潮騒(1985)
劇場公開日:1985年10月10日
解説
伊勢湾に浮かぶ歌島を舞台に、許されない愛を貫き通す恋人たちの姿を描く。三島由紀夫原作の同名小説の映画化で、今回で5度目である。脚本は「さびしんぼう」の剣持亘、監督は「F2グランプリ」の小谷承靖、撮影は「天使を誘惑」の萩原憲治がそれぞれ担当。
1985年製作/101分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1985年10月10日
ストーリー
伊勢湾の湾口にある歌島の人口の多くは漁師と海女である。18になる久保新治も、一昨年中学を出るとすぐ十吉の船に乗り込み、母と弟の生計を助けていた。ある日彼は、魚市場で魚貝の計量の仕方が分らず困惑している見知らぬ少女に手を差しのべた。翌日、新治は船の中で十吉から昨日の少女の話を聞いた。金持ちの男やもめで、村一番のがみがみ親爺の宮田照吉が、一人息子に死なれた為、他所に預けておいた末娘の初江を呼びもどし、島で婿取りをさせるというのだ。新治は自分の財力の乏しさを思って自信を失くした。それから四、五日した強風の日、風の為の休漁で山の観的哨跡に薪を取りに出かけた新治は、そこで道に迷って泣いている初江と出会った。観的哨跡から見える景色を彼女に説明しているだけで幸福な新治。こうした偶然の出会いは、噂好きの村人を憚る理由から二人だけの秘密に変化した。給料日の夕方、新治は初江の入婿に安夫がなるという噂を聞いた。暗い気持で家に帰った彼は、給料を無くした事に気づき、浜へ探しに戻った。そこに初江が給料を拾ったと告げに走って来た。そして、安夫との噂を問う新治に彼女は砂の上に崩折れて笑った。彼らは初めて唇をかわす。二人が会えるのは休漁の日、観的哨跡だった。やっと来た休漁の日、早めについた新治は烈しい風と遠い潮騒の音の中で眠ってしまう。目を覚ました波の前に初江の姿があった。お互い裸になることで二人は蓋恥心を消そうとする。二人は永い接吻だけで幸福を感じることができた。そして、寄りそいながら石段を下りる新治と初江の姿を、東京から帰って来ていた燈台長の娘・千代子が目撃した。彼女は新治に好意を持っていたのだ。間もなく村中に噂が広がり、新治と初江の仲は引き裂かれていった。ある日、新治と安夫が島の青年の憧れの的である「日の出丸」に乗り込み訓練を受けることになった。初江の入婿は自分だと自信を持っている安夫。出航間際に手渡された初江の写真を情熱と共に胸に秘めている新治。二人は婿選びと噂される対立の航海をすることになる。航海も終りに近づいた頃、船は暴風雨にあい大海にのまれそうになった。人間の腕程もある命綱を身体に巻きつけた新治は、浮標めがけて真暗な怒寿の中に飛び込んでいく。新治は照吉に認められて海から帰ってきた。灯台で寄りそう新治と初江。初江は自分の写真が新治を守ったと考え、目に誇りを浮かべていたが新治はこの冒険を切り抜けたのは、自分の力であることを知っていた。