帝都物語

劇場公開日:

解説

明治45年から昭和3年にかけて帝都・東京を壊滅しようと企む超能力者・加藤保憲と当時の著名人、渋沢栄一、寺田寅彦、幸田露伴らの戦いを描く。荒俣宏原作の同名小説第1巻から第4巻までの映画化で、脚本は「夢みるように眠りたい」の林海象が執筆。監督は「ウルトラマン(1979)」の実相寺昭雄、撮影は「蜜月」の中堀正夫がそれぞれ担当。

1988年製作/135分/日本
配給:東宝

ストーリー

明治45年。実業家・渋沢栄一は土御門家の陰陽師・平井保昌や物理学者・寺田寅彦らに協力を求め、ある計画を進めていた。それは「東京改造計画」といい、帝都・東京を軍事的にだけでなく霊的にも守護しようとするものだった。しかし、謎の魔人・加藤保憲がその計画の前に立ちふさがっていた。加藤は1000年前関東に独立国を築こうとして失敗し、謀反人として討伐された平将門の霊を呼び醒まし、東京を壊滅させようと企んでいた。そして加藤は将門の末裔・辰宮由佳理を霊媒として選んだ。平井や文豪・幸田露伴の努力により加藤の企みは潰えたかに見えたが、由佳里の胎内には恐るべきサイキック・パワーを秘めた生命が宿っていた。加藤との闘いに敗れた平井は大正12年9月1日を帝都壊滅の日と予言し、明治天皇崩御の日、自刃する。大正12年9月1日。大地震は起こったが幸田は死闘の末、加藤に傷を負わせた。結局、将門の怨霊は目醒めず、帝都破壊は不完全に終わった。そして東京は渋沢らの手により急速に復興していった。昭和2年。日本初の地下鉄道が開通しようとしていたが、加藤の放った魔物が妨害していた。寺田はその解決策として西村真琴が作った日本で最初のロボット“学天則”を利用。加藤は力を回復し再び帝都破壊を企むが、新たな宿敵が現われた。将門の命を受け、由佳里の兄・辰宮洋一郎へ嫁いで来た目方恵子である。加藤は由佳里に産ませた雪子を銀座の雑踏で誘拐し、将門の霊を呼び戻そうとする。しかし、実は雪子は加藤の子ではなく洋一郎と由佳里の間に産まれた子だった。洋一郎は自らの霊力で将門の霊を封じ、恵子はサイキック・パワーで加藤と死闘を繰りひろげた。春。銀座では“帝都復興式典”が開かれ、賑わっている。花見客のあふれる神田明神では易者姿の泉鏡花が加藤に似た軍服姿の男を見つけドキッとするが、人ごみにまぎれて行った。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
脚本
林海象
原作
荒俣宏
製作総指揮
一瀬隆重
企画
村井美登
宇田川和雅
花田良知
企画協力
西洋環境開発
製作
堤康二
製作協力
ウイズ
大王製紙
プロデューサー
飯泉征吉
ビジュアルプロデューサー
久里耕介
アニメーター
真賀里文子
撮影
中堀正夫
美術監督
木村威夫
美術
内田欣哉
装飾
安田彰一
コンセプチャル・デザイナー
H・R・ギーガー
イメージ・デザイン
椋尾篁
音楽監督
石井眞木
録音
瀬川徹夫
照明
牛場賢二
編集
浦岡敬一
衣裳デザイン
合田瀧秀
アソシエイト・プロデューサー
和田康作
助監督
服部光則
スチール
原田大三郎
特殊美術
池谷仙克
特美デザイナー
大澤哲三
特殊効果
菅野幸光
視覚効果
中野稔
ビジュアルスーパーバイザー
大木淳吉
スペシャル・メーキャップ
原口智生
全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

映画レビュー

3.0兎にも角にも、嶋田さん!!!

2022年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

難しい

萌える

DVDのパッケージの写真を見るだけでも「怖っ!!!」というほど。
 よくぞこんな俳優を見つけてきたものだ。
 嶋田さんはこの映画で新人賞をお取りになる位、劇場で知る人ぞ知る程度の知名度だった。
 けれど、相手役?の石田さんと比べても、たくさん出演されている日本が誇る超有名俳優の方々と比べても、嶋田さんしか思い出せないくらいのインパクト。

で、嶋田さんはこういう役柄だけかというと、
 『くちづけ』のとっても温和な知的障害を抱えている方の演技や、
 『謝罪の王様』での、国家間の信頼を取り戻す為に、ひたすら実直にまじめにバカげた動作を繰り返して相手の国への誠意を伝えようとする総理大臣、しかも自分の失敗ではなく、バカな国民・部下の尻拭いを”長”としての責任を全うするためにする誠実な方の演技
 と、演技の幅もとにかく広い!!!
 繰り返すけど、よくぞこんな方を見つけてきたものだ。

映画は・・・。
 ウルトラQ?が始まるの? 学天則とか妖怪物?とク―リチャ―のオンパレード。可愛かったり、おかしかったり。フィギアがあったら買っちゃうぞ!(特に学天則)
 特撮は、今のCGとかだともっと違う表現できたかもしれないけれど、時代を考えると、手作り感があったりして、笑いも含めて、まあ楽しめる。

これだけのシーンにこのセットを作ったかと唸るほどの贅沢。
 しかも、必要なシーンも多いけど、これって必要?もっと、どうにかならなかったの?というシーンもある。

雑学の大家、もとい博学の大家として名を馳せていた荒俣さんの原作の映画化。
 地脈とか将門の怨霊とか、『うしろの百太郎』を彷彿とさせるネタや、当時の七不思議みたいな特集にはよく出てきたものを、よくぞこれだけの物語にまとめてくれたというワクワク感や、
 歴史や国語の授業で習った方もたくさん出てきて、どんな活躍されるのかとワクワクしながら鑑賞。
 なのだけれど、途中、なんやそれ!!みたいな解決法もあるし、史実と違うし、それでも丁寧にそのくだりや心情描写がなされていたら納得したんだろうけど、う~ん・・・。
 (「オン バサラ~」って、お寺でお参りする時唱える言葉として仏像の横に書いてあるけど、陰陽師???)

いろいろなものをたくさん詰め込み過ぎて、…。なんでこの人がこういうことするの?という流れをしっかり描いていない。
 特に、ラストの主要な筋になる、というか、将門復活の顛末に関わる重要な部分が、あまりにも唐突で、「なんや、それ~(ノ-_-)ノ=」となる。辰宮と恵子、恵子と加藤の関係をそれとなくほのめかしておいて欲しかった。ワンショットで伏線を張る人もいるんだけどな。『ウルトラセブン』の監督、男女の関係を描くのは苦手だったのかな?

原作4冊分、明治~大正~昭和という長い年月を一気にまとめた物語だそう。(原作未読)
 それならこのような脚本になるのも無理ないかなと思う反面、登場人物が、あまり年をとった様でないから2,3年の物語に見える。途中で産まれた子だけ妙に大きくなっていた。

上に嶋田さんしか印象に残らないと書いたけど、原田さん、大滝さん、西村さん、玉三郎さん…とそのシーンだけ切り取るとうまい!!!という演技をなさっているんだけど、全体を見渡すと、そこに時間を割く意義があるのか?、撮りたいシーンだけ寄せ集めた? セットや大物俳優を使った関係で削れなかった?というシーンが多くて、 緩急のつけ方が悪くて間延びしている。

これだけの才能を集めたのに、活かしきれなかった大作。
それこそ、タイムマシンがあったなら、再提出を課したいよ。

それでも、神田明神?湯島天神?と懐かしさを醸し出し、
時折、加藤を鑑賞したくなる不思議な映画です。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
とみいじょん

3.0ぶっちゃけ構成が古くて話が全然分からん…のに、なぜか『すごい物を見...

2022年6月5日
PCから投稿

ぶっちゃけ構成が古くて話が全然分からん…のに、なぜか『すごい物を見た…!』感が強いのは、一重に嶋田久作のインパクトのおかげだし、実相寺監督の『なんか分からんけど、凄そう』みたいな演出があったから。
食べた感触はすごいけど全然お腹にたまらない麩菓子みたいな感じ。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
クラゲ男爵

4.0嶋田が演じる加藤保憲やギーガーが作製した護法童子といった強烈なイン...

2022年2月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

嶋田が演じる加藤保憲やギーガーが作製した護法童子といった強烈なインパクトはあるものの、ダークさが強調されずにファンタジックな仕上がりになったことこそ、実相寺の演出の妙であろう。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
御納戸色

4.0帝都物語を是非お読みになってから、本作をご覧ください

2021年12月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

読んでから観るか、観てから読むか

これは1977年の角川映画「人間の証明」の宣伝文句
小説が映画化されると、なんでもこれが悩ましいから、上手いキャッチフレーズです

角川ノベルから刊行されていますが、角川映画ではなく製作はエグゼ
この会社は当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった西武百貨店などのセゾングループの映画製作会社です
製作者の堤康二は、そのセゾングループの総帥堤清二の息子だそうです
そのセゾングループもバブル崩壊で解体されてしまいました
正に今は昔のことです

本作は必ず読んでから観るべきです
だって加藤保憲とは何者?、式神?龍脈?五芒星?
普通の人なら聞いたこともないワードが説明無しに使われて、奇想天外な物語が展開されるのですから理解不能な映画に確実になります
当然です

実相寺監督の独特の雰囲気や映像美を味わう目的としても、原作を読んでなければ意味不明でしかないでしょう

原作小説は1985年から1987年にかけて、新書版で全10巻、他に番外編2巻、外伝1巻が刊行されてベストセラーになっています
1987年には日本SF大賞も受賞しました

本作は本編10巻のうちの4巻までを映画化したものです

原作は大変に面白く、読みはじめたなら夢中になると思います
著者荒俣宏の博識ぶりには感銘を受けることでしょう
もしこの原作を少しも面白いと感じられないようなら、もう本作のことはお忘れ下さい
あなたとは合わない映画です

因みに、「銀河英雄伝説」の原作小説も1982年から1987年まで、本編の全10巻が刊行中でした
つまり「帝都物語」と同時平行で刊行されていた時期があったのです
なのでその頃は毎月「帝都物語」か「銀英伝」のどちらかが発売されているような状況になりました
ですので読むのに忙しいというか、嬉しい悲鳴状態だったものでした

本作は、なんといっても嶋田久作の演じた魔人加藤保憲のビジュアルイメージの破壊力が凄まじく、本作と言えば加藤保憲!となります

ですから正直成功した映画とは言いかねる作品でありながら、続編的な映画が2本、OVAまで作られています
漫画版も3人の作者からそれぞれ発表されていますし、加藤保憲のキャラは、「勇者警察ジェイデッカー」のキャトー・ノリヤスなど、様々な他の作品にまで登場するほどです

しかし加藤保憲だけに目を奪われていていてはもったいないのです
改めて観れば、本作には忘れられるにはあまりにも惜しい、もっと正しく評価されるべきことがあると気づかされます

それはまず、特撮と式神などのクリーチャーです
特撮の巨匠レイ・ハリーハウゼンの世界的名作「シンドバッド黄金の航海」に登場したホムンクルスを思わせる大きさと姿形なのです
そしてその動きはハリーハウゼンのダイナメーションを再現したコマ撮りアニメーションなのです
終盤には、その作品に登場した超有名な6本腕の「陰母神カーリー」まで登場するのです!
ハリーハウゼンへの大きなリスペクトを感じます
これに気づかないようではオタクとは名乗れません

「エイリアン」のデザインをして世界中に知られるようになったH・R・ギーガーのクレジットもありますが、終盤に空中を飛び回り回転ノコギリのように薙刀の柄を切断する護法童子のみ彼のデザインです

特撮監督のクレジットはないのですが、絵コンテとのみ記載されている樋口真嗣さんが実際は特撮を担当されたようです

東宝は配給だけなのですが、東宝特撮の系譜に入れられるべき作品であると思います
東宝特撮の怪人路線の末裔作品
それが正しい位置付けであると思います

そして、昭和2年の銀座が再現されたオープンセットの目を見張る出来映え
CGがない時代にガチンコで此処まで再現したのですから驚くべきものです!
ここまで巨大で正確さを徹底されたオープンセットは他には思い当たらないほどです

そして、忘れてはならないのは原田美枝子です
終盤の加藤保憲との最終対決に向かうシーン
月明かりの下、白袴の巫女服に朱色の襷をかけ、薙刀を持ち白馬に跨がるのです
凛々しく、そして美しいその姿のインパクト!
彼女の清い白い肌、正しい意志の強い目と眉、その美貌に相応しい説得力があります
黒澤明監督の「乱」での楓の方にも負けない印象があります
嶋田久作の加藤保憲だけが取り上げられて忘れてられているのは余りにもったいないことです!

彼女の役の辰宮恵子は、相馬俤神社の巫女でした
相馬は東日本大震災で起こった原子力災害の非難区域のすぐそばの所です
そういえば2015年の秋葉原通り魔事件の犯人の名前は加藤でした
そしてコロナの緊急事態宣言で無人となった銀座通りの光景
あれもこれも加藤保憲の仕業であったような気になって来ます
そぞろ地震が増えてきています
何者かが龍脈を・・・なんて妄想に浸れます

帝都物語を是非お読みになってから、本作をご覧ください

コメントする (0件)
共感した! 3件)
あき240
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る