皇帝のいない八月

劇場公開日:

解説

もし現代の日本で自衛隊のクーデターが起こったらという構想のもとに、その恐怖と巨大なうねりに翻弄される人間の姿を描く小林久三の原作の映画化。脚本は「不毛地帯」の山田信夫、渋谷正行、「不毛地帯」を監督した山本薩夫の共同執筆、監督は同作の山本薩夫、撮影は「ワニと鸚鵡とおっとせい」の坂本典隆がそれぞれ担当。

1978年製作/140分/日本
配給:松竹

ストーリー

八月十四日午前一時、盛岡市郊外。不審なトラックを追っていたパトカーが機関銃の乱射を受けて炎上、トラックは東京方面に走り去った。八月十五日午前十時半、鹿児島。陸上自衛隊、警務部長の江見は郷里で亡妻の墓参中、内閣情報室長の利倉からの連絡で、盛岡のパトカー炎上事件を知った。そして、自衛隊内外の不穏分子を列記したリストに昔の部下で、今は一人娘、杏子の夫である藤崎の名を発見して愕然とする。帰京の途中、杏子の往む博多に立ち寄るが、杏子は、藤崎が運送業に打ち込んでいることを告げる。だが、江見が去った後、夫から東京に行くという手紙が届いた。同日午後六時半、博多駅。業界紙の記者、石森は取材を終え、帰郷すべく、「さくら号」を博多駅で待っていると時ホームを駆ける杏子の姿を見かけた。思いがけない再会、かつて二人は結婚を誓い合った仲なのだ。二人を乗せたブルートレインは静かにすべり出す。同日、東京首相官邸。佐林総理を囲んで緊急会議が開かれていた。大規模なクーデター発生の可能性を報告する利倉。自衛隊の軍隊化をめぐり、日本最大の黒幕、大畑との対立が再燃した。同日午後八時一分、門司。石森は列車の下に動く怪しい男の影を発見。同日午後八時十五分、下関。石森の要請で、車輪係員が列車を点検したが、危険物は発見されなかった。その直後、石森と杏子は一号車に連行され、そこに藤崎の姿を見た。杏子の不安が的中したのだ。同日午後九時、東京。内閣情報室の分析でクーデターの黒幕として大畑の名が浮かび、そこに繋がる危険人物として真野陸将の名も上がった。江見は真野を逮捕して拷問を加えるが、真野は舌を噛み切って果てた。しかし江見は、真野の乗用車の天井からクーデターの暗号計画書“皇帝のいない八月”を発見、全てのプランを把握した。佐林首相は各方面部隊に鎮圧作戦を命令し、クーデター部隊に先制攻撃を加えた。同日午後九時五十分、「さくら号」。一斎蜂起の失敗を無線で確認した藤崎は「さくら号」制圧作戦に切替えた。各車輛にM爆弾が仕掛けられた。無線で「大畑を出せ!」と政府に迫る藤崎。しかし、大畑の姿は忽然と東京から消えた。この緊急事態に佐林、利倉ら政府首脳、江見ら警務部隊、国鉄関係者はどう対処して行くか!乗客三百六十人を乗せたブルートレインは、走る爆弾と化して一路東京へ闇の中を突っ走る……。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第2回 日本アカデミー賞(1979年)

ノミネート

主演男優賞 渡瀬恒彦
音楽賞 佐藤勝
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オソレゾーン

映画レビュー

3.5和製『カサンドラ・クロス』・・・らしい・・・というより列車パニック映画風に始まったのにいつの間にか永田町に跋扈する魑魅魍魎たちのホラー映画になった感じ。後味悪し、だが看過出来ない怪作。

2022年6月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

①『新幹線大爆破』のWikipediaに、類似作として『皇帝のいない8月』が『カサンドラ・クロス』にインスパイアされた作品とあった。あちらは生物兵器(極秘開発されたウィルス、こちらは日本で軍部政権樹立を図る自衛隊の中の極右クーデター部隊。)それで、もしかすると山本圭がリチャード・ハリスの役、吉永小百合がソフィア・ローレンの役で、過激派くずれの山本圭が過激派の時に身に付けた知識で列車を乗っ取った自衛隊のクーデター部隊と戦う映画か?と一瞬思ったけれど、日本でそんなパニック・アクション映画が作れる筈もなく、吉永小百合がソフィア・ローレンになれるわけもなく、『カサンドラ・クロス』が感染力の高いウィルスを極秘に開発していた事実を秘匿しようとするアメリカ政府の画策は背景で列車を止めようと戦う乗客達の活躍がメインだったのに対し、こちらは、ビンチヒッターで器用された(らしい)のが山本薩夫監督だったせいか、列車乗っ取りによるサスペンスやアクションよりも、支持率回復を目指す総理大臣や、軍部政権を樹立して再度権力の座に付こうとする政界のドン、並びに彼等周辺の大臣達の腹の探り会い、狐と狸の化かし会い、国民不在の権力闘争がメインのボリティカル・スリラーというか(後味的には)ホラーとなってしまった。

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もーさん

2.0題名の「皇帝のいない八月」の隠された本当の意味

2020年5月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

いやはやひどい映画だ
白い巨塔、華麗なる一族を撮った山本薩夫監督とは思えない
リアリティのなさは呆れるばかりだ
取材も不徹底で腹が立ってきた
シン・ゴジラの真面目な取材ぶりとは雲泥の差

パヨクという言葉がある
まさにパヨクの認知バイアスに陥って映画を撮ったなら、いかな山本薩夫監督のような実力のある監督でもこうなってしまう見本だ
パヨク的思い込みの世界観で決めつけて撮っているから、こうなってしまうのだ

物語の骨格は、なんとまあ実は石原裕次郎主演の「夜霧よ今夜ともありがとう」だったのだ
本作はその程度のものだ
浅丘ルリ子の役は吉永小百合に、石原裕次郎は山本圭、二谷英明は渡瀬恒彦という具合にそれぞれ対応する
ヒロインが恋人との約束直前に失踪するプロット、彼女を恋人から引き剥がす男が革命家という設定を借りているのだ
真面目に観るだけアホらしいということだ

また寝台特急さくら号の乗客に、渥美清と岡田嘉子がコメディリリーフとしてなんどか登場する
本作の2 年前の1976年の「男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け」で、この二人は共演している
その作品では直接顔を合わせるシーンはないが、本作では、まるでその寅次郎と岡田嘉子が演じた老婦人が共にこの寝台列車に乗っているかのようにわざと似せて演出している
さくら号というのも寅さんに掛けてある
本当のところは岡田嘉子を出したいが為に、このような方便を使ったのだろう
渥美清は刺身のつま扱いに過ぎない

題名の「皇帝のいない八月」とはどういう意味か?
それはもちろん、劇中に登場するクラッシックのレコードのタイトルであり、クーデターの作戦名なのだが、実は本当の意味が隠されている

皇帝とは天皇のこと
つまり、天皇は敗戦したときに無くすべきだった
そう言う意味だと自分は理解した
それをしていないから、こんなクーデターが起こるかも知れないのだという意味だ
それが監督が本作で発したいテーマであり、メッセージというわけだ
本作はそれだけを言いたいだけの映画に過ぎない

高橋悦史が演じる利倉内閣調査室室長は、なぜフォードのキャップを常に被っているのか?
フォードとはアメリカの象徴だ
つまり彼はアメリカの犬だと表現している訳だ
なんと稚拙な演出だ
山本薩夫の名が廃る

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あき240

1.5渡瀬恒彦の狂気

2020年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1970年代、自衛隊の一部部隊がクーデターを企てます。その一部部隊が国鉄の寝台列車を乗っ取って東京を目指す・・・というストーリー。

渡瀬恒彦の狂気が映える作品です。戦国自衛隊でもそうでしたが、この手の役をやらせたら、彼の右に出る方はいませんね。
彼の存在感だけで見る価値がある映画です。
ストーリーとしては特別深みがなく、登場人物の心情等には(70年代の作品だから?)ついていけない場面もあり、映画全体としては高い評価は難しいと感じます。

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よし

3.0渡瀬恒彦はかっこいいが…

2019年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

なんともふつうなんだよな~。派手にドンパチやるわけでもなく。
山本圭と吉永小百合のくだりはこの作品に必要だったか?という気がする。オジさんが監督なので圭ちゃんは出演しててもいいのだが。自衛隊内左派勢力みたいな役で出ていてほしかった。彼はやはり「新幹線大爆破」みたいな左翼青年が似合う。

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さすまー
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