下町の太陽

劇場公開日:

解説

「あの橋の畔で」の山田洋次と「九ちゃん音頭」の不破三雄、熊谷勲が共同で脚本を執筆、「二階の他人」の山田洋次が監督した青春ドラマ。撮影は「無宿人別帳」の堂脇博。

1963年製作/86分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1963年4月18日

あらすじ

荒川の流れにそって貧しい家並が密集している東京の下町、寺島町子は化粧品工場の女工として働いている。母は亡くなり父、祖母、弟二人の家庭は明るく平和である。同じ工場で働く恋人の毛利道男は丸の内本社に勤めるサラリーマンを夢みて、正社員登用試験の勉強に励んでいた。毎日の通勤電車にいつも一緒に乗り込んで町子を見つめている不良っぽい工員たちがいた。彼等は北良介たちで、町子の弟健二ともつき合いがあるという。その健二が万引事件で警察沙汰を引きおこしたので、町子は鉄工場の良介を訪ねた。彼は健二を理解しており町子の危惧に背を向けて一心に機械と取り組んでいた。その姿に町子は思わず感動をおぼえた。その頃、正社員登用試験の結果が発表されたが、道男は次点で不合格となり、自信満々だっただけにショックは大きかった。同僚の金子が要領がよくて合格したのを散々コキおるす道男の心には町子の慰めも通ぜず、二人の間には空虚な数日が流れた。公会堂で開かれたダンスパーティの夜、良介は町子を誘って外に出ると前から好きだったことを告白したが、彼女に恋人がいることを聞かされて淋しそうに帰って行った。数日後、颯爽と自動車を運転していた金子は老人を轢ね、これを道男が会社に連絡したため金子の正社員登用は取り消され、道男が採用されることになった。道男は早速町子と逢って結婚の約束を急いだが、町子は道男のとった態度を素直に受けいれることが出来なかった。町子は彼に言った。「あなたは結局は下町を出て行く人よ、でも私はここにいたいの、いつまでも」やがて、下町にまた太陽が昇って町子は通勤の満員電車にゆられている。その片隅に真剣なまなざしの良介がいた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

このチマチマした現代劇は語る「貧乏人は麦を食え!」

2025年5月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.5揺れる想い

2025年4月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

幸せ

YouTube 松竹シネマPLUSシアターにて鑑賞
本日まで配信

倍賞千恵子さんが、現実と未来の差に、揺れてる女性を丁寧に演じている。
近所の人たちがちょっとガサツで、ちょいとイライラするけど、
山田洋次監督作品だから、このくらい想定内ですね。
東野英一郎さんの、お子さんを亡くして、心も無くした演技が素晴らしい。

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七色姫

4.0下町にふりそそぎ輝く太陽の光を受けて若者達はどこへゆく

2025年4月9日
PCから投稿

日本がどん底から這い上がろうとしていた時代、
東京の下町で一生懸命に生きる人々を描いた物語。

町の工場で働く町子はある疑問を持ち始めていた。毎日汗水垂らし働く自分や同僚の未来、下町を抜け出して団地に住む夢、女にとって結婚は幸せなのか、希望の終着地点はそこに有るのか、戦争を生き抜いた老人達は陽だまりの中で笑っている、工場や車の排気で濁る地上の空気、地上で生きる自分達の夢は確かなのか、何が正解で何が間違いなのか、手探りの毎日と見えない未来に揺れる心があった。

賠償千恵子演じる町子は笑い
家族の問題と恋の行方に悩む。
それでも彼女は明るく生きる。

物語は結末を見せないで終わる
いつもの町子の姿を映し終わる
このあと彼女がどんな恋をして
どんな結婚生活を送るかわからない。

山田洋次監督は若い彼らを通し
幸せや、やり切れなさ、残酷さ、
そんなものを当時の日本人に見せた。
同時に未来に生きる僕らに教えた。
日本にはこんな時代があったことを。

タイトルの「太陽」の意味を考えてみた。
太陽は下町で明るく生きる町子ではなく
あの下町に降り注ぐ光を受け生きる人
未来に進もうとする若い人たちだと。

「下町の太陽」
降り注ぐ光は同じでも
受け取る人で意味は違い
ある人には活力となり
ある人には無でしかない。

映画は現実を映している。
埃っぽく匂い立つあの辺り
今はあの辺りの面影はなく
20代の当時の出演者は
今は80歳を過ぎている。

そして

東京スカイツリーは
あの辺りである。

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星組

5.0本作がなければ、山田洋次ワールドすべてが無かったかも知れない

2020年5月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1963年昭和38年4月公開
タイトルの主題歌は前年の1962年9月の発売
倍賞千恵子の歌手デビュー曲です

この年の日本レコード大賞新人賞受賞、翌年4月には本作公開、その年の紅白歌合戦にも出場
つまりスーパーヒット曲です
劇中ではタイトルバックと序盤とラストシーンの3回流れます
最初のものはインストメンタルで流れます
但しレコードとは別テイクのもので、映画用のアレンジで再録されたようです
製鉄所の金属音を連想させるようなところもあり秀逸です
あとは歌入りです
これはもしかしたらレコードのままの口パクです
でも彼女の歌声は子供の頃にのど自慢荒らしで有名だったそうで、歌唱力は抜群です

ただレコードでのイントロの哀愁を帯びたバラライカの音色が劇中では聴けないのが残念
カチューシャにも似たロシア民謡のような曲調は、当時人気だった歌声喫茶での人気を狙ったのでしょう

劇中歌はその他に、ビート歌謡の女王として近年DJにも取り上げられている青山ミチの「太陽がギラギラ」と「私の願い」の2曲が入っています
肉感的な肢体をデニムシャツとジーンズに身を包んで、ダンスホールで歌い、ツイストを踊るシーンはそれだけでも貴重です
当時なんと14歳です
11歳で地元のジャズクラブのコンテストで入賞してスカウトされてレコードデビューした少女です
彼女最大のヒット「涙の太陽」は本作の2年後の1965年にでます

彼女は横浜市麦田の出身で進駐軍の兵隊と日本人の母親との間の私生児でした

下町の太陽
もちろんそれは町子の明るい性格のことです
しかし山田監督は本当の下町の太陽はこの青山ミチであると、本作に出演させたのだと思います
まかり間違えば私設銀座警察の冒頭のシーンで殺されてしまうような産まれ方だったのだと思います
それでも彼女は逞しく育ち、生まれを恥じていじけたりしていないのです
持って生まれた才能を生かして将来の希望に満ちて、自信を持って歌い踊っているのです
町子は彼女を見たことで、自分より明るい太陽を見たのです

俺は真剣なんだ!
そのうじうじしたところのない態度を見た時の彼女の満足そうな笑みは、彼の瞳にも下町の太陽を見たからなのです

お話は歌詞の世界を上手く膨らませてあります
高度成長の真最中、来年には東京オリンピックというより良い明日に向けての希望と若さがあります

山田洋次監督第2作目
予告編には新進気鋭の新人監督と記されていました
野村芳太郎監督の門下生から独立してまだ日の浅い頃だったのです

本作での倍賞千恵子は、下町の庶民的で健康的なイメージがその後の彼女の女優人生の全てを方向づけたほどのインパクトがあります
ラストシーンの昼休みにバレーボールで真剣に遊ぶ彼女の笑顔は眩しい太陽そのものです

本作での彼女がなければ、男はつらいよのさくらも、民子シリーズも存在しえなかったかも知れません
それどころか本作がなければ、山田洋次ワールドすべてが無かったかも知れないのです
それ程の重要作品です

町子の家の最寄り駅、京成荒川駅は今の八広駅です
90年代に改称され、20年程前に高架に変わって押上方に100m 移動しています

隣駅の京成曳舟駅は町子の働く資生堂の石鹸工場の最寄り駅です
ここから京島の住宅街を少し南に歩くとキラキラ橘商店街があります
まるで昭和30年代を再現したテーマパークのような激シブ商店街です
序盤でチラリと写る当時の商店街の雰囲気を21世紀でも僅かな残り香を嗅ぐことができると思います

結婚式出席の後、映画館の前で鈴木左衛門らを見かける繁華街は錦糸町のようです
彼らが出て来たエロ映画の隣の封切り館は「地上最大の作戦」を上映中でした
今の東京楽天地かと思います

町子と北良介が一晩だけの約束でデートする遊園地は浅草の花やしきです
都電で彼女は見送られて帰ります
当時は都電のネットワークが今の地下鉄以上にあったのです
心に残るシーンでした

冒頭の銀座デートとの対比で、下町を紹介していく構成が見事です

観れば観るほど、本作の世界が愛おしくなります
この世界にいつまでも浸っていたいと思わせる魔力があります
その思いが男はつらいよシリーズにつながって行くのだと思います

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あき240

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