砂の器のレビュー・感想・評価
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観ずに死なないでよかった
盛り沢山の贅沢な映画
映画でしか表現のしようのないものを表現した小説を超越した価値と意義がある本当の名作
4Kリマスター版で観ました
鮮明な映像はレンズの味だけでなく、不思議にもスクリーンに投影される空気感までを感じました
そして昭和の映画館の匂いまでも
なにより5.1chサラウンドでの音響が明瞭で宿命の音楽の破壊力が遺憾なく発揮されています
圧倒的な感動で号泣しました
日本人の琴線に触れる映画なのだと思います
国際的にこの感動を共有できるのかというと疑問です
海外の人々には何割も割引いてにしか分かってもらえないだろうと思えます
それでも良いのです
日本に生まれたということ、日本に育って生きているということ
その者だけが理解できる、まさに宿命の映画なのです
神がかっているとしか言えない見事な構成です
冒頭の音楽から、ピアノ協奏曲「宿命」の完成に向けて旋律が徐々に完成に向かい、終盤での初演奏で完結する物語です
その音楽の中に英良の回想、捜査の進展が全て内包されているのです
主題はあくまで放浪の旅の回想シーンにあります
そのシーンの日本の四季の中にある父子の困窮の姿こそ日本人の魂を震わせるのです
劇中に様々に編曲された宿命の旋律が、クライマックスに劇的に盛り上がっていくさまは正に交響曲です
問答無用の破壊力なのです
砂の器
それは何も入れられない
直ぐに脆く崩れさる形だけのもの
冒頭と劇中の映像表現もあまりにも美しく見事でした
日本人にとって永遠の名作でしょう
映画でしか表現のしようのないものを表現した小説を超越した価値と意義がある本当の名作です
なぜ殺したのか?
国立療養所に入ってから24年間、
息子にひと目会いたいというただ1点を望んでいたという加藤嘉が、
立派に成長した息子の写真を見せられたときの慟哭、
全身を震わせ「そんな人、知らねぇ!」と言い放つシーンは、
父子の放浪シーンの美しさ、悲しさ以上に心に残った。
どんなことがあっても絶対に手放したくなかった息子と
最終的に分かれる決心をしたのは、緒形拳から言われた
「秀夫の将来はどうなるんだ?」というひと言であったと思う。
そのときの、ハッとした加藤嘉の表情。
そこには、満足のいく養育はできないという意味に加えて、
ハンセン病患者の息子という業を背負わせたままでいいのか、
という意味があったのだと想像する。それで父は息子を手放した。
息子もそれを分かっていたのではないかなぁ。
だから緒形拳の家から唇を噛み締めて逃げた。
あそこにいたら「ハンセン病患者の息子」のままだから。
父に報いるためにも、それまでの人生を絶対に絶対に
捨てる決意をしたのではないか。
で、24年後。なぜ恩人である緒形拳を殺したのか。
しらばっくれたらよかったじゃない?
単にわが身がかわいい、利己的なヤツじゃない?
いやいやいやいや、そうではなく。
自分は何が何でも別人として生きなければならない、
つまりは、
「ハンセン病患者の息子」であってはならなかったのかなと思う。
父と息子の互いへの愛、思いとともに
映像では語りきれないほど当時の社会にあった
ハンセン病への壮絶な差別を想起させる。
以上、心揺さぶられる加藤嘉の名演より想像。
残念ながら加藤剛の演技からは特に何も感じられず。
緒形拳すばらしい。
渥美清、笠智衆、菅井きん、圧倒的存在感。
夏純子のホステス、春川ますみの女中も地味に深く心に残る。
主役?の刑事2人の演技には目をつむるしかない。
あれこそが丹波哲朗の味なのかもしれないが私には合わないかな。
映画音楽
日本映画において、ここまで映画音楽を効果的に使った演出は見たことがない。
過去回想シーンで流れるあの宿命。ただのメロディでもない、音楽の中で大きい波がゆっくりと、しかし激しく動く。彼の過去や感情と完全にリンクした宿命は、セリフが全くないシーンでも役者の代わりに語るようだ。
その演出は観客の心を動かし、どんどん映画の中へ引き込んでいく。演奏シーン、回想シーン、捜査シーンをうまくカットバックで演出している。
また映画そのものについて考えるとすれば、ハンセン病という難しいテーマと真っ向から向き合う映画でもある。
ただの犯人探し映画ではないのだ。
戦後の日本の問題が映画のそこら中に散りばめてあり、現代の映画には見ることができない映画である。
見終わったあと観客に問いかけるような演出も良かった。
日本映画最高峰の映画と言えるだろう。
じゅんぷうまんぱん
中学生の頃、ハンセン病や社会派サスペンスの意味も知らずに映画館へ観に行った。丁度推理小説が面白くなってきた年頃でもあり、江戸川乱歩ファンから脱皮したかったこともあって大人向けの推理小説にチャレンジしたかったのです。その映画がデジタル・リマスター版として甦った。リピートといっても30年ぶりの鑑賞になるのです!
当時はまだ差別語として確立していなかったため、“ライ病”と堂々と言っており、同じ年に公開されたスティーヴ・マックィーン主演の『パピヨン』でもライ病と字幕に書かれていた。中学生にはその病気の重さが当然理解できるはずもなく、単にサスペンスとしての楽しみかたしかできなかったものです。しかも同級生は誰も観てない・・・
石川県の風景も登場するので、劇場内ではざわざわし始めました。「あれは山中温泉よ」などといった声も聞こえてくる。島根県の出雲亀嵩などは実際の地名なのに、石川県は上沼郡大畑村という架空の地名なのだ。車は白山方面へ進み、親子の故郷となる村に到着するのですが、多分岐阜県白川郷だろう。
大人になってから観ると、なぜこうも感動できるのでしょう。巡礼のような迫害された親子の旅。この旅のシーンが何の説明もなく、加藤剛が交響曲「宿命」を指揮するシーンとオーバーラップし、彼の生きた人生の苦悩と父への想いが音楽の中に溶け込んでくるのです。真っ赤な夕陽の背景を基調として、立ち寄る先でいじめられる親子。ノスタルジーを通り越して、美しい日本の風景の中でも弱者を虐げる心の醜さが浮き彫りにされる。そうした過酷な親子の前に現れる聖人のような男。この辺りで涙腺が緩みっぱなしへ・・・
そして体が震えるくらいに号泣させられたのは加藤嘉の演技。息子に会いたいけれども「知りません」と言うしかない心の葛藤と止めようのない慟哭。劇場でしか味わえない悲しみの空気を感じました。
残念なのは、丹波哲郎と森田健作。彼らの二人だけの会話はなぜか全てアフレコっぽい。一本調子の大霊界男と、声が裏返りそうな「吉川くん」男。そのままの録音だとかなり聞き取りにくいのでしょう。そして“順風満帆”だと思うけど“じゅんぷうまんぽ”とおっしゃった刑事。それでも、島田陽子の初々しいヌードのおかげで加点すると、満点になってしまいます。
2005.11 金沢コミュニティ映画祭にて
良かった、としか
普通、映画は一回観たらしばらくはもういいや、となるものだけど
これは何度でも観れる。
ミステリー、サスペンス、スリラー、全てが詰まっていて、
最後にはヒューマンで〆る。
丹波哲郎さんの演技が素晴らしく、あまりにすごいので、
それまで名前しか知らなかった私は何て無学だったのだろうと自分を恥ずかしく思った。
父親と息子の絆というものを題材としたものは、何故こんなに惹きつけられるのだろう。
映像美も美しく、それもまた魅入ってしまう。
...
★ミステリ・・・謎解き
★スリラー・・・スリルもの
★サスペンス・・・緊張感をあおるもの
後半の展開に心の準備が…。
宿命…日本映画屈指の名シーンに泣く!
DVD(デジタルリマスター2005)で鑑賞。
原作は未読。
蒲田操車場で発見された、身元不明の惨殺死体。手掛かりが少ない上、被害者の身元も一向に分からず、捜査は早々に暗礁へ乗り上げてしまいました。そんな中、偶然聞き込んだ「カメダ」と云う言葉が、真実への鍵を握っていて…
本作は決して、単なるミステリー映画のままで終わることはありませんでした。刑事たちが靴底を擦り減らし、文字通り日本中を駆け巡った執念の捜査の果てに突き止めたのは、ひとりの青年が背負った壮絶な宿命の物語でした。
犯人の動機ははっきりと劇中では明言されません。ラストシーン、交響曲「宿命」をバックに綴られる、ある父子の苦難の道のりがその解釈を促しているように感じました。小説では表現出来ない映画ならではの表現手法で、心が抉られるほどの悲痛と哀切が浮かび上がって来ました。美しい四季の風景と共に映し出される旅路は、その時間の長さを表しているようで、余計悲痛でした。日本映画屈指の名シーンだな、と…
過去の露見を恐れたがために、殺人を犯してしまったと思われる犯人ですが、それほどまでに彼を陥れてしまったのは、子供の頃に経験した壮絶な差別と偏見故だなと感じました。犯行を決断するまでには、その胸の内には様々な想いが去来したに違いなく、一言で言い表せないような感情の複雑な交錯があったのだと想像すると、心が押し潰されそうでした。
何年、何里にも渡る過酷な経験を共有したからこその、切っても切れない「父子の絆」と云うか、ふたりの繋がりの悲しいまでの強固さに、強く胸が締めつけられました。
[追記(2021/05/06)]
善意は時に、された側にとってはとてつもない悪意となる。
それを初めて気づかせてくれたのが本作でした。決して二元論で片づけられない人間の心の本質に迫っていて、何度観ても深く考えさせられる名作だと改めて思いました。
[以降の鑑賞記録]
2019/03/04:Blu-ray(デジタルリマスター2005)
2021/05/06:Blu-ray(デジタルリマスター2005)
親と子の宿命
出色の 加藤 嘉の演技
今年 加藤 剛 が亡くなり、追悼の意味でも視聴した
戦後を代表する、二枚目俳優だった
脚本陣も 豪華で、物語は 無駄なく語られる
色々な俳優が 出演していて、懐かしい思いで見たが、千代吉を演じる 加藤 嘉に心を揺さぶられる…
会心の演技では ないだろうか?
出色の出来である
芥川の音楽は やや甘ではあるが、日本の原風景の
四季の中を 巡礼(実際は放浪なのだが…)の様に
歩き続ける親子にかぶさり 涙を誘う
(加藤 嘉の歩く姿が また!)
1974年の映画で ハンセン病への過去の無理解
を 語っているが、
1996年まで「らい病法」が存続したのは、何故? (新規患者もゼロなのに… )
また キリスト教が比較的理解を示していたと、記憶する
(後年、様々な宗教の影響力行使も指摘される…善意からの行為ばかりで無いことが、やり切れない…)
映画に描かれたように、人間の(行政、宗教の)
冷たさも、実感する
関係ないが、加藤 嘉が 痴呆気味の老人役で、
モスクワ国際映画祭で最優秀主演男優賞を取った
「ふるさと」を見てみたい!
戦後 左寄りの人であったが、彼の多難な人生が、
その演技力に 更に 深みを与えている様な気がする
また、業を感じるさせるところも、凄い
笠 智衆が 平穏の、加藤 嘉が 悲運(非業)の 老人を演じたら 完壁なのが わかる
(そして 悪業も、ド迫力!)
昭和のオールスター映画
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