キューポラのある街

劇場公開日:

解説

早船ちよの原作を「豚と軍艦」の今村昌平と、その門下にあった浦山桐郎が共同で脚色、監督した社会ドラマ。撮影は「ずらり俺たちゃ用心棒」の姫田真佐久。

1962年製作/99分/日本
原題または英題:Cupora,Where the Furnaces Glow
配給:日活
劇場公開日:1962年4月8日

ストーリー

鋳物の町として有名な埼玉県川口市。銑鉄溶解炉キューポラやこしきが林立するこの町は、昔から鉄と火と汗に汚れた鋳物職人の町である。石黒辰五郎も、昔怪我をした足をひきずりながらも、職人気質一途にこしきを守って来た炭たきである。この辰五郎のつとめている松永工場には五、六人の職工しかおらず、それも今年二十歳の塚本克巳を除いては中老の職工ばかり、それだけにこの工場が丸三という大工場に買収され、そのためクビになった辰五郎ほかの職工は翌日から路頭に迷うより仕方なかった。辰五郎の家は妻トミ、長女ジュン、長男タカユキ、次男テツハルの五人家族。路地裏の長屋に住んでいた。辰五郎がクビになった夜、トミはとある小病院の一室で男児を生んだが辰五郎はやけ酒を飲み歩いて病院へは顔も出さなかった。その後、退職の涙金も出ず辰五郎の家は苦しくなった。そしてささいなことでタカユキが家をとびだすような大さわぎがおこった。タカユキはサンキチのところへ逃げ込んだ。サンキチの父親が朝鮮人だというので辰五郎はタカユキがサンキチとつきあうのを喜ばなかった。そのうえ克巳が辰五郎の退職金のことでかけあって来ると、「職人がアカの世話になっちゃあ」といって皆を唖然とさせた。しかしタカユキが鳩のヒナのことで開田組のチンピラにインネンをつけられたことを知ったジュンは、敢然とチンピラの本拠へ乗り込んでタカユキを救った。貧しいながらこの姉弟の心のなかには暖かしい未来の灯があかあかとともっていた。やっとジュンの親友ノブコの父の会社に仕事がみつかった辰五郎も、新しい技術についてゆけずやめてしまいジュンを悲しませた。街をさまよったジュンは、トミが町角の飲み屋で男たちと嬌声をあげるのを見てしまった。不良の級友リスにバーにつれていかれ睡眠薬をのまされてしまったジュンは、危機一髪のところで克巳が誘導した刑事に助けられた。学校に行かなくなったジュンを野田先生の温情がつれもどした。やがて石黒家にも春がめぐって来た。克巳の会社が大拡張され、克巳の世話で辰五郎もその工場に行くこととなった。ジュンも昼間働きながら夜間高校に行くようになった。克巳もこの一家の喜びがわがことのように思えてならなかった。石黒家は久し振りの笑い声でいっぱいだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5【高度経済成長期の社会問題を背景に、貧しき庶民の中学生の娘が時に父と喧嘩し、時に絶望しつつ様々な経験をし、自立した暮らしを選択する姿を描いた作品。】

2024年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■キューポラという煙突が立ち並ぶ鋳物の町として有名な埼玉県川口市。
 昔カタギの頑固な職人・辰五郎(東野英治郎)の一家に時代の波が押し寄せる。
 工場が買収され、辰五郎はクビになってしまう。
 娘のジュン(吉永小百合)は、パチンコ屋でアルバイトをしながらも高校進学を目指すが、現実は厳しい。

◆感想

・テーマ的に暗くなりがちな物語だが、それを救っているのは弾けんばかりの笑顔が輝く若き吉永小百合さんの存在である。

・飲んだくれで金銭にだらしない父、苦しい家計を助けるために飲み屋で働くようになった母。そんな姿を見てジュンは修学旅行を諦める。

・仲の良い子は、経済的に苦しく北朝鮮へ戻る選択をするが、その子は別れ際ジュンに自転車を渡したり、登場人物が皆何だかんだ言いながら相手を思いやる姿が印象的である。

・だが、彼女はそこで挫折する事無く、就職し夜学で学ぶ決心をするのである。

<組合や、労働基準法も知らない父の姿は、当時の中小企業で働く職人を象徴しているのであろうか。
 けれども、あの時代に今作の様な人たちが、貧しさに負けずに懸命に生きたからこそ、今の日本があるのだと思う。
 今の日本は、当時と比べて本当に豊かなのかな、とも思ってしまった作品である。>

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NOBU

0.5翔んでる埼玉!?キューポラしかない街!?

2023年10月28日
スマートフォンから投稿
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マサシ

4.017歳の吉永小百合を輝かせた浦山桐郎監督の凄さ

2022年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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Kazu Ann

4.0今と確実に地続きなあの頃

2021年10月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 舞台は1962年の川口市、戦後17年、私の生まれるたった2年前。吉永小百合や浜田光夫たちの長屋は貧乏で道も狭く舗装もされていない。自分のふるさとははるかに田舎なんだが、70年代初頭はまだああした景色が身近にあった気がする。ただそれも自分たちまでで、70年代80年代で全国的に大きく様変わりした町並み、今の若い人たちにはこの地続き感は伝わらないだろう。
 映画は工業化の進展について行けない職人の父、日銭に困るが子沢山な家庭、高校に行けない、修学旅行に行けない家庭、朝鮮人差別、帰国事業など、当時ならではの社会課題と時代の風俗、景色を盛り込みつつ、主人公の明るい性格を中心に、或いは多少無理矢理に、様々な課題は概ね前向きな結論を持って完結する。
 社会派とエンターテインメントの両立した、個人的に好きなタイプの映画でありました。吉永小百合もきれいだし。

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またぞう

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