大誘拐 RAINBOW KIDS

劇場公開日:

解説

大金持ちの老女誘拐を実行した三人組の若者とそれに関わる人々を逆に手玉にとる老女の姿をユーモラスに描くブラックコメディ。天藤真原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は「ジャズ大名」の岡本喜八。撮影は「YAWARA!」の岸本正広がそれぞれ担当。

1991年製作/119分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1991年1月15日

あらすじ

ある夏の日の朝、大阪刑務所に仲間の正義と平太を迎えに行った健次は、二人に誘拐の計画を話す。最初は反対する二人だったが、健次のねらいは紀州一の山林王・柳川とし子刀自。さっそく計画を実行する三人。ところがこのおばあちゃんただ者ではなく、やっと山中で拉致に成功した彼らに向かって和歌山県警本部長・井狩の知るところとなれば逃げるのは難しい、と落ち着いた表情で論じ始める始末。こうして三人は刀自に用意させた家に身を隠すことになる。この家は柳川家の元女中頭だったくーちゃんことくらの家だった。そのころ、和歌山県警本部では“刀自誘拐”の連絡が届き、刀自を生涯最大の恩人と敬愛する井狩が火の玉のような勢いで捜査に乗り出して来た。連絡を聞いた刀自の子供たちも次々と柳川家に到着。騒然とした空気の中、刀自救出作戦が開始された。一方、三人は隠れ家で身代金要求の策を練っており、その額が五千万円だと知った刀自はいきなり表情を変え、「大柳川家の当主なんだから百億や!」と三人に言い放つ。それによって誘拐犯と刀自の立場は完全に逆転してしまい、事件はいつしか刀自と井狩との知力を尽くした戦いになっていた。そしてついに身代金の受け渡しの日がやってくる。それは前代未聞の全世界へ生中継されるにまで至っていた。こうした大騒ぎの中で百億は犯人に渡され、事件は終わった。三人組はそれぞれの道を歩んでいき、数日後、柳川家に戻った刀自の前に事件の全謀を察した井狩が姿を現わし、刀自はその真実を打ちあけるのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第15回 日本アカデミー賞(1992年)

受賞

監督賞 岡本喜八
脚本賞 岡本喜八
主演女優賞 北林谷栄

ノミネート

作品賞  
主演男優賞 緒形拳
助演女優賞 樹木希林
音楽賞 佐藤勝
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映画レビュー

4.5弱点も長所にしてみせるベテラン監督の剛腕を見た

2024年12月31日
PCから投稿

誘拐された地主のおばあさんが、誘拐グループを指揮して巨額の身代金を奪おうするコメディであり、それが岡本喜八がこだわり続けた反戦、反権力へと繋がっていく力技は胸がやはりすくような痛快さがある。

改めて見て感じたことは、この時代の若手俳優の下手さ(特に風間トオル)。北林谷栄や緒形拳など、とにかく盤石の俳優陣が集まっているのだが、若手だけはいささか頼りない。しかし演技が下手であってもキャラの人柄みたいなものがちゃんと表現されていれば、観客は素直に応援できるのだ。役者の頼りなさとキャラの頼りなさが絶妙にシンクロしているのも、不思議な説得力に繋がっている

そのときそのときの座組や予算といった諸条件をプラスに転じさせるテクニックと自信が監督にあれば、どんな弱点だって長所になりうることを証明している一本だと思う。

2024年の岡本喜八生誕百周年の一環で、またフィルムで観ることができたことも本当にありがたかった。

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村山章

4.0【”私のお山・・。”今作は誘拐された老婆が、誘拐した根は善良な若者3人や、警察、そして”お国”まで手玉に取る痛快なる反権力ヒューマンコメディである。】

2025年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

知的

幸せ

■紀州の山林王で82歳の大富豪・柳川とし子(北林谷栄)が、虹の童子(レインボー・キッズ)と名乗る若者3人組に誘拐され、身代金5000万を要求される。
 すると、老婆はその額を聞いて激昂し、自ら身代金を100億円にするよう犯人に逆要求する。
 その老婆を自らの恩人と慕う鬼の県警本部長、井狩大五郎(緒形拳)は、そんな実情も知らずに捜査を開始する。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・実に小気味よい、反権力誘拐コメディ映画である。

・老婆は、若者三人組を手玉に取りながら、実は10キロも夏痩せした自分の体重を見て、自分の最期を感じ、一芝居打ったのである。
 そして、老婆が、夏場になると夏痩せする意味合いも、じっとスクリーンを見ていればよく分かるのである。

・自分が死ぬと子供達を戦争で死なせた”お国”に大金を取られるために、身代金を100億円に上げ、遺産相続で国に取られるお金を減額し、更に若者三人組を更生させ、頼りない子供、孫たちの結束も高める一石三鳥の計画は、ナカナカ見事である。
 この老婆の計算が、直ぐに分かった貴方もナカナカである。

<今作は、誘拐された老婆が、誘拐した根は善良な若者3人や、警察、そして”お国”まで手玉に取る痛快なる反権力のヒューマンコメディなのである。>

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NOBU

「それはおかしいのでは」と突っ込もうと思ったら

2024年11月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その12 しんゆり映画祭 - その6

 若いチンピラ3人に誘拐された山林王のおばあちゃんがいつしか誘拐犯の上に立ち、自身の誘拐事件を振り回し始めるというお話。コメディだから「そんなバカな」と言う展開もあるが、「それにしても、そこはおかしいんじゃない?」と突っ込もうと思ってたら、「な~るほど、そう来るのか」とまんまと裏をかかれた。岡本監督の軽快な展開だからこそ生きるバカバカしさと戦争への怒り。
 上映後の春日太一さんのお話は、本作を日本映画史と岡本喜八個人史の繋がりの中で論じられ非常に分かり易く、安定の面白さとお得感。

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La Strada

3.5錆びない面白さだけど

2024年7月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

楽しい

知的

数十年ぶり観ました!テンポも良いし、キャストも素晴らしい。だだ初めて観た時の印象が強過ぎて、記憶の中で美化していたのだろう。思っていたよりアッサリと終わってしまった

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おのもん