四十七人の刺客

劇場公開日:1994年10月22日

解説

大石内蔵助と吉良・上杉側の司令塔、色部又四郎との謀略戦争を軸に、内蔵助の人間像を追いつつ新しい視点で描いた忠臣蔵映画。従来の″忠臣蔵″の物語に、現代的な情報戦争、経済戦争の視点を当て実証的に描きベストセラーとなった池宮彰一郎の小説の映画化で、監督は「帰ってきた木枯し紋次郎」の市川崑。脚本は池上金男(池宮彰一郎の脚本家としてのペンネーム)と市川、竹山洋の共同、撮影は五十畑幸勇が担当。

1994年製作/129分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1994年10月22日

あらすじ

播州赤穂藩筆頭家老・大石内蔵助と上杉藩江戸家老・色部又四郎の戦いは、元禄14年3月14日江戸城柳の間にて赤穂城主浅野内匠頭が勅使饗応役高家・吉良上野介に対し刃傷に及んだ事件から始まった。内匠頭は即刻切腹、赤穂藩は取り潰し、吉良はお咎めなしという、当時の喧嘩両成敗を無視した一方的な裁断は、家名と権勢を守ろうとする色部と時の宰相柳沢吉保の策略だった。赤穂藩は騒然となり、篭城か開城かで揺れるが、大石は既に吉良を討ちその家を潰し、上杉、柳沢の面目を叩き潰す志を抱き、早速反撃を開始した。事件発生後直ぐに塩相場を操作し膨大な討ち入り資金を作った大石は、その資金をばらまき江戸市中に吉良賄賂説を流布させ、庶民の反吉良感情を煽り、また赤穂浪士すわ討ち入りの噂を流して吉良邸付近の諸大名を震え上がらせ、討ち入りに困難な江戸城御府内にある吉良邸を外に移転させるなどの情報戦を駆使した。思わぬ大石の攻勢にたじろいだ色部も、吉良を隠居させる一方、仕官斡旋を武器に赤穂浪人の切り崩しを図り、討ち入りに備えて迷路や落とし穴などを完備した要塞と呼ぶべき吉良屋敷を建てさせるなど、反撃を開始する。京都・鞍馬で入念な準備に忙殺される大石はその傍ら、一文字屋の娘・かるとの恋を知る。かるはいつしか大石の子を身籠もった。追い詰められた上杉家は最後の策として吉良を米沢に隠居させようとする。その惜別の会が開かれた12月14日、運命の日。雪も降り止み誰もが寝静まった子の刻、大石以下47名が集まり、要塞化した吉良邸にいよいよ突入した。迷路を越え、上杉勢百数十名との壮絶なる死闘の末、遂に大石は吉良を捕らえる。追い詰められた吉良は大石に、浅野の刃傷の本当の理由を知りたくはないか、と助命を請う。だが大石は、知りとうない、と答え、吉良を討つ。吉良の死に重なるように、かるの腹から新しい生命が生まれた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第18回 日本アカデミー賞(1995年)

受賞

助演男優賞 中井貴一

ノミネート

作品賞  
監督賞 市川崑
脚本賞 池上金男 竹山洋 市川崑
主演男優賞 高倉健
音楽賞 谷川賢作
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フォトギャラリー

映画レビュー

3.5 【”新解釈忠臣蔵”今作は、度々劇映画化、ドラマ化されて来た”赤穂浪士=善、吉良上野介=悪”という通説を翻し、大石蔵之介の人柄及び謀略と、幕府側の柳沢柳沢吉保の謀略に焦点を当てた作品である。】

2025年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

□最初に
 私の住む隣の市である愛知県西尾市には吉良町がある。且つて吉良上野介の領地の大部分があった広い町である。(かつては、独立した町であったが、平成の大合併により西尾市にな併合された。)
 この町に行くと、吉良上野介は民を想い数々の善政を行った名君とされている。
 実際に吉良上野介が水害を防ぐために作った黄金堤は今でもあり、桜の名所として吉良町民に愛されているし、私も昔その脇を車で良く走ったものである。

■粗筋は人口に膾炙していると思われるので割愛。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作では,松の廊下の刃傷シーンは描かれないし、何故に赤穂城主・浅野内匠頭が吉良上野介に切りかかった理由も明かされない。
 大石蔵之介に追い詰められた吉良が“待て!あれは・・。”と真実を言おうとするも、大石は”問答無用”と言い、吉良の首を取るのである。

・故に、泉岳寺に向かい首級を上げた赤穂浪士が歩くシーンも描かれない。

■面白いのは、昼行燈と言われていた大石蔵之介が、有事の際には機敏に策略を巡らせ、町民に賄賂を贈り、赤穂浪士=善、吉良上野介=悪という噂を流したという描写や、それに対し、柳沢吉保(石坂浩二)、の命により上杉家の家臣である色部又四郎(中井貴一)と対峙する謀略戦の描き方であろう。
 確かに喧嘩両成敗ではないか、と言う赤穂側の意見は分かるが、吉良側の意見は描かれずに、両藩の対立を幕府の安寧に利用しようとした石坂浩二演じる柳沢吉保の、一癖も二癖もある顔付が印象的である。

・物語としては、大石が囲った妾かる(宮沢りえ)の姿も、彩りを添えている所が、映画としては上手い作りかも知れない。

<今作は、度々劇映画されて来た赤穂浪士=善、吉良上野介=悪という通説を良しとせずに、大石蔵之介の人柄に焦点を当てた作品なのである。>

■それにしても、年末に「赤穂浪士」を放映するTVは無くなりましたね。時代でしょうか・・。

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NOBU

3.5 討つではなく殺す!白雪を赤く染める暗殺集団!

2024年12月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

年末と言えばこれ!って感じで、お馴染みの「忠臣蔵」。実際に起きた赤穂浪士の敵討ちの話ではあるが、江戸時代に舞台化されたものが広く知られ、現代に伝えられたと聞いている。
そんな中で、本作は従来の忠臣蔵とは異なり、最も史実に基づいたものとして、当時騒がれたと記憶している。

大石内蔵助を高倉健さんが演じ、メチャクチャ渋く魅せてくれる。
作品自体もドキュメンタリーのように淡々と進んていき、四十七士の衣装にしても、従来の有名な格好ではなく、まるで忍者のような黒装束となっている。陣太鼓も無い。
討ち入りの状況や吉良の最期にしても、従来のチャンバラとは違って見えた。

忠臣蔵は敵討ちの話なので、男の物語というイメージも強いが、本作では女優陣もなかなか豪華だと思う。浅丘さんや宮沢さんが華を添えている。

テレビで放映されていた勧善懲悪の単純な時代劇とは異なり、リアルに描かれた時代劇として面白かった。

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ratien

4.0 謀略戦争・忠臣蔵

2022年7月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、VOD

悲しい

興奮

知的

 ひかりTVビデオで鑑賞。

 原作は未読。

 世にも有名な忠臣蔵を日本人の大好きな仇討ちの忠義物語ではなく、謀略・情報戦争と云う異色の観点から描き出す。大石内蔵助と色部安長の知略の限りを尽くした攻防戦は、それぞれの正義と威信をかけた人間的迫力に満ちていた。とにかく演技陣の重厚感が凄まじい。ここ10年くらいの日本映画にはこれほどの風格を備えた作品は無い気がする。

 市川崑監督作品ならではの映像美に切り取られた四季の風景と共に、大石内蔵助とかるの恋や機会を虎視眈々と狙う赤穂浪士の姿が画面に映えに映えまくり、クライマックスの黒と白のコントラストが素晴らしい討ち入りシーンの美しさに心奪われた。

[鑑賞記録]
2022/07/21:ひかりTVビデオ
2025/10/24:WOWOWプラス

*修正(2025/10/26)

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しゅうへい