高原児(1961)

劇場公開日:

解説

松浦健郎の原作を、原作者自身と中西隆三が脚色し、「助っ人稼業」の斎藤武市が監督した旭のアクションもの。撮影も同じく高村倉太郎の担当。

1961年製作/85分/日本
配給:日活
劇場公開日:1961年8月13日

ストーリー

山岳地帯を開発する工事現場恒例の射撃大会は今やたけなわ。予想通り若い現場監督の健次が優勝した。だが、クレイジイのゲンと名乗る流れ者が現われて挑戦してきた。健次はこれも斥けて優勝を確定した。医務室の看護婦伸子は、健次を愛しているが健次のはっきりしない態度に、姉が経営する別府の牧場の牧童頭安夫との縁談のため別府に帰っていった。ちょうどその後に、見知らぬ男が怪我をして医務室に運びこまれて来た。その男のうわ言につぶやく“スズラン牧場”の名を聞いた健次は伸子の後を追った。別府には二つの暴力団が根をはっていた。一人は高山牧場を経営する高山で、伸子の姉夏江の夫、五郎が行方不明をよいことにスズラン牧場と夏江をものにしようと狙っていた。もう一人は観光道路建設会社の花田である。五郎の行方不明の原因は、夏江に横恋慕の高山の指金で、花田の乾分黒崎を使って五郎を闇打ち、五郎が傷ついたとたん花田は黒崎を殺し五郎に殺人の罪を着せて別府から追いだしてしまったのだ。そこへ、健次が五郎になりすまして帰って来た。夏江も健次の何かいわくありげな様子に健次と協力、健次を夫の五郎として調子をあわせた。伸子も一緒になってそのように振舞った。驚いた高山と花田は何とか健次を殺害しようと襲うが、ことごとく健次にやられてしまった。そんな時、黒崎の弟クレイジイのゲンが兄の仇を求めて別府にやって来た。一方、本物の五郎も健次が余り夏江と調子よくやっているので、やきもち半分で飛び出して来た。五郎とはかつて工事現場の医務室にかつぎこまれた男である。ゲンは健次を五郎と思い込み決闘状を送って来た。二人が赤い夕陽の高原に対峙した時、五郎が飛びこんで来て、黒崎殺害の経過をゲンに説明した、それを知った花田一味が襲撃して来た。健次とゲンのライフルと拳銃が火を吐いた。花田と高山の一味は次々と倒されていった。パトカーもやって来た。一味はことごとく縛についた。伸子の呼ぶ声を後に健次は一人高原を去っていった。その後をゲンがニヤニヤ笑いながらついてゆく。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0渡り鳥シリーズだよね。良質のスピンアウトものです。

2020年11月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

興奮

幸せ

大分県は久住高原。味噌汁ウエスタンの傑作のひとつ。昭和36年と言えば、浅草の映画館街の最後の輝きのときでしたね。浅草新世界ビルができて、界隈には露店が立ち並び、さながら毎日がお祭りのような賑わいでした。寿司屋横丁には、アーケードいっぱいに寿司屋があって、雷門通りには、西友の一号店。ここでおいらは、明治末生まれのはげちゃびんの我が愛すべき親父にホームランキャラメルをかってもらいますた。遊び場所はもっぱら浅草新世界の八階。ちかくの花屋敷のロケットぐるぐるは、本当に目が回って怖かった。木馬館では、もっと小さい時に母ちゃんに毎日のように、木馬にのせてもらったそうです。東武日光行きのデラックスロマンスカー、華厳号、鬼怒号が発車する、浅草松屋に続く、なかみせ通りの、端っこでは、どぶの泥の中に万年筆、いわゆる工場火災で倒産と言う、ナキバイ。もちろんサクラさんもいて、気の良いおやぢは、泥を拭いた、高級万年筆とやらを買い込んでいますただ。もちろん、スポイトでインクすいあげるやつね。ペン先なんぞは、18金な訳もなく、総金歯キラキラのおやぢは、そう言う企画モノが大好きで、イボもホクロも取れる、頭が二つあるハブから精製した、小瓶詰めの怪しい液体とか、面白がって買わされてますた。コレがアンモニア臭いのさ。どう見ても、胡散臭いモノばかり、人を集めちゃ袋の蛇は、猛毒で空も飛ぶちゅう、能書きをニコニコ聞いてるおやぢでしたね。トロリーバスで滝野川から、三河島経由で浅草六区もしくは、坂を下って大塚茗荷谷経由で池袋。近くには、飛鳥山。王子の駅近くにも封切館があるのに、わざわざ浅草まで、オイラや母ちゃんまで連れてってくれたのです。例の花屋敷では、小林旭のブンガワンソロが、威勢良く流れてますた。でね。波濤を超える渡り鳥。これは、王子の日活で見せてもらいますただ。橋幸夫の江梨子も、この頃。月光仮面は、巣鴨の地蔵通りの東映。わたりどりの初期ものは、新庚申塚と、大通りのクロスの2番館。角のフルーツ屋では、砕いた氷の上の冷やしスイカが、アセチレン灯に照らされていました。まあ、三丁目の夕日の世界そのもの。住んでたとこは、ちょい山の手の一丁目でしたけどね。通っていた学校は、宍戸ジョー、郷エイジきょうだいの母校とかで、ワイルドな悪ガキたちが跋扈してますた。その、オイラが大好きだった、おやぢが翌年、町屋の焼き場で、煙になって、母ちゃんが生まれ故郷に帰るという頃が、渡り鳥シリーズの最終作。『渡り鳥北に帰る』の上映ごろ。アキラあにいも人気のピークでしたね。この『高原児』は、『大森林に向かって立つ』同様、渡り鳥シリーズのスピンオフとしては、抜群の出来栄えでした。特に、ラストシーンは、ルリちゃんとの絶唱以来のデュエット。宇目の唄喧嘩。半泣きのるりちゃんが見送る中、夕陽に紛れて、夕焼けは赤い幌馬車が、アキラ節で流れる中を、エンデング。斎藤武市監督と、高村倉太郎キャメラマンは、本当に夕焼けを綺麗に表現できた名人芸。大盛せいたろうさんのトリオが、放った日活ミュージカル、無国籍映画の隠れた傑作だと思います。隅田川の水は、真っ黒で悪臭。空には大気汚染のスモッグで呼吸困難。そんな、オリンピックに向けての環境劣悪な都会から、空気の澄んだ、水の綺麗な田舎に連れてってくれた母ちゃんは偉大でした。まあ、空が高いこと。冬の星座が、おりおんかしおぺあ、北斗七星のおおぐま座まで、くっきりの夜空に感動したもんです、年明けてのサンパチ豪雪で、念願の、雪だるま。かまくら。ゆき合戦まで、漫画の中でしか知らなかった、未知の新世界に感動していました。あのまま東京なたへばりついていたら、どうなったか?と思うと、人生の分岐点での、母ちゃんの選択は見事なまでのgood判断。お陰様で、テレビに毒されることもなく、健康に大学まですんなり進ませてもらえますた。東京は、あこがれの場所として日本中から、人が集まり続けていた中、逆に、雪国の田舎にと言う、渡り鳥故郷に帰るを地で行った親子は、マザコンのまま21世紀まで、96歳の母親と一緒にいることができて幸せでした。そういう意味で、この映画『高原児』は、特に思い出深い作品です。

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みすずあめ