時雨の記

劇場公開日:

解説

若い頃に見初めた女性との20年ぶりの再会に愛を燃やす中年男性と、そんな彼の一途な想いに深い理解を示していく中年女性の純愛をしっとりと描いた恋愛ドラマ。監督は「日本一短い『母』への手紙」の澤井信一郎。中里恒子の同名小説を基に、「日本一短い『母』への手紙」の伊藤亮二と澤井監督自身が共同脚色。撮影を「誘拐」の木村大作が担当している。主演は「霧の子午線」の吉永小百合と「誘拐」の渡哲也。尚、ふたりの共演は「愛と死の記録」以来、29年ぶりとなる。キネマ旬報日本映画ベスト・テン第9位

1998年製作/116分/日本
配給:東映
劇場公開日:1998年11月14日

ストーリー

昭和が終わりを告げようとしていた頃。明和建設の専務・壬生孝之助は、20年ぶりに堀川多江の姿をあるホテルのパーティ会場に認めた。多江とはかつて一度だけ会社の会長の葬式で会っただけの間柄だったが、彼は彼女のことをずっと忘れないでいたのだ。この運命的な出逢いを機に、壬生は彼女の家を頻繁に訪問したり、彼女を食事に誘ったりと積極的な行動に出るようになる。一方、夫を亡くし生け花教室を開いてひとり慎ましく鎌倉に暮らしていた多江も、初めは戸惑いを隠せなかったが、一途な壬生の性分に好感を抱くようになっていた。だが、どんなに逢瀬を重ねても、ふたりの関係は口づけを越えることはなかった。ある日、多江と壬生は秋の京都を訪れる。多江の愛読する『名月記』の作者・藤原定家縁の常寂寺裏にある時雨亭跡を散策し、飛鳥の丘陵から吉野の山々を眺めながらここに庵を建てようと約束を交わすふたり。しかしそれから数日後、壬生が心臓発作で倒れ入院した。知らせを聞いた多江は急いで見舞いに駆けつけるが、そこで彼女は壬生の妻・佳子と会ってしまう。世間的には不倫と呼ばれて仕方のないふたりの関係。そのことを思い知った多江は身を引くことを決意すると、かねてから生け花の師匠に誘われていた京都行きを承諾するのだった。ところが、壬生はそんな多江の想いとは裏腹に、ふたりで京都に住もうと言い出す。時代は平成へと移り、スペイン出張から帰国した壬生は遂に佳子に別れを告げる。「今までは仕事中心に自分を殺して生きてきた。これからは自分の心の思うままに生きたい」と言って。多江を京都に追った壬生は、生け花の発表会の準備に忙しい多江と時雨亭跡で待ち合わせる。師匠の止めるのも聞かず、壬生の元に走る多江。だが、そこには心臓を押さえ苦しそうにしている壬生の姿があった。壬生が心不全で他界したのは、それから間もなくのことだった。葬儀も終わったある日、京都への引っ越しの準備をしている多江の元へ佳子がやって来る。彼女は、多江に思いの丈をぶつけた。そんな彼女に黙って耐え忍ぶしかない多江。だが数日後、壬生の無二の親友・庄田が、壬生が書き残していた庵の設計図を持って来てくれた時には、溢れ出る涙を抑えることは出来なかった。春。多江は、壬生との想い出の京都の地をひとり訪れた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第22回 日本アカデミー賞(1999年)

ノミネート

主演女優賞 吉永小百合
助演女優賞 佐藤友美
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映画レビュー

4.0吉永小百合×木村大作×久石譲

2024年6月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

知的

幸せ

美しい日本の風景の中
美しい吉永小百合を映す木村大作
美しい音楽が彩りを加える良作。
長崎ぶらぶら節と共に
演技を超えた吉永小百合さんの表情は
あまりにも美しすぎます。
純白の着物に紫の帯を纏った彼女が
桜並木の中を久石譲の名曲と共に歩く
ラストシーンは、その画力だけで感涙!

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映爺

2.0元恋人共演

2023年12月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2023年12月17日
映画 #時雨の木 (1998年)鑑賞

#吉永小百合 が出演を熱望し、吉永と #渡哲也 はノーギャラ
撮影費用を抑えるため渡は石原プロの車を使っていた
吉永はスタッフが運転するライトバンで移動
それほど彼女がどうしても演じたい作品だった

らしいけど、内容はイマイチでした

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とし

3.5還暦間近で恋に入れあげ、毎日猛アタックする渡哲也。怖〜い、もはやた...

2023年2月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

還暦間近で恋に入れあげ、毎日猛アタックする渡哲也。怖〜い、もはやただのストーカーである。
受け入れるのかー!小百合様。なぜかプラトニック。あり得な〜い!
そして起こる男の胸の痛み。もはや先がチョンバレである。食事中、突如ブチ切れて泣く裕木奈江もやばい(笑)
男の妻佐藤友美に激しく同情。そして息子役原田龍二は本作に学び不倫に走るのであった(笑笑)

思うにこれは、若き時、結婚寸前までいきながら周囲の大反対で結ばれなかった渡哲也と小百合様に許されたスクリーンの中での恋の成就なのであろう。そしてそれは本作では満足いかず、「長崎ぶらぶら」へと続くのである。
BS12

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はむひろみ

3.0彼女への憧れの想いだけを抱いて亡くなって、むしろ…

2023年1月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

女は土産をいきなり開けたり、
男は生け花の花瓶をいきなり手にしたりと、
二人の所作が気になる作品だったが、

そんなことはさて置き、
吉永小百合目当てオンリーで鑑賞。

若い頃より美しく感じる彼女だが、
この作品での50代の彼女も同じ印象だった。

しかし、そんな邪な目当ても
吹き飛ぶような鑑賞になってしまった、
内容が身につまされるものだったから。

誰よりも愛する家族がいるものの、
しかし、
昔憧れだった女性に数十年ぶりに出会い、
心穏やかにはいられなくなったため、
吉永小百合に彼女の印象を
オーバーラップさせながらの鑑賞
となってしまった。

ただ、自分が渡哲也には
ならないだろうと思うのは、
“縁”を大切に思うから。
かつて憧れだった女性との再会も
“縁”ではあるだろう。
しかし、時間の長さが異なる。
その長い時間に責任もある。

私は亡くなるまで、
その憧れの彼女への想いを
悶々と残すだろうが、
それ以上に妻や家族を大切に想うだろう。

「シェルブールの雨傘」のラストシーンに感動
するのは、過去の女性への想いを断ち切り、
現在の“縁”を選択する男性の想いだ。

遠くにいる人は、その良い面しか見えない。
ある意味、渡哲也は彼女への
憧れの想いだけを抱いて亡くなって、
むしろ幸せだったのではないだろうか。

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