地獄変

劇場公開日:

解説

芥川龍之介の同名原作を「日本海大海戦」の八住利雄が脚本化、「喜劇 駅前開運」の豊田四郎が監督した文芸もの。撮影は「連合艦隊司令長官 山本五十六」の山田一夫が担当した。1969年9月20日より一部劇場で先行ロードショー。

1969年製作/95分/日本
原題または英題:Portrait of Hell
配給:東宝
劇場公開日:1969年9月27日

ストーリー

平安朝時代。時の権力者堀川の大殿は、天才絵師良秀に無量寿院の壁面を極楽図で飾るよう命じた。しかし良秀は、現実を地獄より地獄的とするような絵を描き、大殿を始終憤怒させていた。それほどにまで真実を求めてやまない良秀。彼が情愛を寄せるのはこの世にただ一人、娘の良香だけだった。ある日、良秀は良香と恋仲の弟子弘見を破門した。良香は嘆き悲しみ、可愛がっている猿とともに弘見の後を追った。が、彼女は偶然に大殿の目にとまり、所望されて小女房に上ることとなった。大殿の使者よりそれを伝え知らされた良秀は、娘の返上を嘆願したが聞き入れられなかった。やがて、良秀の再三の願いを入れて、大殿は彼に地獄絵を描くよう命じ、出来栄え次第で良香を返すと約束した。良秀一生一代の大作は、大殿の栄耀栄華が招いた民衆の地獄をあまねく描き、最後に大殿が猛火に包まれて悶え苦しむ焦熱地獄絵を残すのみとなった。本当の地獄を見ないとその真の姿が描けぬ、という良秀の願いを入れ、華麗なる檳榔毛の牛車に火をかけた。そしてその犠牲者となったのは良香だった。やがて良秀が精根を傾けた地獄絵が完成。大殿は、屏風絵の焦熱地獄で苦悶する自分自身を見て驚愕、その時倒した燭台の火は、やがて大殿を奈落の底に誘いこんでいった。その時良秀はすでに自害していた。

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映画レビュー

2.5来い、奈落へ来い、炎熱地獄へ来い、焦熱地獄へ来い

2024年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なかなかお目にかかることのない映画だったので楽しみだった。たしかに芥川の世界だけど、やはり時代のせいか、全体にどこか大仰な演出に思えた。役者の演技も濃い。そりゃ中村錦之助(萬屋錦之介)と仲代達矢だもの、熱い演技合戦になるのは当然だとは思うし、物語自体も狂気を孕んだ大殿と良秀の丁々発止なのだからこうなるわな。そこに芥川也寸志のクドい劇伴。二人の意地の張り合いに巻き込まれた良香を見せつけられては尚のこと、胃もたれしそうな後味になった。嫌いじゃない、だけど、味付けが濃い料理。せめて塩分は控えて欲しいと言いたくなる。いま、だれか他の監督がこれを映像化したらどう仕上がるのだろうか、という想像こそが楽しく思えた。

鑑賞後、講演。芥川也寸志の音楽について。
也寸志は龍之介の三男であることを忘れかけていた。也寸志はまだ自分と被っているし、そう思うと龍之介生きた時代と言うものはそう遠くないもののように思えて、急に身近な存在に感じた。当時最大人数によるオーケストラ、舞曲風の音楽と鞭の音、オスティナート(執拗反復)と呼ばれる音楽、他の映画にも流用される同じメロディ、等々。好みの問題だけど、うるさいのだよなあ。いいから音楽はもう少し下がっててくれ、と思う。

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栗太郎

3.5貴重な錦之助VS仲代作品

2015年4月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

これは珍しい錦之助と仲代達矢共演作品。
何せ錦之助は東映の大スター。対する仲代達矢は主に東宝を中心に映画出演していただけに、この2人の組み合わせは貴重。
でもこの2人って同い年で、ほぼ同じ頃に映画界に飛び込んでいたんですね。

映画は芥川竜之介原作で、音楽を息子の芥川也寸志が担当と言うのも見所の一つ。
でもやっぱり錦之助と仲代達矢の演技合戦が一番の見所。

平安時代の貴族社会を背景にして権力者の錦之助と、悪政に苦しむ社会を憂う絵師役の仲代達矢。
極楽浄土の絵を描かせたい錦之助に対して、仲代は地獄絵図こそこの世に相応しいと応じない。
かくして可憐な内藤洋子を挟んだ、この2人の人間の業の深さを映像化したのは豊田四郎監督。
豊田監督としては、この様な絢爛豪華な平安絵巻物語は決して得意な分野では無いと思うのだが、シンプルにして奥行きの有る村木忍の美術に、鋭い観察で人間性を追求した八住利雄の脚本。更に撮影・照明・録音等、スタッフ一丸となった確かな技術力が存分に発揮されていています。

がっぷり組み合った錦之助VS仲代の2人ですが、狂気的な演技に持ち味の在る仲代達矢は流石の演技。
でも個人的にはやはり錦之助ですね。実に憎たらしい役ですが、如何にもやんちやな錦之助に相応しいキャラクター設定で、ついつい嬉しくなって来ます。
クライマックスでの悪役っぷりはまさに圧巻。

今観ると、ラスト間際の特撮場面に古さを感じこそすれ、娯楽性に溢れた作品です。

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松井の天井直撃ホームラン

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