青春PARTII
劇場公開日:1979年2月10日
解説
自分でも知らない競輪選手としての適性を知り“走る”ことへの執念に燃える一人の青年と、車券で人生の逆転を賭ける中年男の、二つの世代を通して現代と人間を描く。主人公の競輪選手としての適性を見出す中年男に扮する舟木一夫は、昭和四十四年の松竹映画「いつか来るさよなら」以来九年振りの映画出演。脚本は「桃尻娘 〈ピンク・ヒップ・ガール〉」の金子成人、同作の小原宏裕と中川好久の共同執筆、監督も同作の小原宏裕、撮影は西山東男がそれぞれ担当している。
1979年製作/109分/日本
配給:ATG
劇場公開日:1979年2月10日
ストーリー
有田勇(十八歳)は自らの青春を走ることに賭けていた。佐世保の高校を卒業した彼は父親や兄の反対を押し切って体育大への受験をめざし、アルバイトを始めた。市内の造船所で臨時工として働くことになった勇は、ある日、ロックハウスで踊り狂う、孤独な少女、明子と知り合った。その頃、不況の波が街全体をおおい、勇の父が経営する鉄工所も人員整理の声が聞かれ、「家を継ぐのはお前しかいない」という銀行員の兄の身勝手な押しつけに勇は腹立たしくてならなかった。そんなやるせなさを勇は明子の身体にぶつけるのだった。しかし、勇は不況のため会社をクビになり、明子は妊娠してしまい、おろすにも金がなく、彼は窮地に追いこまれた。そんなときに、銭湯で見た一枚のポスターが勇の人生の進路を変えた。“競輪学校生徒募集”。忘れかけていた“走る”ことへの思いが勇の肉体を奮いたたせた。勇はかつての中学の教師であり、競輪に人生哲学を持つ植原純平に相談をもちかけた。純平の助言で競輪選手になることを決意した勇だが、学校での厳しい練習に、能力の限界を感じるが、明子からの手紙に、走ることへの決意を新たにするのであった。トレーニングに励む勇は、大学出のエリート山下に対抗意識を燃やしていた。学校を卒業した勇は、デビュー戦から正攻法一本槍で六連勝したが、純平は脚力のいる先行法では勝ち続けることが出来ないことを知っていた。十連勝を目前にして勇は純平の予測通り無残に潰された。そのショックは大きかった。走ることに執念を燃やし始めた勇の前に大きな壁がやってきたのだ。そして、ライバル山下との対決もせまってきた。宿命のレースは予想通り強烈な先行取りの戦いとなった。山下との先行争いに夢中になった勇は、学校時代の親友、北原を落車させてしまった。勇は山下に勝ったものの、レースの着順を告げるアナウンスは、勇、山下の失格を告げていた。無謀な走行で北原に怪我させてしまった勇は、自転車から降りることを決意して、北原を見舞いに行くが、そこで、北原の兄でA級一班の誠一が、「お互いに走ることしか能のない男だよな……」と勇に優しく話すのであった。誠一の言葉に勇気づけられ、故郷に帰った勇は、自分には走ることしか残されていないことを悟り、無人の佐世保バンクを走り続けた。そして、それは勇の青春パートIIの始まりでもあった。