多羅尾伴内

劇場公開日:

解説

七つの顔を巧妙に使い分け、悪を退治する私立探偵の姿を描く、比佐芳武原作の同題名小説の映画化。脚本は「日本の首領 野望篇」の高田宏治、監督は「トラック野郎 男一匹桃次郎」の鈴木則文、撮影は「発情痴帯」の出先哲也がそれぞれ担当。

1978年製作/104分/日本
配給:東映
劇場公開日:1978年4月8日

あらすじ

超満員の観衆で湧き返る東京K球場で日本シリーズ第五戦が行なわれていた。得点は四対二。九回裏日報レッズ最後の攻撃で、バッター高塚は逆転満塁サヨナラホームランを打つ。ゆっくり一塁ベースへ走り出した高塚は、突然倒れ、死んでしまう。検死の結果、アイヌが熊狩りに用いる猛毒を使った針による他殺と判明する。翌朝、新聞社のカメラマン川瀬も同じ手口で殺された。川瀬の妹ゆう子は伴内に真相究明を依頼する。信愛医大理事長木俣あてに二度にわたり脅迫状が届く。これを知った伴内は白バイの警官に扮し、木俣の長男良教を捕え、誘拐に見せかけ、木俣から高塚、ルミ、良教の関係を聞き出し、三人が去年の夏、北海道へ行き、アイヌの若い男と幼児をひき殺した事を知る。北海道へ渡った伴内は、その若い男の妻であり幼児の母であったのが、木俣の秘書である真砂子であることをつきとめた。総ての事件を真砂子が仕組み、木俣を繰っている事を知った伴内は、真砂子にこれ以上罪を重ねる事を避けさせようとするが、真砂子は固く説得を拒んだ。ある日、真砂子は狐男に襲われ、瀕死の重傷をおう。良教と木田の娘、礼子の結婚式場で騒ぎが起こった。ウェディングケーキにナイフを入れた新郎新婦は驚ろきのあまり言葉を失なう。ケーキの切れ目から真赤な血がにじみ出て、ホールの照明が消え、どこからともなく女の呪うような声が聞こえてくる。天井に近い一角から、二つの灯りを持った男が現れた。男はおもむろに手を顔面にのばし、変装を解いていく。藤村大造と名のるその男は、今までの事件を全て解決し、闇の彼方へ消えていった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

2.0ある時は片目の運転手、ある時は流しの歌い手、…そして、またある時は怪人セムシ男、またある時は私立探偵多羅尾伴内、しかしてその実体は、正義と真実の使徒藤村大造!

2025年3月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

WOWOW「没後10年 鈴木則文監督特集」放送にて。

なんとも、東映らしく鈴木則文らしい犯罪活劇。脚本は東映になくてはならない人、高田宏治(大映出身)。
小林旭の一枚看板の次にクレジットされているのは〝八代亜紀 夏樹陽子〟である。
夏樹陽子は重要なキャラクターだが、八代亜紀はご本人役(と言っても、スナックの歌手)で一曲歌うだけの出番で、物語になんら関係しないという…。
キャッツ★アイ(ピンクレディのお色気版のようなデュオ)とアン・ルイスもご本人役で歌謡ステージの場面で登場する。で、彼女らも大きくクレジットされているのだ。

片岡千恵蔵が演じた「多羅尾伴内シリーズ」は、比佐芳武脚本、松田定次監督で1946〜48年に大映で4本が製作された。
チャンバラから現代劇に片岡千恵蔵を転換させるための企画で、刀を拳銃に置き換えているから、主人公の藤村大造は悪党に銃をぶっ放す探偵なのだ。
同時期(1947年)に東映(東横映画)では、同じ比佐芳武脚本、松田定次監督で片岡千恵蔵が金田一耕助を演じた『三本指の男』が製作されており、大映が多羅尾伴内シリーズを打ち切った後1953年から東映が再開(片岡千恵蔵と比佐芳武は大映から東横映画に移籍)させ、金田一耕助シリーズと並行して製作されている。
1967年には高城丈二主演でテレビシリーズ「七つの顔の男」が放映されている。
1977年に小池一夫と石森章太郎によって漫画「七つの顔を持つ男 多羅尾伴内」(二代目多羅尾伴内との師弟物語)が少年マガジンで連載開始されたことを受けて、東映が小林旭主演で復活させたのが本作だ。
〝原作 比佐芳武 劇画版 小池一夫 石森章太郎〟とクレジットされている。
ストーリーは『多羅尾伴内シリーズ 隼の魔王』(‘55)のリメイクということになっていて、漫画版は踏襲されていない。
本作のこのクオリティだから、同年に2作目『多羅尾伴内 鬼面村の惨劇』が製作されて、シリーズ(とは言えないが)は幕を閉じた。

アバンタイトルは和製フィルム・ノワールの雰囲気満点なのだが、小林旭のムード歌謡の歌声に乗ってタイトル表示からスタッフ・キャストロールが展開する。あぁ、台無しだなぁ…と思ったら、本編もそんな調子のチグハグさで進んでいくのだった。
この映画の一番良い点は、夏樹陽子だ。
夏樹陽子は綺麗で、本当に色っぽい。
彼女は悲劇のヒロインであり犯罪者だ。お色気パートも担当して、スプラッタまでやってくれている。
竹井みどりもヒロインとして登場するが、彼女はまだお色気路線に移行する前のようだ。

漫画よりも漫画っぽいストーリーが、割とポンポンと進んでいくから、観てはいられる。
片岡千恵蔵の頃より変装のエフェクトが格段に進化しているので、小林旭はちゃんと七変化するから逆に彼の魅力で映画を引っ張っていないという皮肉が起きている。それを、手練れの俳優たちが脇を固めて支えている感じだ。
最後の解決シークェンス、私立探偵が拳銃を撃ちまくっているのを、警察は催事場の外で黙って待っていたのか。藤村大造の詰問で主犯が罪を認めると脱兎のごとく踏み込んできた警察は、なんと逮捕状を持っていた。分かってたんかい!

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kazz