院にむかって走った。力いっぱい今日子を抱きしめたいと感じていた。