キタキツネ物語 THE FOX IN THE QUEST OF THE NORTHERN SUN

劇場公開日:

解説

生態のよく知られていないキタキツネを主人公に、オホーツク海に臨む北海道の雄大な四季の中で、キツネ・ファミリーの生活を追い、ドラマに構成した。脚本・監督は「雨のアムステルダム」の蔵原惟繕、撮影は栃沢正夫らがそれぞれ担当。

1978年製作/114分/日本
配給:東宝東和
劇場公開日:1978年7月15日

ストーリー

冬のオホーツクにブリザートが荒れ狂い、去った朝、流氷を渡って来たキタキツネのフレップの精悍な顔がみえた。翌日、フレップは丘の麓に二匹のキツネの足跡を見つける。すばやく臭いをかいだ彼は、ためらうことなく一方の足跡を追って丘を登った。丘の上にはメスのキツネ、レイラが美しい体を輝かせてたたずんでいた。レイラといっしょにいたオスのキツネをみつけたフレップは猛然と戦いを挑む。戦いに勝ったフレップはレイラと愛のセレモニーをくりひろげるのだった。白鳥たちがシベリアに帰る頃、フレップとレイラの愛の巣穴が海辺の砂丘の斜面につくられた。すでにレイラの体内には新しい生命が宿っていた。フレップの胸には、遠い故郷への想いと、新しい土地で父親になることへの昂ぶりが渦巻いていく。春を告げる嵐が吹く日、レイラは五匹の子どもの母親となった。子ギツネたちは巣穴を出て走りまわるくらいに成長する。ルッサム、レプン、ヌプリ、シリカらは元気に遊びまわっていたが、目の見えないチニタだけはじっとしたままだった。チニタは、自分が家族の重荷になることを子供ながらも悟り、海岸に打ち寄せる波に身をまかせたのである。キタキツネの天敵である犬が、巣穴を嗅ぎつける。しかし、運よく大事には至らなかった。梅雨の季節になり、空腹を訴える子ギツネたちの声で意を決したフレップは、ある夜、牧場のニワトリ小屋を襲い、一羽をようやく仕止める。あとに残ったレイラもその頃、心配のあまり牧場へ急いでいた。牧場に一羽のニワトリが迷い出ているのを見つけたレイラは、とびかかるが、草叢の中に仕掛けてあった罠にかかってしまう。思わずレイラは助けを求めて声をはりあげた。二匹のアイヌ犬がレイラの声を聞きつけて迫ってくる。フレップは自分をおとりにしてアイヌ犬をおびき寄せ、レイラを逃した。レイラは柏の木の丘の上で、子供たちに見守られながら静かに息をひきとるのだった。レイラが亡くなってからのフレップは、表情や態度にいちだんと厳しさを増す。悲しみをこらえてわが子の訓育に身を入れ始めたのも、一日も早く子供たちを一人前にするためだった。実地訓練では、まだ子供たちの知らないさまざまな外敵や危険からの身の守り方、獲物の狙い方、自力で生きていく知恵などをひとつずつ教えていく。子供たちの旅立ちの季節が訪れ、フレップはいつになく荒々しく、わが子を巣穴から追い出し始めた。噛みついたり、つきとばしたりするフレップに、子供たちは初めはとまどい、ついで反撃に出る。これは、キタキツネの子別れと呼ばれる儀式であった。次々と巣から子供たちを追いやったフレップは、最後に子供の中で一番強いシリカと壮烈な戦いを展開する。シリカは何度も反撃を繰りかえしたが結局、住みなれた巣穴を去るしかなかった。フレップは言い知れぬ虚脱感を味わいながらも、親の責務を果たし終えたのだった。北の果ての原野に再び、長く厳しい冬が訪れる。初めて体験するブリザードに、シリカたちはたじろいだ。レプン、ルッサム、ヌプリは猟師に追いつめられたりして死んでしまう。生き残ったシリカと偶然再会したフレップは、人間たちのスノー・モーブルに追いまわされるが、別々の方角へ走り去り、追跡をかわすのだった。オホーツク海が流氷に埋めつくされた時、フレップはシリカに思い出に満ちた土地を譲り、再び氷原を渡って去って行く。父を見送りながらシリカは父が愛し育てたものを受けついでいく重みを感じ始めていた。それは、父、フレップがこの地を訪れる時には思いも及ばぬ事だった。

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映画レビュー

4.5今観ると斬新!日本初の動物映画に映るそこはかとない悲しみに、制作者の隠れたメッセージを読み取る

2024年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

知的

日本で最初の動物映画ということで、自分の年代だと子ども時代に『キタキツネ物語』で初めて映画館を訪れたという人が多く、自分もその一人。今では考えられないが、満員電車のごとく立ち見のギュウギュウ詰めで、座席ではなく階段に座って観たのを覚えている。

内容は、今観るとかなり斬新。
ゴダイゴのミュージックビデオか!ってほどに場面場面で彼らの音楽が流れまくるのだけど、これが案外イケてる。丘の上の大木がキタキツネ一家を最後まで見届けるナレーションも、大自然で生きる彼らの物悲しさをかき立ててくれる。

なにより後半は一転して、キタキツネ一家が次々に非業の死を遂げていくのだが、それをつぶさに描き出す、当時の遠慮のない表現のすごさよ。しかも、触れ込みでは「大自然に生きる厳しさ」とか言っておきながら、いやいやどうして「ほとんど人間が殺してんじゃん!」と当時は親に泣きつきながら映画館を後にしたものです。

今思えば、日本初の動物映画を企画した制作者には、明確にその意図があったのかもしれない。興行収入ではなく、北の大地で人知れず行われている人間の所業をどうにかしたいという切なる思いが。かわいいキタキツネのイキイキとした生き様を前面に打ち出しながら、それを殺しているのは実は私たちですよというメッセージを映画の中にこっそり忍ばせたのではあるまいか。

それがためか、本作は今観てもその後の動物映画とは明らかに異なる、そこはかとない悲しみが画面いっぱいに漂っている。
制作者の意図を含め、いろいろ興味深い映画である。

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コタツみかん

4.0音楽と映像。自然の厳しさを知らされた映画

2021年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

町田義人。ゴダイゴ。朱里エイコ。
音楽が最高に素晴らしい。

セミ・ドキュメンタリー形式で、自然を観察し、あるキタキツネの親子を追った映像を物語形式で描いた映画。

子供と一緒に見たい映画の代表格です。

2016.3.23

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うそつきカモメ

4.0動物ドキュメンタリー

2019年12月7日
Androidアプリから投稿

泣ける

怖い

全編ほとんどキタキツネしか出てこない異色のドキュメンタリー映画。映像は厳しい自然の中で生きて行くキタキツネの一家をひたすら追いかけ、ナレーションのみで進行してゆく。
キタキツネ達の運命と町田義人による主題歌「赤い狩人」が感動を呼ぶ名作。

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ミネルバ250

5.0タイトルなし

2018年11月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

東映マンガ祭り以外で、初めて映画館で見た作品。
それだけに、印象深くDVDも買いました。

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D

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