傷だらけの山河

劇場公開日:

解説

石川達三の同名小説を「青べか物語」の新藤兼人が脚色、「続忍びの者」の山本薩夫が監督した社会ドラマ。撮影は「現代インチキ物語 騙し屋」の小林節夫。

1964年製作/152分/日本
原題または英題:A Public Benefactor/Tycoon
配給:大映
劇場公開日:1964年4月4日

ストーリー

有馬勝平は、電鉄、バスなどの交通事業の他、数種の会社をもつ大事業家だ。勝平の旺盛な欲望は女性関係にも現れ、妻藤子との間に二男二女をもちながら、片山民子と横田かね子の間にも、大学に通う息子がいた。藤子との政略結婚から、端を発した勝平の事業欲は、人の犠牲を意に介しない非情さのうえに立っていた。勝平の第四の女福村光子は、パリに留学を夢みる貧乏画家の、酒井吉春との生活に疲れていたところを、夫吉春をパリに留学させる条件で、勝平の女となった。光子と勝平の生活は愛欲にただれたものだった。そんなある日、勝平の次男秋彦は、光子を知り、いつか好意をもった。が、勝平との関係を知ると秋彦は生来の内向性を深めた。一方、勝平の事業欲は、ライバル香月との路線争いに勝ち、沿線に「西北学院」を建てた。しかし、勝平の人間関係は、崩壊しかかっていた。横田平次郎、片山竹雄の二人は、勝平との不義な出生と、彼の拝金主義に対する反感から、彼らの母親を動かし、勝平との絆を断ったのだ。光子とも縁を切った勝平は、第五の女小桃を手に入れた。永年交通事業発展の功で“勲章”をもらった、その祝賀パーティーの最中、人生の頂点にある勝平の耳に、西北学院に秋彦が放火したというニュースが伝わった。精神病院にいる秋彦の父に対する反抗であった。暗い空気につつまれる有馬邸、妻藤子も、秋彦と一緒に暮すと家を出たあと、勝平は、一人、「信念に生きるのみ」と呟き車を走らせた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0山本薩夫監督の傑作のひとつ

2024年8月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

山本薩夫監督による骨太な大実業家を巡るドラマであり、主演は山村聰と若尾文子。
さすがの山本薩夫監督作で、権力と金・女・策略・弱者との違いを圧倒的に見せつける山村聰は適役。また、若尾文子は(2号などでなく)4号の囲われ女として実業家が「古い妾はもう要らん…」などと言う美貌と若さを備えた女を演じている。

大実業家(山村聰)が権力と金にものをいわせて、妻子がありながら、次々と女をモノにしていく。その一人に若尾文子も入ってくる。第四の女。
そして、家族の中に波風が立ちはじめて、家庭崩壊の危機を迎える大実業家だったが……という面白いドラマ。

大実業家の凄腕をさんざん見せられる様々なエピソードを描いており、2時間32分の大作になるのは必然。

本作のモデルは堤氏なので、鉄道メインに土地買収や駅の決め方など豪腕。

山本薩夫監督作としては、銀行頭取の生き様を描いた『華麗なる一族』に近い感あり。

あまりにも素晴らしい作品なので、観終わってから確認したら、本作は1964年キネマ旬報第7位だった。同年、あの『飢餓海峡』が第5位なので、相当レベル高い年だったのだろう。

初見は2013年、久しぶりの鑑賞だったが、やはり本作、山本薩夫監督の傑作のひとつ✨

<映倫No.13462>

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たいちぃ