ー ”はちきん”・・高地県に仕事で頻繁に行っていた時に、飲み屋街で教えて貰った言葉である。
意味は、(その後、キチンと調べた。)酒を呑んでばかりいる土佐の男を4人程度は首根っこを掴んで働かせる、男勝りの女性の事を言うそうである。
ウーム。”はちきん(意味分かりますね!2掛ける4は8ね!)の一人にはなりたくないなあ・・。-
■大正時代、土佐の大親分「鬼政」こと、鬼龍院政五郎(仲代達矢)の養女となった松恵(少女時代は仙道敦子。成人してからは夏目雅子)。
土佐電鉄の労働争議で知り合った高校教師・田辺(山本圭)に惚れ込んだ松五郎は、彼を自らが溺愛する実の娘・花子(高杉かほり)の婿にしようとするが、松恵と田辺がいつしか愛しあうようになり、政五郎は激昂し、二人は土佐を離れる。
◆感想
・この映画には、”はちきん”が多数描かれる。
1.政五郎の妻である歌(岩下志麻)
2.政五郎の妾であるつる(佳那晃子)
そして、松恵である。
だが、只一人、政五郎に振り回され、哀しき人生を歩み客死した女がいる。政五郎が溺愛する実の娘・花子である。
冒頭は、彼女が京都の遊郭で死んだ花子の急死するシーンから始まる。
・この映画は、松恵を演じた夏目雅子さんが、田辺の遺骨を貰いに行った際に激しく父親から拒絶された時に切った啖呵”なめたらいかんぜよ!”が有名であるが、冒頭から他の”はちきん”も頻繁に口にしている。
特に、歌を演じた岩下志麻さんの、臨とした着物姿の気品と、チフスの病に倒れてからの松恵に詫びる姿は、絶品の演技である。
・この映画の見所は、どうしようもない男だが、何処か憎めない政五郎を演じた仲代達矢の姿であり、彼を取り巻く”はちきん”女たちの生き様と死に様をエロティシズム溢れる映像で描いたところであろう。
<昔、チラリと見た時には(TVだったかな・・。)女優陣の裸ばかり取って、好きではないなと思っていたのだが、今観るとナカナカ気骨ある映画だなと思ったモノである。
だが、それはこの映画に主要人物として出演している全ての女優さんの気概が凄いからだと思うのである。
所詮、男なんてものは”はちきん”に振り回される生き物なのである。
そんな中、哀れに表現されるのが花子の生き様、死に様という点の対比も見事な作品であると思う。
タイトルが「鬼龍院花子の生涯」というのも、シニカルである。>