昭和枯れすすき
劇場公開日:1975年6月7日
解説
帰る故郷のない天涯にたった二人の兄と妹の心の亀裂と愛憎を描く。原作は結城昌治の「ヤクザな妹」。脚本は「わが道」の新藤兼人、監督は「砂の器」の野村芳太郎、撮影も同作の川又昂がそれそれ担当。
1975年製作/87分/日本
原題または英題:The Perennial Weed
配給:松竹
劇場公開日:1975年6月7日
ストーリー
原田は新宿警察署の刑事をしており、洋裁学校に通っている妹の典子と二人きりで暮している。この兄妹が故郷の青森を離れて東京に出てきたのは十二年も前だった。母は男と駆け落ちし、父は酒を飲んで事故死したために、兄妹は孤児同然で上京して来たのたった。その頃小学生だった典子も、十九歳になっている。ある日原田は先輩刑事の井島から、典子がチンピラの吉浦とつき合っている事を知らされた。吉浦は風俗嬢のトシ子のヒモで遊び人である。原田は典子を問いつめると、典子は既に洋裁学校を辞めてスナックで働いている、と答えた。典子がヤクザのような女になった理由は、彼女が初めて体まで許した中川という金持ちの息子にオモチャにされていた事が分ったからである。捨てられた典子は、中川に復讐するために、ヤクザの吉浦を利用しようとしていたのだ。そんなある日、吉浦が殺された。その死体のかたわらに典子が中川からもらったネックレスが落ちていた。新宿警察署から柴崎捜査課長以下、原田ら八名のベテラン刑事が動員された。原田の苦しい毎日が始った。容疑者としてトシ子、典子、中川が捜査線上に浮かんだ。原田は精力的に動き廻り、事件が深奥に入れば入るほど、原田と典子との感情の亀裂も深くなっていった。そんな疲れきった原田が求めるのは、居酒屋「ひさご」の雇われ女・民江の胸の中だった。捜査中の原田が見たのは、金持ちの中川の傲慢さ、トシ子の吉浦に対する愛憎、そして典子の不可解な娘ごころだった。原田は遂に妹の手に手錠をかけた。その時、電話が入った。原田が受話器をとると、女の声で「吉浦殺しの犯人を知っています」と言った。原田は直感で声の主はトシ子だと知り、急拠トシ子を訪ねた。執拗に真相を問い正す原田に、トシ子は自分が吉浦を殺した事を告白した。数日後、刑事を辞職した原田は、典子とともに新天地を求めて大阪へ旅立った。